五十肩による肩の痛みとは

 

ある日突然、腕を上げようとすると肩に痛みが走り、それ以来痛みが続く、もしくは悪化していき日常の生活にも支障をきたす、ということがあります。

俗に言う五十肩です。五十代で発生しやすいので「五十肩」ですが、多くは40代以降ならどの年代でも起こります。原因が不明のものから外傷が起点になり発生するものもあります。正式には肩関節周囲炎といい、肩の関節を構成する組織のどこかが炎症を起こしているということです。

今回から一般的な肩の痛みの解説を連載でお届けします。

第一弾として「五十肩」を説明していきます。
内容は
1,肩の構造
2,痛めるメカニズム
です。

次回以降、以下の予定で掲載していきます。
第2回目が、セルフチェックとセルフケアの方法。
第3回目が、回旋腱板損傷について。
第4回目が、関節唇損傷について。

 

 

肩関節周囲炎で傷める肩の構造物

いわゆる五十肩・四十肩で、原因箇所として可能性が高いのは「肩峰下インピンジメント」か「上腕二頭筋長頭腱の炎症」です。

肩峰下インピンジメントに関して

烏口肩峰アーチ

肩峰とは肩甲骨の上外側にある骨の出っ張りで、鎖骨と連結している部分です。

図1、右肩甲骨を腹側(正面)から見たところ

図2、右肩甲骨を背中側から見たところ

図3,右肩甲骨を側面から見たところ

 

肩甲骨からは体の前側に飛び出た烏口突起という骨の出っ張りがあり、この突起と肩峰との間にじん帯が張っています。これを烏口肩峰じん帯といい、肩峰とこのじん帯でちょうど肩の関節の屋根を作っているような構造になっています。この屋根のおかけで肩の上方や前上方への安定性が保たれています。

この肩峰から烏口突起までの屋根の部分で、肩の関節との間で組織が挟まってしまうことをインピンジメントといい、ここで炎症が起こることが肩関節周囲炎の大きな原因とされています。

図4、烏口肩峰じん帯(青色で示す)。左肩を斜め上から見たところ。

 

 

回旋腱板筋と滑液包

肩の表面の大きな筋肉を取り除くと、肩の関節のすぐ近くにいくつものインナーマッスルと言われる筋肉がついているのを見れます。これは回旋腱板筋(ローテーターマッスル)と呼ばれる筋群で、肩を内側や外側に捻る役目の他に、上腕骨を肩甲骨側に安定させる働きがあります。

図5,棘上筋(きょくじょうきん。青で示す)。左肩を後ろから見たところ(表面の筋肉は取り除いている)。

棘上筋は肩を真横に引き上げる(外転運動)筋肉で、特に動き始めに重要な働きをします。また、肩の大きな筋肉である三角筋の働きの所為で、上腕骨の骨頭が上に引っ張り上がり、上部の組織を挟み込まないよう、骨頭を関節に押し付け安定するよにする働きがあります。

図6,棘下筋(きょっかきん。青色で示す)。小円筋(しょうえんきん)。

肩甲骨背中側に広くある筋肉で、主に腕を外側に捻る動き(外旋運動)を司ります。図6の青で示した筋肉です。そのすぐ下にある筋肉が小円筋でこちらの外旋運動の働きがあります。また、棘下筋、小円筋はともに肩関節に対し下方から上方に付着するような形になっていて、腕を上げた時にに上腕骨頭が上に浮き上がらないよう下に引き戻して、肩関節を安定させる働きがあります。

図7,肩甲下筋(けんこうかきん)。左肩を正面から見たところ。

肩甲下筋は肩甲骨の裏側に広くついている筋で外から肉眼では見ることができません。肩の関節の前側に付着しており、肩を内側に捻る動作(内旋運動)を行います。また、腕を上げた時に図6の棘下筋・小円筋と対をなして前面から上腕骨頭の浮き上がりを抑え込む働きがあります。

図8,肩峰下滑液包

図6でみられる棘上筋の上には肩峰との間に滑液包という袋があります。これは滑液という組織液が入った袋でクッションの役目を果たしますが、通常ではすごく薄い構造物です。

 

 

インピンジメントのメカニズム

上腕の骨頭は腕を上げる時に、肩甲骨の関節の凹みから上側に引き上るようにズレます。正常時には骨頭を下に引き下げる力が働き、肩の回旋軸が安定して腕を挙上することが出来ます。この骨頭を引き下げる働きを担うのが回旋腱板で、特に棘下筋・小円筋・肩甲下筋です。

これらの筋肉がバランスよく働かないと上腕骨頭が上に引きあがり、肩峰の下で挟み込みが起こります。この挟み込みで傷めやすいのが肩峰直下にある棘上筋や、その上にある肩峰下滑液包、次回ご説明する腱板疎部、後述する上腕二頭筋長頭腱です。

