なぜ神経が圧迫されると力が入らなくなり、筋肉が細るのか?

 

今日は、ダフィーカイロです。

最近、手の麻痺を主訴とするクライアント様が多くなったので、その解説を軽くしていこうと思います。

麻痺を考える場合、大雑把に分けて筋肉が原因の場合と、神経が原因の場合があります。今回は、神経についてフォーカスし、特に末梢神経について説明します。

 

末梢神経障害により脱力が起こり、筋肉が細くなるメカニズム

神経細胞は細胞本体である細胞体と、電気信号を伝える軸索からなります。図の丸い細胞核(遺伝子情報が入っているところ)が存在しているところが細胞体、長く伸びているのが軸索。

通常、軸索の電気信号の流れは、細胞体から軸索末端への一方通行です。一方、たんぱく質や神経伝達物質など合成物は軸索内の微小管というレールを使い、本体から末端、末端から本体へと双方の運搬があります。

神経には、末梢神経と中枢神経があり、脳と背骨の中にあ脊髄神経が中枢神経と呼ばれ、背骨から出た先が末梢神経と呼ばれています。末梢神経の細胞体は、感覚神経が脊髄神経のすぐそばにある神経節、運動神経が脊髄内の前角にあります。

上図では、神経の黒く●で示しているところが神経節で、感覚神経の細胞体があるところです。赤線は運動神経を表していて神経核は脊髄神経内の前角にあります。因みに図は素材集から借りてきたものを加工したものですが、通常脊髄断面では細胞体の集まり(灰白質)は蝶々のような形をしていて、前角と後角の間は図のように横に張り出していません(笑)

背骨の中でヘルニアで神経が圧迫されて細胞体が傷つく、背骨の神経の出口である神経孔のところで骨の変形などで傷つく、その他神経末端までの神経軸索の通り道で傷つく、など色々な場所で神経は損傷します。細胞体が傷つけば細胞自体が死んでしまいますが、軸索が傷ついても先ほど説明したように細胞内の物質の輸送が途絶えてしまうので、細胞が機能しなくなります。

神経の働きかけがないと筋肉は動きません。筋肉は動かないと衰えて、やせ細っていきます。これは廃用性委縮といいます。また、神経は血管も支配しているので、血流も悪くなると筋肉への栄養供給や代謝がわるくなります。そのため、さらに筋肉は衰えていきます。

これが末梢神経の障害による運動麻痺と筋肉がやせ衰える(委縮)メカニズムです。

 

手の麻痺と筋委縮

手に行く神経は3本あります。

①橈骨神経

②正中神経

③尺骨神経

それぞれの神経には運動神経、感覚神経、自律神経の神経線維が含まれています。今回は話を単純にするために運動神経にフォーカスしてお話を進めていきます。それぞれの神経は決まった支配している筋肉があります。したがってその神経がやられてしまうと、それに伴ってそれらの筋に影響が出てきます。

橈骨神経は手の甲側から前腕、上腕の背中側の筋を支配しています。手に関しては指や手首を反らす動きをする筋肉を支配しているので、この神経が麻痺すると指や手首を曲げる筋肉に引っ張られて、手が垂れ下がったような形になります。これを下垂手といいます。

正中神経は手首の真ん中を通る神経で、手のひら側や、腕の腹側の筋肉を支配しています。この神経の障害は、肘から先にある筋肉が阻害され、主に親指、人差し指、中指が握れなくなったり、手首が曲げれなくなったりします。筋の委縮で目立つのが、親指の付け根のふくらみ(母指球)が凹んでくることです。

尺骨神経は手から前腕にかけての小指側の筋肉を支配していて、小指、薬指の曲げる筋肉を司っています。さらに手の中の細かい筋肉(手の内在筋とか手内筋といわれます)も支配しています。これは小指から人差し指までの4本の指を横方向に開いたり閉じたりする筋肉です。また、母指球を内側に寄せる動作(物をつまむ動作など)をする筋も支配しています。

 

実例

尺骨神経麻痺による母指付け根の委縮の例(赤矢印)。母指以外の指は握れるけど親指を使ったつまむ動作が難しくなっています。

 

 

親指が内側に向けれない例(左手)。

前腕の尺側(小指側)の筋委縮。痺れも小指から前腕にかけてあります。

 

 

どうやって麻痺筋を改善していくか?

筋肉の萎縮が進むとなかなか元に戻るのは難しくなる印象です。まず大事なのは神経を圧迫している箇所を改善することが必要です。しかし、それと同時に筋を衰えさせないように動かすことも大事です。

脳梗塞などの中枢神経による麻痺では、特に発症間もない時に無理に筋を動かさせると逆に硬くなることがありますが、末梢性の場合はあまり聞きません。脳障害による麻痺に対する運動療法が多数開発されていますが、当院ではそれを利用して運動を行っています。

また、神経が肘の部分や手首の部分で圧迫を受けて症状が出る場合、骨の変形のために神経が圧迫されて発症することもありますが、日常での使い過ぎで引き起こされる場合も多いです。それらの場合は、神経の通り道に負担がかからないような日常の過ごし方、体の使い方を身に着けて頂く必要があります。場合によっては装具を使う必要もあります。

 

筋の麻痺と委縮の改善を目指すための心構え

脳梗塞や脳出血などで麻痺になった場合、人は真剣にリハビリに取り組みます。入院していればリハビリするための環境がそろっているし、なにより麻痺の程度が強いので日常に復帰しようと必死になるからです。

一方、末梢神経による麻痺の場合、麻痺の程度は局所的ですし、不自由ながらも他の筋や体の使い方で動けてしまうので、筋力改善のための訓練に対する熱意が薄い人が多い印象です(スポーツ競技をしている選手ではその限りではありませんが)。

医療施設や施術院で行えることは限定的で、本当は毎日通ってもらう方が効果的ですが、そのようなことは時間的にも金銭的にも不可能です。ですので自宅でのセルフケア、セルフエクササイズが重要となってきます。

注射や薬でなんとかなるとセルフケアを怠っていると、後戻りできないほど衰えていることもあります。軽度の麻痺は放っておいても自然に改善することもありますが、それでも数年単位で改善がかかることを見ることがあります。なるべく改善促進のためにも自助努力は必要ではないかと考えています。

当院では、セルフケア、セルフエクササイズをスムーズにこなせるようにクライアント様限定公開の動画を準備しています。ぜひとも熱意をもって改善に取り組んで頂きたいと思っております。当院では全力をもってそれをサポートしていきます。

 

まとめ

今回は末梢神経障害由来の運動麻痺についてざっと解説してみました。

麻痺の改善には時間がかかるものが多いです。根気よく取り組む必要があります。巷の広告には、さも簡単に治せるように謳っている怪しいところもありますが、あまり惑わされず腰を据えて取り組むことをお勧めします。

では、この辺で。

 

 

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