「腰痛コルセットをしていると筋肉が弱くなる」の嘘①

今日は、ダフィーカイロです。

今回は、よく人から頂く質問、

「コルセットを着けていると筋力が弱くなるから着けない方がいいって、ネットとかで見かけるけどどうなんですか?」

に答えていきたいと思います。

聞かれるとその都度お答えはしていますが、施術中などでは時間の関係上簡単な受け答えになってしまい、踏み込んだことまで説明できないこともあります。

そこで「詳しいことはブログにアップしてありますので」とご案内しておけば、よりご納得いただけるのではないかと思われます。

つまり、院内での補足説明用の記事ですね。

 

Julius SilverによるPixabayからの画像

 

研究の紹介

まず、論より証拠。

この件に関して色々と研究が出されています。それらを時系列的に紹介していきまます。結論から言うと「筋肉の弱化が引き起こされるという証拠はない」そうです。

日本で医療用腰痛コルセットと呼ばれているものは、論文中ではlumbosacral orthoses (LSO)と表現されています。直訳すると腰椎仙骨部装具となります。

 

【腰仙装具の3週間の使用が体幹筋活動および体幹摂動に対する筋反応に及ぼす影響】

The effects of a three-week use of lumbosacral orthoses on trunk muscle activity and on the muscular response to trunk perturbations

著者;Cholewicki J, McGill KC, Shah KR, Lee AS.

出典;BMC Musculoskelet Disord. 2010 Jul 7;11:154. doi: 10.1186/1471-2474-11-154.

【概要】

腰仙部装具(LSO)が体幹の神経筋調節に及ぼす影響はあまり知られていない。LSOを長期間着用すると筋肉のコントロールが悪くなり、LSOの着用を中止した場合に怪我をしやすくなるとされる。この研究の目的は、3週間の定期的なLSOを着用し、その間の健康な被験者の神経筋の変化を記録することであった。

14人の被験者が3週間、1日3時間LSOを着用した。急速な力の解放(体幹摂動)の前後の体幹筋活動を、0、7、21日目の3回のセッションでEMGを用いて測定した。縦断的な反復測定による要因分析法を用いた。体幹の摂動、脊椎の圧迫力、ならびに有効な体幹の剛性および減衰に対する筋反射反応を従属変数とする。LSO、摂動の方向、テストセッションは独立変数とした

LSOは、すべての方向および試験のセッションにわたって、体幹の剛性を有意に160 Nm / rad(27%)増加させた。活性化の反応を示した拮抗筋の数は、LSOを着用して7日後に有意に減少したが、この差は21日目に消失し、臨床的に関連性がないと思われる。急速な力の解放後にスイッチオフした主動筋の平均数は、LSOを使用しない場合と比較して、LSOを使用した場合の方が有意に多かった(P = 0.003)。

LSOは体幹の剛性を増し、急速な力の解放に応答してより多くの主動筋の不活性化をもたらした。しかしながら、これらの効果は、健康な被験者が1日3時間LSOを着用して3週間後に体幹筋の神経筋機能に有害な変化をもたらさなかった。

2010年発表のアメリカ、ミシガン州立大学オステオパシー医学部外科のチームの論文です。こちらはフル・テキストが無料公開されていますので、リンク先を辿ってください。

こちらの研究で使用されたコルセットは市販の弾性コルセット・サポーター類に比べれと、はるかにゴツイ装具(Aspen Medical Products社製)です。写真は著作権上転載できないので、リンク先でご確認いただくとして、この研究では男性11人、女性3人の腰痛の既往のない被験者(平均年齢26歳、体重81kg、身長180cm)に、日中の座ったり横になったではない身体活動をしてる時間にその装具を装着してもらい、1日の装着時間がトータル3時間を越えるようにしてもらったそうです。

3週間の期間で、装着0日目、7日目、21日目の3回で、無作為に選んだ半数は装具をつけたまま、半数は装具なし筋活動の測定を行いました。抵抗を加えた等尺性収縮後に急速に抵抗力を抜き、体幹筋の活動具合を測るという課題での測定だそうです。コルセットを装着している方が拮抗負荷を解除した時に、主動筋の緊張が抜けるスピードが速かったそうですが、それが結果として体幹筋の機能の低下に繋がることがないということが分かったと報告されています。

ここでは、健康体の被験者が対象で、また1日3時間と比較的短時間の装着となっているので、データとしては弱い気はします。腰痛の人が装着し続けると筋力低下が起こるかという疑問に答える形で報告されているのは以下の論文たちです。

 

【腰仙装具の連続使用が体幹運動パフォーマンスに及ぼす影響メタアナリシスによる系統的レビュー】

The impact of continuous use of lumbosacral orthoses on trunk motor performance: a systematic review with meta-analysis.

著者;Takasaki H, Miki T

出典;Spine J. 2017 Jun;17(6):889-900. doi: 10.1016/j.spinee.2017.03.003. Epub 2017 Mar 18.

