新型コロナウイルスは風邪と同じである、は本当か?

これだけ世間で騒がれていると当院も触れない訳にはいかに話題、コロナ。ってことで新型コロナ関連の記事です。

今年に入ってから既に半年以上経過しました。

新型コロナウイルスに関する言及も、時間の経過によって分かってきたことが増え、年の始めに言われていたことと、現在とでは大分違いが出てきています。

そこで現時点での知識を整理しようと思い、今回記事にアップすることにしました。以前言われていたことと、現時点での認識を比較して載せていきます。

 

 

始めに

ここでお断り。

新型コロナに対する諸々の事象に関する私のスタンスは、今までのコロナ関連の記事の中で述べていたものと何ら変わりません。要は中庸でいるということ。できるだけ客観的に見る、楽観論・悲観論に偏らないということです。ですので、考えが自分と合わないと思われる方もいらっしゃると思いますが、その点はご了承ください。

前にも載せましたけど「正しく怖がる」というスタンスでやっております。

 

新型コロナは風邪と同じである。

これは今でも唱えている人がいます。

国の政策を司っている立場の人でもこのような発言をしている人がいます。例えば、ブラジルのボルソナロ大統領などです。→最近、本人がコロナにかかってしまいました(汗)

人に感染症を引き起こす一般的なコロナウイルスは229E、OC43、NL63、HKU1の4種類あり、主にのど・鼻などの上気道に症状を出し、風邪の原因の10~35%になっていると言われています。

一方、特殊なコロナウイルスとしてはSARSコロナウイルス (SARS-CoV)、MERSコロナウイルス (MERS-CoV) があり、重症肺炎を引き起こします。

新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)が引き起こす症状は、各報告の発症割合をまとめるとこんな感じになります。

症状 3月1日~5月1日CDCによるアメリカの入院患者の訴え 2月20日WHO発表の中国感染者の訴え イタリアでの軽症者202名3月の調査 ダイヤモンドプリンセス号患者
発熱と悪寒 75.7% 87.9% 55.9% 32.7%
75.7% 67.7% 60.4% 41.3%
息切れ 70.1% 18.6% 44.6% 18.3%
筋肉痛 30.1% 14.8%
下痢 27.6% 3.7% 43.6% 9.6%
吐き気・嘔吐 24.7% 5.0% 19.8%
頭痛 17.8% 13.6% 42.6% 17.3%
鼻水・鼻づまり 15.7% 4.8% 36.1% 24.0%
胸の痛み 13.8% 16.3%
のどの痛み 13.1% 13.9% 31.2% 10.6%
嗅覚低下 3.6% 味覚・嗅覚異常合わせて64.4%
味覚低下 3.3% 同上
倦怠感 38.1% 68.3% 21.2%

 

〈参考文献〉

Covid-19 – Navigating the Uncharted

コロナウイルス病 2019(COVID-19)に関するWHO-中国合同ミッション報告書(和訳)

米疾病対策センター(CDC)の内部報告書

自衛隊中央病院「ダイヤモンドプリンセス号新型コロナウイルス感染症について」

 

日本の感染者の症状割合は7月現在見つけることができませんでした。

一瞬、これを見ると風邪やインフルエンザと症状は同じようなものだと言われても仕方ないかもしれないと思ってしまいます。風邪やインフルエンザにだって軽症の人と、重症化する人がいます。

新型コロナウイルス=肺炎、みたいな印象付けで報道されていますが、実際はどうなんでしょうか?そのことについて次で述べてみます。

 

肺炎について

呼吸器は、口・鼻から声帯があるあたりまでを上気道と呼ばれています。そこから先の肺を含めた部分が下気道となります。感染により上気道までの炎症の場合、風邪やインフルエンザのような症状になります。下気道まで炎症を起こすと肺炎となります。

インフルエンザや風邪などのウイルスでも肺炎になることはありますが、実はそれは稀で、多くの肺炎は細菌性で引き起こされるとされています。

細菌とウイルスの違いはこちら

Medical note「細菌とウイルスの違いとは」

例えば、インフルエンザに罹って悪化してから肺炎に移行したとしましょう。この場合、インフルエンザが直接肺炎を引き起こしたように思われるかもしれませんが、インフルエンザで免疫力が落ちたところに細菌が増殖し、肺炎を引き起こしているというのが実情のようです。

肺炎を引き起こす原因で一番多いのが肺炎球菌(約3割)。残りの原因割合は、インフルエンザ菌(インフルエンザウイルスと別物)、マイコプラズマ、クラミジア、クリプトコッカス等合わせて全体の2割、嫌気球菌、大腸菌、黄色ブドウ球菌など合わせて1.5割、ウイルスは0.06割、残り不明、となっています(石田 呼吸器ケア 2003より)。

