プレイメイト死亡のニュースについて
このシリーズ記事を投稿していた当時(2016年10月)、ちょうどカイロプラクティックの安全性を卑下するあるニュースが日本のネットで少し話題になりました。
そのネット記事(元は女性自身という雑誌の記事らしい)は以下のような内容です。
「急死のプレイメイト、死因はカイロプラクティックだった」
①前日か、前々日かはこの記事では不明ですが、あるモデルが近日中の撮影中に首をひねって痛めたという事。 ②そこで1月30日の午前中にカイロプラクティックの首の施術を受けた。 ③2月4日に脳卒中を起こし亡くなった。 |
で、この記事を読んで思ったこと。
私の「カイロの安全性/危険性」の記事シリーズの読者の方々は、すでに察しがつくと思います。同じことの繰り返しになりますが、改めて述べさせていただきます。
この件に関する当院の推測
この内容を見て、私のシリーズ記事を読んできた人でしたら、①の時点で動脈解離が起こってたんじゃないの?っていうことに気付くでしょう。
実際、撮影中はどのような姿勢を取らされていたかは分かりませんが、首をひねって痛めたとなるとこんな感じ?
通常ですと、首の矯正中に動脈の動く範囲は、自分で動かせる範囲と変わりがなく、それ以上は動かせない事が研究で分かっています(そのご紹介は、また後日)。
つまり、首の矯正時というより、その前の撮影時の段階で、動脈が痛んでいた可能性があるということです。もっと言うと、そのような動きでも、一般的には首の動脈が損傷することは希です。ですので、ほかに原因があるかもしれません。
いづれにしろ、ニュース内では「撮影で首をひねったので、調整に行った」とあります。つまり、この最初の時点がまず怪しい。
ここでカイロプラクティックでなく、アメリカで一般的な家庭医を訪れたとしましょう。そうすると、たぶん次のようになるでしょう。
①首が痛くなる ②診察に訪れる。 「首が痛いんです。」 「じゃあ、頭痛薬を出しておきましょう。それで様子を見てください。」 ③数日後に、病気が進行して脳卒中で倒れる。 |
以前の記事でもご紹介した通り、椎骨動脈の解離は発生してから動脈瘤に発展し、破裂出血するまでに2週間以内、血栓ができて梗塞に発展するまでが3週以内、が危険期間として高リスクになっています。
今回のケースも、丁度このような危険期間にあてはまります。
以前ご紹介した2つの論文
これら2つの論文中では、たぶん一般家庭医では上記のような椎骨動脈損傷の見落としによると思われる、脳卒中発症の正比例の関係性がある事が述べられています。カイロプラクティックと脳卒中の関連性が薄いという統計が出ているということは、要はカイロプラクティックの施術者の方が、一般家庭医より動脈解離の判断が上手くできていて避けることが出来ていた、と推測されるのです。
つまり今回の場合では、先の一般家庭医に診療に掛かった場合のシュミレーションの②のところで、カイロプラクターは動脈損傷の可能性を考慮せず、いつものように首を矯正してしまった、のではないかと考えられます。
私の感想としては、カイロプラクティックの手技で脳卒中が起こったというより、その前段階である動脈の解離を見逃してしまったことが可能性としては大きいのではないかと思います。
毎度、同じ意見の繰り返しで申し訳ありませんが、つまりそういうことです。
この様なケースでの対策
元々あった動脈の損傷を、首の手技で悪化・進行させた可能性は否定できません。このケースでは1回施術を受けた後、頭痛が収まらずさらに複数回施術を受けたようです。
本来ですと頭痛の場合、カイロプラクティックの施術を受ける前に、リスクの排除として一度医療機関で検査をすることをお勧めします。そこで重篤な症状に発展しないような一般的な頭痛であることが分かれば、安心してカイロプラクティックの施術を受けることが出来ます。
また、医療機関での検査を受けずにカイロプラクティックの施術を受けた場合に、頭痛の変化がない、もしくは悪化するようであれば、次のカイロプラクティックの施術を受ける前に、念のため一度医療機関を受診してみた方が良いでしょう。そうすれば、少なくとも最悪の事態は避けられた可能性があります。
ネットの情報に対して
マスコミは事実を全部伝えずに、目に付く一部分のみを伝えて、より人目を引くようなセンセーショナルなものになるように仕立てられたり、印象操作してイメージを作り上げようする部分があります。そしてネットでは、それらの報道を2次利用して垂れ流しにしたり、おもしろがって拡散します。そのため、ネットの記事は、玉石混淆、有象無象、魑魅魍魎、、、いろいろな物が入り交じっている状況になります。
読み手もその事を自覚して、記事を額面どおりに鵜呑みにするのでなく、いろいろな角度から考えて読む必要があると思います。
今回は、この辺で。では。
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