スクワットによる筋々膜性腰痛の当院の対処

【今回の記事はブログ統合のため、他ブログより転載したものです(初出2017年6月)。】

 

当ブログで今までいくつか腰痛時のスクワットをどうするかというお題で記事をアップしました。これまでのは概略的な内容であったので、今回はさらに具体的に「筋々膜性腰痛」時のスクワット復帰を考えていこうかと思います。

といっても腰椎捻挫でも、椎間板症でも大して内容は変わらないと思います。ベースとしての考え方は同じです。基本的には局所的に負担が集中するので組織が損傷します。それが筋肉に負担の集積が行われたのが「筋々膜性」となり、椎間板に負担が集中したのが「椎間板性」となり、椎間関節に負担が集中したのが「関節性」となり、腰痛を発症するのです。ベースの部分に、プラスαとしてそれぞれの部位のケアと、それぞれの部位に対応したトレーニングを加味していきます。

また、「当院での対処」とか言ってますが、ここでは施術や処置に関することではなく、動作改善に関するメニューについてのご紹介です。内容は至って普通で、ご自身でいろいろ勉強されている方には既知の内容ですが、まだどうやって対処していいか分からないという方はご参考までにどうぞ。

 

 

 

1、現状での当院の復帰プロセスへの考え方

まず弱点のあぶり出しを行う必要があります。各々の関節の動きを単独で評価しても、実際の動きを実演してもらうと違う場合が多くあります。スクワット動作ならば、実際にウエイトを担いでしゃがみ込み・立ち上がりの動作を観察した方が正確です。

その上でエラー動作の修正を行います。次に一般的にみられるエラー動作を挙げてみたいと思います。

 

2、しゃがみ込み時に骨盤の位置がキープできなくて、歪んでしまう人

骨盤後傾がはいってくると、やはり腰部椎間板への負荷が強くなってくるので、避けなければいけません。当然、腰部を支えている筋肉にも負荷がかかり、損傷するリスクが高くなります。

骨盤がねじれてくる人は、それに伴って上半身も捻れてきて、最終的な体が傾いたままウェイトを持ち上げているようになってしまいます。

骨盤動作の不良は、特にボトム周辺で起こりやすいエラーの一つです。

2-1、股関節の屈曲角度改善のために

骨盤がボトムポジションでねじれる原因の一つに股関節の硬さの左右差があると考えられます。片方はキチンと股関節屈曲ができていて、もう片方がそれより制限があり曲がっていないと、そちら側の骨盤が立ってきて、骨盤の回旋や傾斜が入ってくることになります。

対策としては、股関節の屈曲柔軟性を増せばいいのですが、空身でストレッチのような方法で柔軟性が増しても、いざウェイトをかけて屈曲させると、崩れてきてしまう場合があります。柔軟性に加え、それをコントロールする筋肉が弱いという事が考えられますので、負荷を加えながらの柔軟性を増すようなエクササイズを取り入れていったほうが有益と考えられます。

当院でお勧めしているのがコブレット・スクワットで、これがまず腰痛からの復帰で有益な種目の一つではないかと感じています。コブレット・スクワットはフル・スクワットの位置がボトム・ポジションになります。これで、股関節屈曲の柔軟性を負荷を加えながら体得できます。

●コブレットスクワット photo credit: ThoroughlyReviewed Crossfit Bootcamp Fitness Models – Must Link to https://thoroughlyreviewed.com via photopin (license)

 

やり方は、軽めのウエイト(ケトルベル、ダンベル、プレートなど)を胸の前に保持します。腕が疲れる人は抱え込んで胸に密着させましょう。上体を立てて、腰を反らしすぎず、骨盤が前傾しないように注意しながら、重心である骨盤を真下に下ろします。スクワット種目全てに共通する注意点として、膝とつま先の向きは同じにして、ニーインやニーアウトしないようにして下さい。

 

2-2、コブレット・スクワットをやる前段階として

まず股関節の屈曲角度の可動域を上げる必要があります。

股関節で深く曲げれないと、しゃがみ込みの最終域で骨盤が後傾するというのは先ほどご説明しましたが、その原因の一つに股関節を外に開く角度が狭いと、屈曲角度を制限するというのがあります。理由は2つあります。

1つは下腹部の筋肉・脂肪組織と大腿部の筋肉組織が挟み込まれるので、ここの組織がボリュームがある人は、それだけ制限を受けます。それを防ぐために股関節を外に開くと両大腿部の間にスペースが生まれるため、その部分に下腹部を沈め、しゃがみ込みの可動域が増えます。