A,上腕骨頭が上に引き上げられた図

B,回旋腱板が下に引き下げる図

 

 

上腕二頭筋長頭腱炎に関して

図9,上腕二頭筋長頭腱

 

上腕二頭筋の腱の一つは、肩関節手前にある骨の窪みで出来た管状のところ(結節間溝 )を通って、肩関節上部に付着しています。腕を上げた時に結節間溝部は肩峰の下に接近する形になるので、インピンジメントに巻き込まれる可能性があります。

また、結節間溝内で腱が滑り運動をするので、使い過ぎによる摩耗で炎症を起こすこともあります。さらに、結節間溝の上には溝から腱がとび出さないように横靭帯というじん帯が蓋をしている形になっていますが、ここには図7で説明した肩甲下筋の一部が付着しているので、この筋の炎症が影響を及ぼすこともあります。

 

炎症による癒着が問題

肩関節周囲炎で問題となるのが、炎症に伴ってできる組織の癒着に関することです。内蔵、関節、筋肉など体のどこでも起こる現象ですが、炎症が起こると損傷部位を治そうと瘢痕組織が出来たり、組織の増殖が起こります。その際、組織同士がくっついて動きを妨げることがあります。

こうなると、関節を動かそうとしても動きが制限され、動かないものを無理に動かそうとするので、余計硬くなったところに負担がかかります。その際、まだ炎症が残っている部分は過敏になっているのでさらに痛みを感じます。

五十肩の場合、この癒着が関節内で起こると長い間なかなか痛みが抜けないことになります。肩関節周囲炎は1~2年ほど痛みが続くことはザラにあります。それでも徐々に癒着が剝がれていき、その内自然と痛みなく動かせるようになります。

しかし、肩関節周囲炎を引き起こす原因が改善されていないと(多くが日常の体の動かし方など)、再び肩関節周囲炎を起こします。その場合、今度は反対の肩に起こることが多いです。

 

癒着が痛みの原因の場合の解消法

強固な癒着は施術や運動ではなかなか急には剥がれません。無理に動かそうとすると逆に痛みを増加させてしまうことが往々にしてあります。

関節内の癒着を早急に何とかしたいという場合は、キシロカインやリドカインなどの局所麻酔剤とステロイドなどの抗炎症剤の混合剤を注射で打ち、癒着部分を剥がしてもらう方が手っ取り早いです。

癒着を手術で剥がす方法もありますが、あまりお勧めしません。リハビリで治す方法と手術で治す方法を比較すると、あまり結果に大差がないからです。手術の場合、感染リスクがあるためどうしてもという場合以外はあまり選択されません。

最近出た研究がありますので、参考資料として下に載せておきます。

【二次医療における初期凍結肩( 五十肩のこと)の成人の管理】
Management of adults with primary frozen shoulder in secondary care (UK FROST): a multicentre, pragmatic, three-arm, superiority randomised clinical trial

著者;Amar Rangan, Stephen D Brealey, Ada Keding, Belen Corbacho, Matthew Northgraves, Lucksy Kottam, Lorna Goodchild, Cynthia Srikesavan, Saleema Rex, Charalambos P Charalambous, Nigel Hanchard, Alison Armstrong, Andrew Brooksbank, Andrew Carr, Cushla Cooper, Joseph J Dias, Iona Donnelly, Catherine Hewitt, Sarah E Lamb, Catriona McDaid, Gerry Richardson, Sara Rodgers, Emma Sharp, Sally Spencer, David Torgerson, Francine Toye

出典;Lancet (London, England). 2020 10 03;396(10256);977-989. pii: S0140-6736(20)31965-6.

《概要》

英国の2次医療での原発性凍結肩に関する治療で、全身麻酔をしての関節マニピュレーション(操作)術(MUA)と内視鏡での関節包切除術(ACR)という2つの外科的介入法と、早期構造化理学療法(関節内ステロイド注射を含むリハビリ)(ESP)という非外科的介入法の有効性を比較した。

英国の53の病院から、片方の肩の他動的外旋が50%未満に制限された18歳以上の患者が対象となった。2015年4月~2017年12月の期間で、MUA群に201名(平均年齢54歳[IQR:54~60]、女性64%)、ACR群に203名(54歳[54~59]、62%)、ESP群には99名(53歳[53~60]、65%)がランダムに割り充てられた。

MUAとACRは術後にリハビリが続き、ESPとともに最大12週間の間に12セッションを行った。

12か月後の結果は、肩の痛みと機能の評価に関して、多くの患者がほぼ完全な肩の機能回復を果たしたが、3つの治療法に関して優劣差はあまりなかった。

 

 

 

まとめ

肩関節周囲炎は、肩関節や周囲の様々な構造(腱板、滑液包、関節包、上腕二頭筋腱など)の炎症により引き起こされることを説明しました。

次回は今回の情報を踏まえて、実際に肩関節周囲炎にどう対策するかを説明していきます。

 

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