【概要】

腰仙部装具(LSO)を長期間にわたって継続的に使用すると、日常生活での体幹筋への機械的負荷が減少し、体幹筋の機能障害が起こると推測されている。体幹筋のパフォーマンスがLSOの継続的な使用によって損なわれるかどうかをメタアナリシスによる系統的レビューとして調査を実施した。

開始から2016年11月まで、PubMed、EMBASE、MEDLINE、CINAHL、SCOPUS、およびCochrane Libraryを使用した体系的な検索が行った。基準として以下のものが含まれる:(1)2日間以上のLSOの使用、(2)筋骨格系の症状のために設計された軟性LSOの使用、(3)腰痛教室(教育)のみ、(4)体幹運動機能の測定。同時に以下のものは除外された:(1)不十分なデータの研究、(2)改良された定量的研究のためのMcMaster批評的レビューフォームにおける方法論的品質が劣る(<9/16)研究。The Grading of Recommendations Assessment, Development and Evaluation (GRADE)システムを使用して、証拠の質を決定した。

8本の研究のデータが分析された。運動機能に関する最も一般的な尺度は、体幹屈筋および伸筋の最大強度、ならびに体幹伸展の耐久性および疲労性とした。すべての測定において、対照群または介入前群と介入群または介入後群との間のプールされた標準化平均差の95%信頼区間はゼロを含んでいた。さらに、メタ分析のすべての調査結果で、GRADEシステムにおける証拠の質は「低~非常に低い」であった。

メタアナリシスでは、LSOを1〜6ヶ月間連続使用しても悪影響はないということであった。しかし、証拠の質は「低~非常に低い」の範囲であり、体幹筋のパフォーマンスに対するLSOの継続的使用の影響について決定的な結論を引き出すためには、より質の高い試験が必要である。

埼玉県立大学と札幌の整形外科の所属の先生達の2017年の研究です。腰部装具の連続装着は、6ヶ月以内の範囲では体幹筋の弱化を引き起こすという証拠を見出せなかったとあります。ただし、これらの根拠になっている研究データは質が低かったので、より質の高いデータが必要とあります。

 

 

【腰仙部装具は体幹筋の弱化を引き起こすことがあるか?文献の系統的レビュー】

Can lumbosacral orthoses cause trunk muscle weakness? A systematic review of literature.

著者;Azadinia F, Ebrahimi E Takamjani, Kamyab M, Parnianpour M, Cholewicki J, Maroufi N

出典;Spine J. 2017 Apr;17(4):589-602. doi: 10.1016/j.spinee.2016.12.005. Epub 2016 Dec 14.

【概要】

腰仙骨装具(LSO)の着用は、無作為化対照試験の結果によると患者の疼痛と身体障害の軽減における有効性を示唆している。しかし長期使用は体幹筋の衰弱と萎縮につながる可能性があるという懸念がある。

PubMed、Scopus、ScienceDirect、およびMedline(via Ovid)を含む電子データベースの体系的検索と、ジャーナルの手動検索を行った。健常者または低身長の患者における体幹筋活動、筋肉の厚さ、筋力または持久力、背筋力、腹腔内圧に対する腰仙部装具の効果を調査する研究が対象となった。選択された研究の方法論の質は、Downs and Blackチェックリストの修正版を用いて評価された。

35本の研究が基準を満たした。品質スコアの平均および標準偏差は64±9.7%だった。体幹筋の筋電図活動(EMG)に対するLSOの効果を調査しているほとんどの研究は、EMGパラメータの減少または変化がないことを示していた。いくつかの研究は筋活動の増加を報告した。LSOは、いくつかの研究で筋力に影響を及ぼさないことがわかったが、他の研究では筋力の増加が示された。体幹筋安定化の超音波評価を含む1つの研究のみが、腹筋の厚さの減少と多裂筋の断面積の減少を示唆していた。脊椎圧迫負荷を調査した8本の研究のうち、4本の研究では負荷が減少し、3本の研究では変化がなかった。

本レビューは、筋肉への要求課題に関連した結果の変化は、腰部サポートの使用との関係において矛盾していることを示した。このレビューでは、装具が体幹筋の弱化をもたらすことを示唆する決定的な科学的証拠は見つからなかった。

こちらはイランのイランテヘラン大学リハビリテーション学部の2017年発表の論文です。

 

 

【非特異的急性腰椎腰痛患者の体幹筋機能に対する弾性腰椎支持ベルトの影響】

Influence of elastic lumbar support belts on trunk muscle function in patients with non-specific acute lumbar back pain

著者;Anders C 、HübnerA

出典;PLoS One. 2019 Jan 24;14(1):e0211042. doi: 10.1371/journal.pone.0211042. eCollection 2019. 

