筋々膜性腰痛と、最近の腰痛治療の情報について
開けましておめでとうございます。
ダフィーカイロプラクティックは皆様のヘルス・ケアにお役にたてるよう、本年も全力で取り組む所存です!!
どうぞ、よろしくおねがいしますm(_ _)m
新春第一弾は、一般的にカイロプラクティックをご利用になる方の最も多い主訴である、筋肉が問題になる腰痛の治し方のお話です。世の中には、一つの仮説がでるとその目新しさに妄信的に追従し、それを持ち上げようとする嫌いがあります。
最近、流行の腰痛治療の説
最近では、「腰痛発症時は寝ててはダメ!動くのが良い。」というフレーズを本当に頻繁に見かけるようになりました。同時に、「腰痛は脳で作られる」というフレーズも流行っています。私は以前10年ほどまえからTMS理論の講義を受けてから、脳で腰痛は作られる、という事は知っていたし、そのようなクライアント様に出会った時には、そのご指導もさせていただきました。当時は異端であったこの考え方も、現在ではネット・書籍を中心に当たり前のように目に付くようになり、時代の流れを感じます。
特にNHKでこの手の特集をしているようです。そして治療院関係や健康関連のアフェリエイト、まとめサイト(DeNAで話題のキュレーションサイトの事)では、必ずこの手の「流行」に同調し、ブログや広告でやたらと囃し立てるところが出てきます。
認知行動療法が効かない人もいる
しかし、私個人の意見を言わせていただければ、この10年間での腰痛を見てきた中で、真に心因性・精神的な腰痛はかなり数が少ないと思います。心因性・精神性の要因は、痛みの修飾を起こしますが(痛みの程度を強くしたり、広げたりする)、それ自体が痛みの原因になるのは、それ程多くはないと思います。確かに、確実にそのようなクライアント様もいましたが、そのような人は日によってコロコロ痛む部位が変わったり、吐き気や胸苦しさなどの内科的な訴えをしたり、血圧の変動が大きい・高血圧になる、など付帯症状が多彩なので区別が付きます。
ちなみにTMS理論とは、ニューヨーク大学医学部のジョン・E・サーノ教授が発表したTension Myositis Syndrome(緊張性筋炎症候群)理論のことです。詳しくは、私も勉強させていただいたTMSjapanのホームページをご覧ください。
まず、痛みを発症するには原因があり、それを下地に痛みが修飾されます。そのため大事なのは痛みのベースになっている腰部の機能的な障害をキチンと鑑別することが大事だと考えています。
脳の痛みによる感作を防ぐには
痛みの信号は危険を伝えるものなので、繰り返し伝達されると、その行動をやめさせるようにより信号の伝達が促進されます。この神経回路の強化を「感作」といいます。
感作には
・末梢性感作…末端にある痛みを感じる神経(センサー)が過敏になる。
・中枢性感作…末梢神経が脊髄の中に入る、脊髄後角で過剰反応をおこす。
・脳の感作…DLPFC(背外側前頭前野)の機能低下による、痛み経路の抑制が効かなくなる。
筋骨格系の障害においては、初期治療が大事で、痛みの程度を早く減らす事は感作させることを予防する事につながります。キチンと治療を終了させることなく、途中で止めてしまう、もしくは特に何もせず放っておくとこの様な状態に陥りやすいのです。
腰痛時の安静はダメなのか?
