バーベルスクワットで腰痛を起こした時の筋肉以外の原因と対応。
今日はダフィーカイロです。
当院ブログ記事でよく読まれるのが、バックスクワットで腰痛を起こしたらシリーズです。こんな文章力の無い人間が書いている記事を、我慢して読んでいただき申し訳ありません(笑)
そこで、改めてこのシリーズ記事を読み返してみると、重要なことを言い忘れていたことに気付いたので、そのことについて記事をアップします。
トレーニングをしていて腰がギクッとなってしまったら
今回のテーマはバックスクワットしている時を想定して話が進んでいますが、スクワットをしている場面だけでなく、スポーツ・トレーニングをしている時に起こして腰痛全般に言えることです。
トレーニングでぎっくり腰を起こしたら、大抵の人はしばらく休んで、動けるようになったら自分でまたは他人からのマッサージを行い、徐々にトレーニング再開して…のような流れで済ましていると思われます。
まあ、このような手順で済んでしまう人もいるでしょうが、特に腰痛を再発しやすい人は、この流れに一つ加えてもらいたい事があります。
まず、スポーツ整形外科に受診してもらいたいです。しかも、ちゃんと診てくれるスポーツ整形ですね。
一般的な整形だと、神経症状のない腰痛ではレントゲンとって湿布貼って、ハイ終わりで済まされることが多いです。その点、スポーツ整形だともう少し詳しく診てくれる可能性があります。
ただ、スポーツ整形の看板掲げていてもピンキリなので、その点は注意が必要ですね。そこはラーメン屋でも旨いところもあれば、不味いところもある、というようにどの業界にも存在することです。
なぜ、医者に最初に診てもらいたいかというと、腰痛の原因には椎間板症や椎間関節症など様々ありますが、仮に同じ椎間板症だとしても、その重症度で治り方の期間が大分違ってきてしまうので、その原因の特定と重症度を確認してもらいたいためです。
以前の記事で筋筋膜性腰痛については紹介させていただいたので、今回はその他の症状から引き起こされる腰痛(特にスポーツ現場で一般に見られる)についてご紹介していこうと思います。
筋筋膜性腰痛についてはこちら
椎間板性腰痛
椎間板というと「椎間板ヘルニア」を思い起こされます。椎間板症=椎間板ヘルニアと思われている人が多いですが、全く同じではありません。椎間板ヘルニアは椎間板症の一部です。
椎間板は骨と骨の間にある軟骨のクッションですが、構造が複雑です。形は円柱状ですが、ちょうどバームクーヘンのように軟骨が何層にもなっています(線維輪といいます)。この木の年輪のような軟骨の層は中まできっちり埋まっている訳ではなく、中心部分は空洞になり、そこは髄核という液体で満たされています。
椎間板は外側には痛みを感じる神経がありますが、中には神経・血管がありません。椎間板の線維輪は加齢や使い過ぎにより細かい亀裂が内側(髄核側)より入ってきて、最終的には外側まで貫通してしまいます。この亀裂に沿って髄核が飛び出てしまうと、脊髄神経に当たってしまい、脚や手にに痺れが出てしまいます。この髄核の移動で外側に飛び出してしまうことを椎間板ヘルニアといいます。
年齢とともに髄核も脱水するので、加齢によりヘルニアは起こづらくなると言われています。ですが、使い過ぎによって線維輪の亀裂は起こります。
この椎間板の線維輪に亀裂が走る過程で炎症がおこると、炎症反応の結果として亀裂部の修復である瘢痕化と、神経・血管の入り込みが起こります。神経の入り込みのために慢性的に腰に痛みを感じやすくなります。これが椎間板症による腰痛です。
亀裂部の修復の終了に伴って入り込んだ神経も無くなるとされていますが、実際にはそのまま残存してしまうこともあります。また、椎間板の変性は椎間板内は元々血管がないので修復が遅く、何か月もかかることが普通です。また、再発もしやすいのです。
椎間板の変性はレントゲンでは分かりません。レントゲンで分かるのは椎間板の厚さだけです。そのため椎間板の病変を見るためにはMRIやCTが必要です。
椎体終板変性
終板とは椎体(骨)と椎間板が接している面の軟骨の部分(上図の赤い部分)で、椎間板が線維軟骨であるのに対し、終板は硝子軟骨という軟骨の種類が違うもので出来ています(椎間板側は線維軟骨もある)。椎間板内部は血管がないと先ほど述べましたが、栄養分はどうやって供給されているかといいますと、終板の下の骨の部分が一部薄くなったり、欠けていたりして、そこから椎間板内に栄養が浸透しています。
したがって、急激に大きな力が加わり椎間板内圧が高まると、骨側に髄核が押し出されるような形になることがあります。こうして炎症を起こしてしまうことを終板変性といいます。
終板変性はCTでの観察が必要で、Modic changという分類がなされます。type1が急性期で炎症・浮腫が起こっている状態、type2がそれより時間経過していて脂肪組織化している状態、type3が慢性期にはいり骨硬化して安定した状態となります。type1~2が腰痛と関連があります。
