筋トレしても筋量が増えない体質

 

【今回の記事はブログ統合のため、他ブログより転載した記事です(初出2017年12月)。】

 

ウェイトトレーニングをいくらがんばっても筋量が一向に増えない人がいます。その悩みは、スポーツ競技のプロ選手の中でも訴えている人がいます。

今回は、そのような体質の方の考察です。

 

 

 

1、筋肉がつきずらい体質=ハードゲイナーとは

アメリカの心理学者ウィリアム・ハーバード・シェルドン(William Herbert Sheldon)の唱えた、体質心理学(1940年に出版)がベースの考えになっています。William Herbert Sheldonについてはこちら(英文)

コトバンク「体質心理学」からの引用

 

シェルドンの学説

シェルドンは、正常人を対象に身体部分の17か所の測定値と身長の比を統計的に分析し以下の3類型を明らかにした。
(1)内胚葉(ないはいよう)型 内胚葉を起源とする消化器官の発達がよく、柔らかく肥満体。
(2)中胚葉型 中胚葉を起源とする筋、骨の発達がよく、角張った、がっちりした体格。
(3)外胚葉型 外胚葉を起源とする皮膚組織、感覚器官、神経組織の発達がよく、弱々しい体格。
内胚葉型はクレッチマーの太り型、中胚葉型は筋骨型、外胚葉型はやせ型に該当している。この体型分類に対応する性格特性は以下のとおりである。[山崎勝男]

性格特性

(1)内臓型性格(内臓緊張型気質) 安楽、緩慢、貪欲(どんよく)、社交的、寛容、自己満足など。
(2)身体型性格(身体緊張型気質) 粗い動作姿勢、精力的、運動好き、権力欲、大胆率直、荒々しい攻撃性、苦痛への強さ。
(3)頭脳型性格(頭脳緊張型気質) 堅い動作姿勢、尚早反応、引っ込み思案、過敏心配性、表出抑制、社交嫌い、苦痛への弱さ。
このように、内胚葉型は内臓型性格と、中胚葉型は身体型性格と、さらに外胚葉型は頭脳型性格とそれぞれ高く相関している。また体型を介してクレッチマーの気質との対応関係も指摘されている。[山崎勝男]
『エルンスト・クレッチメル著、相場均訳『体格と性格』(1960・文光堂)』

 

一般的には現在、これらの説は科学的根拠はなく、否定されていいます。ちなみにハードゲイナーとハードゲイ(SMチックな男性同性愛者)は関係ありません。

トレーニング業界的に内胚葉型(ハードゲイナー)という用語だけが一人歩きしている状態です。ただ、筋肉が付きやすい人とそうでない人というのは確かにいるようで、ボディービルダーの世界でも人と比べ少ないトレーニング量でも筋肉が太くなる人もいれば、人より多くやってもなかなか太くならない人もいます。

これはその人個人のもともと持っている筋肉線維の構成比によるところが大きいと思われます。

 

 

2、筋肉線維は代謝機構や収縮スピードで3種類に分類される。

トレーニングをしている人なら一度は聞いたことがあるかも知れませんが、筋肉線維には特徴分けとして3種類あります。筋線維の収縮スピードから次のように分けられます。この3種類の線維の構成比率でその人の身体機能が特徴づけられます。

速筋線維

瞬発的な力の発揮を行う筋線維です。typeⅡb線維やFG(fast-twich oxidative)線維、白筋ともよばれます。

筋小胞体が発達していてカルシウムイオンの放出が早い特徴があります( カルシウムイオンは筋収縮を発動する役目がある) 。ミトコンドリア酵素の活性が低く、酸素を使わない解糖系というエネルギー代謝を行います。解糖系は乳酸を産生しやすく、最終的に解糖系の反応を抑制するので、持続的に使えず疲労しやすい筋線維です。筋線維の直径が太く、線維の短縮スピードと力の立ち上がりが遅筋線維に比べ3~5倍あるとされています。

遅筋線維

持久的な力の発揮を行う筋線維です。typeⅠ線維やSO(slow-twitch oxidative)線維、赤筋ともよばれます。

筋小胞体はあまり発達しておらず、カルシウムイオンの放出が遅い。ミトコンドリア酵素の活性が高く、酸素を使うエネルギー代謝を行い、脂質からエネルギーを産生します。酸素を運ぶための蛋白(ミオグロビン)が多く存在するため色が赤く見え、そのため赤筋といわれているのです。線維の直径は細く、線維の短縮スピード遅いですが、疲労しずらいという特徴があります。