近年、2004~2009年にかけて欧米で次々に腰痛に対してガイドラインが発表されました。
その中で「腰痛は安静臥床にすると回復が遅れる、日常生活の動作になるべく早く戻るのが良い」という勧告が発表されたものなので、皆がこぞってこの意見に飛びつきました。
私もその様な教育を受けてきたので、ずっとその内容をクライアント様にご指導してきました。その内に時が経つにつれ感じてきたことはこうです。
「本当にそうか?」
キチンと必要な時に安静を取らなかったばかりに、逆に治りが遅かったり、慢性に移行してしまうケースを見かけます。ガイドラインでは72時間(3日間)以上の安静臥床は治りが悪くなると謳っていますが、それ以上の安静が必要な場合もあります。
論文を一つ紹介します。フランス、パリのサルペトリエール病院リウマチ科の論文です。
【急性腰痛患者の安静または通常の活動:ランダム化比較試験】
【Bed rest or normal activity for patients with acute low back pain: a randomized controlled trial.】
著者;Rozenberg S, Delval C, Rezvani Y, Olivieri-Apicella N, Kuntz JL, Legrand E, Valat JP, Blotman F, Meadeb J, Rolland D, Hary S, Duplan B, Feldmann JL, Bourgeois P. 出典;Spine (Phila Pa 1976). 2002 Jul 15;27(14):1487-93. 【概要】 《背景》 《設定》 《方法》 《結果》 《結論》 |
この論文では簡単に言うと、発症から4日間、寝ているだけの人と、痛くても通常の活動をさせていた人とを比べてみたら、その後の差は何もなかったということです。寝たきりの人達の方が初期では病欠率が高かったということです。
ここでは如何いうことを言っているかというと、従来いわれてきた「寝てると治りが遅く、動いていると治りが早い」というのは、今回見れなかったという事を表しています。どっちもお金のかかる方法でないから、好きな方を選べばよろしい。仕事が休めないなら特に出勤しても良いという程度です。
実際の筋々膜性腰痛の発生頻度
腰痛といっても種類はいろいろあります。大別すると器質的腰痛と機能的腰痛の2種類です。
①器質的腰痛
画像診断など検査数値・画像で判断つくもの。治療方法がだいたい確立されている。整形外科でメインで対応するもの。
例)腰椎すべり症、脊柱管狭窄症、椎間板ヘルニア、変形性関節症
②機能的腰痛
検査数値では現れないもの。世間一般の腰痛は圧倒的にこちらが多い。
例)椎間関節症、程度の低いヘルニアなど椎間板症、筋々膜性腰痛
従来ですと、ドクター・サイドの教科書・テキストでは、機能性腰痛で多いのは、椎間関節症か椎間板性のどちらかとされていて、筋々膜性腰痛の割合が極端に少ない、もしくは軽視されていました。
しかし、この業界にいると筋々膜性が原因の腰痛は多く、この結果には納得がいきませんでした。病院で受診するような患者様は椎間板性や椎間関節性の原因が多いと思われますが、接骨・整体・マッサージなどの施術新に訪れる方は、筋肉問題の方が一般的です。もしくは複合形もあります。この場合も、筋肉の処置をすると痛みの軽減にかなり役立ちます。
最近では、ドクターサイドでも筋肉性の腰痛に認識がキチンとなされてきて、腰痛来院患者の原因割合を鑑別・評価を正しくおこなうと、椎間関節性、椎間板性、筋々膜性の割合は30%くらいづつ均等にるという報告も学会でなされています。
腰痛時の安静療法について
一概に腰痛といっても前述のように種類は多様にあります。その区分けをあまりなされずに、もしくは評価・鑑別がキチンと行われず曖昧なままで、大雑把に語られているような気がします。
またスポーツ実践者・選手と、日常生活レベルの活動強度しかこなさない人とでは対応も違っています。日常活動レベルで動く場合は、復帰が早くても、それ以上の負荷が少しでもかかると痛みを発する人がいます。そのような人が何時までも痛みを我慢して動かしていると、先ほど述べたように神経に感作が起こるので、痛みが抜けなくなります。
スポーツ実践者が体を動かしていると、体が暖まってきて痛みが感じなくなるが、じっとしていると再び腰が固まってきて痛くなってくるという場合です。そのうち体を動かしていても痛みを感じなくなるまでの時間が徐々にかかるようになり、最終的には体が暖まっても、最後まで活動中は痛みが消える事がなくなってきます。痛みがあると筋肉の出力に抑制がかかるので、思い通りのパフォーマンスができず、スポーツ自体をあきらめる事につながります。
椎間板症や椎間関節症などは、炎症を起こしている組織に負担がかからないような姿勢作りや運動が効果があると思われます。実際、動かしてみて痛みが楽になるなら続けてもらえば良いだけの話です。日常生活をこなす事も、いろいろ体を多方面に動かす事ができるため、局所的に負担がかかり続けることを防ぎ、回復を早める可能性があります。
しかし、筋々膜性腰痛の場合、慌てて動かさせると痛みが何時までも残り、その後も鈍痛が事あるごとに出てくることになります。これは何故かというと、先ほど述べた神経回路の感作が起きるからです。痛み刺激による感受性が過剰に働くように変化してきてしまうからです。その様な変化を起こさないために、しっかり安静にするというのも回復のための一つの手立てです。
安静ってどのくらいじっとしていれば良いの?