新型コロナウイルに感染すると、レントゲンを撮った時にモヤっとしたスリガラス状の像が写る、というのを盛んにテレビなどで紹介されていました。でもあれは新型コロナ特有の兆候ではありません。ウイルスにより引き起こされた間質性肺炎の特徴です。

肺炎は「肺胞性肺炎」と「間質性肺炎」の2種類があります。肺胞は肺臓器内の気管支の末端にある血液に外気からのガス交換を行う小さな袋の組織です。細菌は肺胞内で炎症を起こします。一方、肺胞と血管の間にある間質で炎症を起こすのがウイルスになります。

新型コロナウイルスに感染してから症状がでるのに平均4~5日、遅い場合2週間かかることもあります。そのため感染疑いがある場合、2週間の待機させられるのです。発症から1週間程度で軽症者は改善していきます。重症化する場合は、発症後5~10日すると兆候を見せるとされています。

軽症とは上気道炎で済んでいる人、重症とは肺炎まで進行した人を指します。報告によっては軽度肺炎は中程度症状として重症と区別しているものもあります。

因みに、インフルエンザと新型コロナの症状を比べた論文がpubmedにあったのでご紹介。

Clinical features of COVID-19 and influenza: a comparative study on Nord Franche-Comte cluster

出典;Microbes Infect. 2020 Jun 16

著者;Souheil Zayet, N’dri Juliette Kadiane-Oussou,Quentin Lepiller, Hajer Zahra,Pierre-Yves Royer,Lynda Toko,Vincent Gendrin,and Timothée Klopfenstein

【COVID-19とインフルエンザのクラスターの比較による臨床的特徴】

〈抜粋〉

・2月26日~3月14日までのフランスの病院での患者(COVID-19 70名、インフルエンザA&B 54名)で調査。平均年齢59歳。女性が69%。

・COVID-19とインフルエンザの症状発生の比較。嗅覚異常(53%vs 17%)、味覚異常(49%vs 20%)、下痢(40%vs 20%)、頭痛(26%vs 9%)はCOVID-19の方が多い。痰(29%対52%)、呼吸困難(34%対59%)、喉の痛み(20%対44%)、結膜充血(4%対30%)、嘔吐(3%対22%)はインフルエンザの方が多い。

・COVID-19とインフルエンザの経過は、入院(47%vs57%)、平均入院期間(6.9日vs7.6日)、ICU入りした数(11名vs5名)、ICUの期間(7.9日vs8.9日)、死亡数(4名vs5名)。

 

 

致死率

7月14日現在日本国内での新型コロナ累積感染者数は22581人、死者数983人となっています。致死率(致命率)は4%です。

厚生労働省の人口動態統計月報によると2019年の国内インフルエンザの死亡者数は3571人、致死率は2.9%。2018年の死亡者数は3325人、致死率2.7%となっています。感染者数は推定値で100000~120000人になるとされています。

参考 https://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/jinkou/geppo/nengai19/dl/h6.pdf

WHO発表の新型コロナの致死率は2%前後とされています。しかし、これは現在進行でもあるので、当然数値は変わってくると思います。

致死率の出し方は実は難しく、国によって感染者数や死者数のカウントの仕方がまちまちであったりして正確性に難があります。ですので最近では超過死亡率といって、本来その感染症が流行っていなかったら無かったかも知れない増加死者数を感染の影響があったと見なし、それを含めて致死率を求めるという手法で算出されることがあります。

それで言うとダイアモンドプリンセス号の事例は、新型コロナの実態を正確に表しているのではないかと注目されています。というのは、海上で閉鎖された空間で一定期間決まった人たちしか居なかったので、完全なデータが得られる数少ない状況であると見なされているからです。712人の感染者の内、死者13人なので致死率1.8%となります。

今まで日本は比較的症状の重い人しか検査対象となっていませんでした。そのため検査数が少なくなり、致死率が高くなるようになっているのです。現在致死率は4%ですが、今後PCR検査・抗体検査実施数が増えるにつれ、感染者数が増えていき相対的に致死率は下がっていくと予想できます。したがってWHOが提示した致死率2%という数値に日本の致死率も近づくのではないかと思われます。

こう考えると致死率的にはインフルエンザとさして変わらないと考えられます。

 

軽症でも症状が酷いって報道をよく目にするんだけど?