2つ目の理由は、大腿骨と骨盤の骨(寛骨)との角度によるものです。骨盤側の股関節の関節面は矢状面(前後方向の面)に対し外側に約20度開いています。股関節を外に開く(外旋)すると大腿骨頭の球体部分がより前面が露出してきて、関節の前部の開いている部分に移動してきます。すると股関節を曲げたときに関節前面での組織の挟み込みが少なくなってくると考えられるのです。股関節を少し曲げて、外に開いたポジションは、股関節のゼロポジションとよばれ、関節の臼蓋に大腿骨頭が最も合致してストレスの少ないポジションとされています。

これらの内容を踏まえ、自分で無理なくフルスクワットできる足の置き位置を探すと良いでしょう。

相撲の四股は、股関節が外旋、外開きになっていて、この位置の柔軟性をつけるのに良いストレッチ法です。その位置で上下に軽く20回ほどバウンドします。次に左右に10回ほどバウンドします。そこからさらに上下に20回ほどバウンドします。これを行うとかなり股関節の可動域が広がった感じがつかめます。これはトレーニング前のウォーミングアップとして当院で推奨しています。基礎体力が低い方にとっては、これだけでも結構疲れると思います。

これらで股関節の可動域を広げてからコブレット・スクワットを行います。腰が痛い方は、まずこの2種目を繰り返して、骨盤の位置を正しくキープできるようにしていくのが、バーベルスクワットの復帰にむけてファーストステップとなります。

 

2-3、フロントスクワットとの違い

以前の記事でフロントスクワットは、腰痛からの回復メニューとしてバックスクワットの代替にならないのではないかという考えを述べました。

コブレットもフロントスクワットの一種でしょ?と思われた方も多いと思いますが、ここで述べていることはリハビリのメニューとして股関節の可動性促進を目指しています。そのため、なるべく負荷は軽くし、反復回数を多くし、神経筋の適応を促す目的で行います。

フロントスクワットでは、胸椎の伸展(反り)が強要され、代償として腰部が伸展負荷が過剰にかかってしまい、痛い腰をよけいに痛くする可能性があるので、以前の記事では推奨種目として挙げていません。コブレットは肘を前方に引き上げる姿勢がないので、胸椎の過剰伸展が起こりません。したがって、ここでは推奨種目として挙げています。

 

3、膝の位置が安定しなくて姿勢が崩れてしまう人

一方、膝が影響している場合もあります。どちらかの膝が悪く、左右均等にしゃがめない人は、やはりスクワットで姿勢が傾きます。

膝の動きの悪さは筋バランスだけでなく、膝蓋骨軟骨軟化症や半月板、棚障害など医学的な問題を抱えている場合が多いので、その処置も平行して取り組んでいく必要があります。

それらの医学的問題を改善できた上で、さらに筋バランスや、動作改善をすすめる目的で取り組む種目としては、膝や股関節周辺の強化を狙って、ランジをお勧めします。

●フロント・ランジ photo credit: Yemek Tarifleri ve Sa?l?kl? Ya?am Rehberi Lunge (ad?mlama) hareketi. via photopin (license)

 

 

フロントランジは一般的には、しゃがみ込む方の脚を前に踏み出して腰を降ろしますが、膝に不安のある人はスタートポジションの立ち姿勢から、後ろ足を後方に引き、腰を降ろすというバックステップのランジの方が、ステップイン時の前足の膝の負担が緩和されるので、その方法を推奨します。

注意点はスクワットと同じように、つま先と膝が同じ向きを向くこと。膝がつま先より前に出過ぎないようにすること。骨盤、肩のラインが捻れたり、傾いたりしないこと。腰は垂直に降ろす。背中が丸まらないように。基本的には上体が被らないように立てておく方が望ましいです。そして特にニーインしやすいので注意しましょう。

 

4、まとめ

腰部に負担をかけずにバックスクワットの復帰をめざすのには、あと、大殿筋とハムストリングの強化が必要です。実際、バックスクワットでは大腿四頭筋や内転筋、腰背部の筋群は意識しやすいですが、殿筋、ハムストリングも重要です。ここが弱いと腰部に負担がかかるので、次回はそこの活性化の種目を考えてみようと思います。

今回はこの辺で。

 

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