中間線維

速筋に分類されますが、有酸素性、無酸素性どちらのエネルギー産生ができるため中間的な線維と考えられています。typeⅡa線維、FOG(fast-twich oxidative-glycolytic)線維ともよばれます。ミトコンドリアやミオグロビンが多く存在しますが、解糖系の酵素活性もほどほどあり、線維の収縮スピードも速いのです。

 

3,筋肉の組成には個人差があります。

一般的には人間の腕や脚の筋では、速筋線維と遅筋線維の割合はほぼ同じといわれています。また、typeⅡa線維とtypeⅡb線維の割合もほぼ同じです。一つの筋に対しても速筋線維と遅筋線維は混在していますが、それぞれの筋により比率は違っていて、その割合に沿ってモザイク状に存在しています。例えば同じふくらはぎの筋でも腓腹筋は速筋線維が多く、逆にヒラメ筋は遅筋線維が多くなります。生まれたばかりの時はすべての筋は速筋の性質を示しますが、生後4~6週で遅筋が現れるようになります。

トップアスリートになると速筋線維と遅筋線維の割合に明確な違いがでており、スプリンターでは脚の筋では速筋線維の構成比率が高く、マラソンランナーでは脚の筋の遅筋線維が構成比率が高いということが分かっています。

筋線維の比率は先天的にその配分が人それぞれ決まっています。そのため筋肉の線維構成の配分が速筋線維に生まれつき偏っている人は、瞬発的な力の発揮を多用するスポーツが得意で、遅筋線維の配分が多い人は持久系のスポーツが得意になる傾向があります。

遅筋線維の割合いが多いタイプの人は、酸素を取り込む機能が優れていて毛細血管が発達します。食後の熱産生も高く基礎代謝が高く、エネルギー源を脂肪から使いやすいので肥満しづらく、総じて細身になりやすいといわれています。

速筋線維の割合が多いタイプの人は、毛細血管密度がそれほど発達せず、基礎代謝が低いため肥満しやすいといわれています。速筋線維は発達すると直径が太くなりやすいので、瞬発的な運動で鍛えると筋肉量は発達しやすいのです。

スポーツ選手ではその競技特有の瞬発系・持久系などの運動傾向があり、その繰り返しにより選手は体を適応するようになっていきます。これらの違いは下記のサイトをご覧になれば明確でしょう。

 

4,筋線維の組成は変わらないのか?

持久的な運動をトレーニングで続けると、遅筋線維typeⅠの割合は変化しませんが速筋線維のtypeⅡb線維は、有酸素性エネルギー産生能力を持つ中間線維typeⅡaに変化を起こします。また、中間線維typeⅡa自体も毛細血管密道やミトコンドリアの数や容量が増大し、有酸素性エネルギー産生能力がアップします。

100Mダッシュなどの瞬発系トレーニングも続けていると、最終的には全体的な持久能力が上がるので、サッカーやラグビーなどでみられるような繰り返すスプリントを行ってもバテが少なくなってきます。瞬発系持久力といい、俗にスタミナがあるといわれる状態になります。

現在のところ、人間では遅筋から速筋への変化は研究では認められていません。つまりトレーニングで筋ボリュームを出したい人にとって必要なことは、速筋線維数は先天的に決められていて、その筋線維数の中で如何に筋量を出していくかを考えていかなければいけないということです。ただし動物実験では遅筋から速筋への変化は認められています。

 

5、ハードゲイナーの人の筋量アップ対策の概要

以上のことから、いわゆるハードゲイナー(遅筋線維偏重型)の人がバルクアップを希望するのであれば、筋肥大~筋力強化あたりの高負荷・低~中回数でレップ数を抑え、セット数も控えめにした方が良いでしょう。その分、多方向からの刺激を加えるため種目をいくつか組み合わせます。そして全体的なトレーニング量を減らし、トレーニング時間を短めに切り上げるのが望ましいと考えられます。

トレーニング量が増えすぎると速筋線維の活性より、有酸素能力の向上化へ向かい遅筋線維の活性に傾きます。

筋のボリュームアップのためには栄養補給も非常に大事ですが、細身の人は消化器系が弱い場合も多く、食事量をふやしても消化器の吸収能力が追いつかず、すぐに下痢になってしまう人もいます。

筋肉の材料となるタンパク質は、分解・吸収するのに非常に労力がかかり、胃腸に負担がかかります。消化器がもともと弱い人ではタンパク質の吸収の効率が悪い場合があるので、そのような時はアミノ酸の顆粒を摂取してしまった方が胃腸に負担をかけずに、効率よく吸収できます。

食事に関してはかなり書くことが長くなるので、またの機会にアップしようと思います。

また、それぞれの項目においてもさら機会をみてさらに具体的に述べていきたいと思います。

今回は、一応この辺で。では。

 

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