【概要】

伸縮性のある腰部支持ベルトは、急性の非特異的な腰痛に対して自然治癒を促す支持装具として評価されている。しかし、固定力による依存が回復を遅らせるという懸念がある。

体幹筋組織に対する弾性腹部ベルトの系統的効果を評価するために、合計36人の急性腰痛患者(発症1週間以内)を腹部ベルト着用グループ(B)、と腹部ベルトベルト非着用の比較対照グループ(C)、の2つのグループに分けた。研究開始直後のT1、1週間後のT2、2週間後のT3の3つの時点で、3週間にわたって調べた。表面筋電図(sEMG)を使用して、2,3、4、5、6km/hの歩行速度でトレッドミル上を歩いたときの体幹筋活性化を記録した。同様に、経時的な疼痛強度(VAS)および機能障害(ODI)が両方のグループで記録された。

観察期間にわたって、疼痛強度の減少(C: p<0.05 T2 vs. T1; B: p<0.01 T2 vs. T1, p<0.05 T3 vs. T1) および機能障害の減少 (Cohen’s d vs. T1, C: T2 0.45, T3 0.86; B: T2 1.1, T3 1.0)が腹部ベルトのグループで観察された。またベルトのグループでは観察期間を通して、内・外腹斜筋が有意に低いsEMGを示した(外腹斜筋:(T1)、T2、(T3)、内腹斜筋:T1、(T2)、(T3))。背筋に対するsEMGではわずかに上昇も見せたが、統計的有意性に達することはなかった。

着用グループにおける歩行時の体幹筋の活動幅が減少したのは、ベルトによってもたらされる弾性安定化から生じる可能性が高い。腹部筋肉活動の低下した場合、脊椎安定性を高めるために腹部内圧の上昇が必要であり、ベルトの弾性支持によってそれは補完される。背筋に注目してみると、ベルトはその動きを制限する効果により、傍脊椎筋群を活性化する傾向がある。これらの結果を重視すると、体幹筋に対する弾性腹部ベルトの効果は一様ではない。したがって、本結果は腹部弾性ベルトの効果が体幹筋コーディネーションの一時的な中立的変化であり、一部の体幹筋がより活発になり、他の体幹筋がより不活になり、従来考えられているような均一的なコンディショニング不良ではないことを示唆している。

ドイツ、イエーナー大学の病理・バイオメカにクス・外傷・外科の診察科の2019年度掲載の論文です。リンク先はフル・テキストになっています。ご興味のある方は是非ご覧ください。

ベルトをしてもしていなくても自然と時間経過とともに回復はしています。ベルトをしていた方が若干、痛みと機能障害が改善を見せる、という結果でした。

また、ベルトをするとベルトの支持力のおかげで体幹の筋が休んでしまい、それが筋を衰えさせると従来考えられていました。今回の研究では、ある筋は緊張が落ちるが、ある筋は逆に緊張が高くなったりと違いがあるとのことで一様ではないと述べられています。

この論文内で説明されているように、腰痛コルセットが効果を発揮するメカニズムとしては2つ考えられています。1つは、腹圧を高めることによって体幹を支える力が増す作用があります。これはフットボール理論として知られています。もう1つは、コルセットの締め付ける圧が筋肉・皮膚の機械受容器を刺激し、筋肉の緊張を調節していると推測されています。機械受容器は体の位置や筋肉の状態などを知らせる情報を送っている神経です。

これは個人的意見ですが、腰痛といっても発生原因はいろいろあるので、それに伴い緊張している筋や、弱くなっている筋があると考えられます。そこに腰痛コルセットの刺激を加わるとさらに様々違う反応が引き起こされるのではないかと推測できます。

実験で使ったサポーターは下のもののようです↓

しかし、値段高いな、、、(笑)

 

 

考察

当院をご利用される腰痛の方は、介護職員や建築作業、運送業での荷の積み下ろしなど、腰部に負担をかける作業をされている方が多いです。事務仕事のような軽作業の人ならば、コルセットなどの装具の長時間使用による筋弱化の要素も多少考慮する必要があるかもしれませんが、恒常的に腰に負荷をかけている作業をしている人であれば、装具使用による筋弱化はほとんど気にする必要はない、と考えています。

首の鞭打ち時に使用される頚椎カラーの長期使用は、首の筋肉の弱化により症状の長期化が懸念される研究が出されています。その理論が腰部コルセットにも当てはめられているのではないかと推測します。しかし、頚椎カラーと腰部コルセットでは多くの部分で違いがあります。

次回はその点を比較しながら、腰部コルセットの効用のメカニズムを説いていきたいと思います。

痛みがあると、痛みを避けるためや、力がが入らないのを補うため、代償動作が入ってきます。そのため違う場所が新たに痛み出します。また、痛む動作を続けると痛みに対する過敏性が増します。本来痛みを感じることがない動作でも痛みを感じるようになってきます。これらの理由から、動作による痛みの発生が軽くなるならコルセットをするのは意味があり、当院では推奨しています。

また、当院では腰痛に関しては体幹筋のトレーニング必須です。体幹のトレーニングの腰痛に対する効果は研究により、かなり有効性が証明されています。したがってコルセットの着用の有無に関係なく行っていただくので、例え多少コルセット着用で筋の弱化が起きても、トレーニングで補うのであまり関係ないと考えています。

 

まとめ

記事を作っていたら長くなってしまったので2回に分けます(笑)。今回は多数、腰部コルセットに対する筋弱化の研究がpubmed上で見つかったので、それらの紹介をさせていただきました。次回は先に述べたようにメカニズム編になります。

腰部コルセット・サポーター類の使用に不安がある方はこの記事が不安解消にお役に立てば幸いです。

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