文献によると運動療法のみで治した場合、type1が安定期まで入るのに2~3年かかり、腰椎固定手術を行った場合、6か月ほどかかったとあります。このように、かなり長期的な視野で取り組む必要があると思われます。
椎間関節性腰痛
背骨を一つ一つを構成している椎骨には、隣接している椎骨同士で関節が6つあります。前半部分が上下の椎間板による連結です。後半部分は椎間関節という関節が上の骨との連結、下の骨との連結で左右に1対ずつあります。
椎間関節は腰を反らした姿勢で、さらに横へ傾けたり、ねじったりすると負荷が強くかかると言われています。
ここの関節の変形は、関節が小さいので一般的にはレントゲンでは分かりません。関節炎が強く出ている場合はMRIでも映りますが、見落とされることもあります。3D-CTで発見されることが多いです。
関節の変形があり、そこが当たって痛むので、痛みが治ったと思ったらすぐぶり返す、というのを繰り返す場合はこの可能性があります。この腰痛は、基本的には運動療法や手技療法で対応するのがセオリーですが、あまり良好な反応を示さない場合、関節ブロック注射を行うと著効を示すことがあります。
急性期の運動
スポーツ整形で難治性の腰痛や、危険な腰痛でないと診断された場合、徐々に運動再開に向けて下準備をしていきます。
先ずは全て痛みが出る運動は避けます。
ベーシックなやり方としては、腰の部分は動かさないように安静を保ちつつ、他の部位を動かす運動を選択します。基本的には胸部、股関節の柔軟性を付けることから始め、体幹部の筋力をつけ、胸郭・股関節の筋バランスをつける、というのがセオリーです。
反らして腰が痛い人
腰を反らすと痛みが出る人は、胸を反らせるのが硬い、または股関節の前が硬いため、腰に負担がかかり障害が出ると考えられます。したがって、腰は真っ直ぐ、もしくは若干丸め気味にして股関節や胸部の伸展の柔軟性を付ける運動を行います。
胸の骨を反らすストレッチ。腰は反らさない。
股関節の前が硬いと腰が反りやすいので、そのストレッチ。
腰をかがめると痛い人
腰を丸めると痛む人は、普段から腰をフラットかやや反らし気味に保ちます。椅子に座るときも腰にクッションをあてがい、腰が丸まらないように補助します。
ストレッチは上体を大きく起こし、腰を反らします。これは椎間板を前の方に移動させる効果があります。
太ももの裏側が硬いと、腰が引っ張られて丸まりやすいので、そのストレッチ。
腰に痛みを出さずにできる運動
腰痛時の定番ものの運動がこちら。仰向けに寝て、膝を伸ばしたまま足を持ち上げる。また、別のバージョンとしては、最初に膝と股関節を90°にして足を持ち上げ、そこから徐々に膝を延ばして下におろしていく、というやり方もあります。いづれの場合も、もう片方の膝は曲げて足は床につけておくのが腰の保護になります。
足を伸ばしていく際、脚の重みで腰が浮き上がりそうになるのを腹筋で押さえつけるのトレーニングとなります。腰を丸めると痛い人は若干腰のカーブを作った状態(指1本ほど入る隙間)をキープ、腰を反らすと痛い人は腰を床に押し付けるようにキープするようにします。
下の図も定番の腰痛時体操です。これは腹筋と背筋同時に鍛えられ、かつ腰の負担が少ないすぐれた運動です。最初は図のように手足を伸ばさず、ただ単に床から浮かすだけで充分です。さらに初期には、片足のみ、片手のみを浮かすだけでも構いません。5~10秒ほどその姿勢をキープします。
注意点としては腰・骨盤は中間位で反らしすぎず、丸めすぎずという位置で留めておきます。
立っていて痛みがない人はランジは行った方が良いでしょう。
スクワットに比べて上体を立てた位置をキープできるので腰・骨盤の中間位を維持しやすいです。
足を前に踏み出すやり方は、脚が着地した衝撃で腰に響く場合があります。そのような時は、後ろ足を後ろに引くようにランジ姿勢を作るやり方をすると痛みなく出来ることが多いです。
急性期から次のステップへの期間
ぎっくり腰を発症してからトレーニング再開の下準備として、前述のようなことを行っていきますが、次のステップに移るまでにどのくらいかかるのでしょうか?
実際には重症度によりまちまちですが、大雑把に言って2週間以上はかかると思います。1ヶ月以上かかる人もいます。痛みなく出来るようになったら、さらに負荷を増やしたり、アレンジを加えたり、種類を増やしたりしていきます。
人によっては持久運動もしたいから走りたいという希望を持たれる方がいらっしゃいますが、ジョギング程度でも足からの衝撃は、腰にかなり負担になります。リハビリの標準としては、走り再開は3カ月くらいを目途にするのが一般的です。その間は、ステーショナリー・バイクなどで代用するのが無難といえるでしょう。
まとめ
今回は、スポーツでギックリ腰になった時の筋肉以外の原因の解説と、急性期から亜急性期にかけての対処法を説明しました。
この記事が何かのお役に立てれば幸いです。
では今回はこの辺で。