そもそも研究で記されている安静臥位とは、どの程度の安静度なのでしょうか?インフルエンザに罹った時のように完全に寝たきり状態なのでしょうか?ギックリ腰になった場合でも、よほどの重症でもなければ3日もすれば動けるようには回復します。
欧米の場合ならいざ知らず、日本で普通に仕事やら家事やらが待ち構えている状態では、例え「ずっと寝てなさい」と指示されたところで、実際には皆さん日常生活の活動レベルの動作はしています。ハッキリ言って、取り立てて今更「動かないとダメですよ~」などと騒がなくても、皆さん普通に動いてますって。
この勧告で有用なのは高齢者の場合です。高齢者の場合、寝込んでしまうとドンドン筋力が低下してきて、そのまま寝たきりや、歩行能力に問題が出てくる可能性があるので、このような提言は必要になってきます。
筋々膜性腰痛の病態
腰痛のガイドラインと現場とのこの違いは一体、何なのかを疑問に思っていたとき、一つのヒントをいただきました。それが水泳のナショナルチーム・ドクターで脊柱外科医にしてスポーツ科学の教授でもある金岡先生のお言葉でした。腰痛の病態も、手足のスポーツ障害の病態と同じよに区分けでき、関節への繰り返される負荷が変形性の椎間関節症、組織の挟み込みがインピンジメントとしての椎間関節症を引き起こし、軟骨の変形が椎間板の変形に相当するし、背筋群の牽引による肉離れが筋々膜性腰痛にに相当すると考えれば良いということでした。
肉離れとは、筋繊維や筋腱移行部が断裂や損傷をしている病態です。腰部の場合は、筋繊維の微細損傷・断裂と考えるとよいでしょう。例えば、太ももの筋肉が肉離れを起こし痛んでいる時に、無理に動かしたりすることを勧めるでしょうか?通常では、羅患部位に負担が掛からないように保護し、痛みが減ってから徐々に痛みが出ない範囲で動かしてリハビリを行っていくのが一般的です。腰部の場合も筋肉の炎症の回復機序は同じなので、肉離れと同じような対処で行っていくほうが自然ですあるといえるでしょう。
当院での筋々膜性腰痛へのご指導
今まで述べたことを踏まえ、当院でおすすめしている治療法を次に挙げます。
①必要ならしっかり休む
②筋の痙攣のような引きつり、張りをおぼえるならクライオセラピー(冷却療法)を試してみる。
特に肉体的負荷が高い仕事などを行った後で、腰部筋肉が引きつるような緊張をおこすことがあります。筋肉内の炎症がまだ治まっていない状態なので、アイスパックやビニール袋に氷を入れてアイス・マッサージをしてみると楽になることがあります。慢性化している場合は、その後お風呂で温めてあげると回復が促進します。基本的にはスポーツ後のアイシングと同じ考え方です。
③マイクロカレントで細胞の回復を早める。
スポーツ現場で評判が良いのがマイクロカレント(微細電流)です。細胞組織が損傷から回復する際、損傷電流という生体電流が発生するが、それを外部から入れ、細胞回復の促進を狙ったものです。マイクロカレントは短時間の装着では効果がないので、自宅で継続的に装着していただく必要があります(睡眠時など)。
参考;個人用商品
【低周波治療器】AT-mini(ATミニ)
低周波治療器 AT-mini II (AT ミニ2)
上記はセルフ・ケアで行う部分です。
当院ではこれに加えて、患部の回復を促す為の施術を行っていきます。さらに適切な時期や段階になれば運動指導を加え、さらなる強化と再発予防を計っていきます。
まとめ
私は、上記にように腰痛の対応にはキチンとした評価と、重症度、年齢レベル、その人の活動度レベルで違ってくる考えています。一つの新しい知見が出てくると、何でもそれに当てはめようと、極論に走る人がいます。最近の風潮で、休息する・安静にするというのが軽んじられていると思いましたので、今回特に皆様にご紹介しました。
この内容を踏まえ、さらにスポーツ実践者・競技者に対してどういう対策をしていけば良いかを別ブログの方で掲載する予定なので、ご興味のある方はそちらもご覧ください。
また、当ブログでもマイクロカレントについてさらに詳しくご紹介していこいうと考えています。
今回はこの辺で。最後までお読みいただきありがとうございました。
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