風邪なら大抵の人は一度はかかったことがあるし、それで命の危険を感じたという経験をした人は少ないと思います。したがって風邪でそれほど人は恐れません。インフルエンザもかかるとシンドイことになると人は知っていますが、インフルエンザが流行ったからといってパニックになることはありません。

新型コロナでパニックを引き起こすのは、有効なワクチンもなく、これといった特効薬もないとう「未知のものに対する不安」のせいでしょう。

そこでセンセーショナルな内容で人目を引こうと、報道は人の不安を掻き立てるようなものになり勝ちです。

軽症者でもこんなに辛い思いをするんだよ、的な典型的な恐怖の煽り記事の一例。

ハフポスト「まさか私が?新型コロナ疑惑で自宅療養する35歳独身女性の日記」

Forbes JAPAN「これで「軽症」と言うのか。新型コロナ感染で入院中、渡辺一誠さんの手記」

この手の記事がネットニュースを中心に話題になりました。このような記事がメディアでもてはやされます。一方、感染したけど無症状、症状あるけど気づかないほど症状が軽いという人も多くいますが、そのことについてメインで記事にしたというのを日本ではほとんど見かけません。

最近は「感染者の80%は軽症」ということもメディアで言及されるようになりましたが、実際その軽症とはどの程度のものかが今一わからない。

実際はこんな感じ。

ロイター通信4月26日「In four U.S. state prisons, nearly 3,300 inmates test positive for coronavirus — 96% without symptoms」

【アメリカの4つの刑務所で3300人近くの受刑者が新型コロナ陽性であるが、96%は無症状】

〈抜粋〉

・オハイオ州の施設では、多くが高齢者の囚人で、2300人を検査し、2028人が陽性で95%は無症状だった。

・同州のその他4つの施設全体では、3277人の陽性で、96%は無症状。

・テネシー州の3つの施設で3503人の受刑者の検査を行い、651人が陽性だがほとんどが無症状。

・ノースカロライナ州の1施設では723人の受刑者を検査し、444人が陽性で、98%は無症状。1人が死亡。

・アーカンソー州の2つの施設で大量検査(総数は公表されず)後、751人の陽性が見つかり、ほとんど全員無症状。

 

ロイター通信4月17日「Coronavirus clue? Most cases aboard U.S. aircraft carrier are symptom-free」

【コロナウイルスの手がかりか?アメリカ空母乗務員はほとんど無症状】

〈抜粋〉

・原子力空母セオドア・ルーズベルトの乗組員4800人を検査し、600人以上に新型コロナ感染の陽性反応が出たが、約60%は無症状であった。

・1人が死亡し、5人が入院した。

・乗組員は若い年齢層が中心なので発症割合が少ないと推測される。

 

上記の記事から推測されることは、軽症というのはこの様にホントに全然無症状か、病気として認識されない程度の軽症ではないかと思われます。それが感染者の8割。

悲観論者はこう言った情報はスルーして、残り2割の症状が悪い人の情報に意識がフォーカスし、パニックになったり、ヒステリックになったりするのですけどね。

ただ逆に言うと、楽観論すぎると症状がないからということを良いことに油断しまくって、ドンドン感染広げてしまうのでそこは注意が必要。

 

まとめ

現状こうして、分かっている範囲で情報を俯瞰してみると何となく判断がつくと思います。一般的に風邪で死ぬことはないけれど、新型コロナでは死ぬことはある。致死率はインフルエンザよりやや高いくらい、という従来からの提言がやっぱり妥当かな~と思われるということろではないでしょうか。

個人的には、新型コロナに対する社会の対応は現状で妥当ではないかと思います。適当に個人で衛生に注意しながらも、普通に経済活動もこなすという状態がですね。極端に自粛したり、全くコロナ以前の日常様式戻したり、というのでなく。

連日、検査で陽性がでる人数が100人を超えた、ヤバイヤバイ、連呼してパニクッてる人がいますが、今年の前半と比べて現在、検査実施数が増えているのです。しかも以前は症状が重い人中心で行われていました。今は症状軽い人や無症状者でも検査しているしようなので、陽性者数が増えるのは当たり前です。あまり目先のことで一喜一憂しない方が良いのではないでしょうか。

もちろん当然ですが、ここでの話は一般的な健康体の人の話です。基礎疾患がある人や高齢者など免疫力が弱まっている人は避けるべというのは以前からの提言の通りですね。それはインフルエンザも同じことです。

 

 

 

オマケ;情報源に関して

ネットやテレビ・雑誌のマスメディアは事実の一部分のみを切り取って印象操作を行い勝ちです。信用のおけない情報に惑わされて振り回されないように、正しい情報元からの情報を多く収集し、判断することが大事です。

テレビでの煽り報道で焦らされる前に、まずは下記に挙げたような情報元をチェックすることをお勧めします。

①CDC

CDC(アメリカ疾病予防管理センター)

アメリカ国内外の健康に関する情報を発信しています。その信頼性の高さから世界基準とみなされています。医療関係者・研究者はここを参考にしている場合が多いです。

②AFP通信

世界三大通信社の一つ。フランスにある世界最古の通信機関。

英語版

日本語版

③AP通信社

世界三大通信社の一つ。アメリカにある通信社。

AP通信

④ロイター通信

世界三大通信社の一つ。イギリスにある。たまに報道姿勢で問題を起こすことがある。

日本語版

④厚生労働省

言わずと知れた、日本の健康・福祉に関する行政を執り行う機関。

厚生労働省新型コロナ特設ページ

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