四十肩・五十肩に対するセルフチェックとセルフケアの方法

 

肩関節周囲炎(いわゆる四十肩・五十肩)に対するセルフチェック法とセルフケア法の紹介です。

前回の記事で、肩関節を痛める時に損傷しやすい部位のを解説しました。そちらを事前にお読み頂いた方が理解しやすいと思います。

前回記事はこちら→→「五十肩による肩の痛みとは

一般的に、肩関節周囲炎で最初に炎症を起こしやすい部位は腱であると思われるので、今回は腱・筋肉にフォーカスして説明していきます。

 

セルフ・チェック法

どこの筋が痛んでいるか、徒手的に調べる方法がいくつも考案されています。本来は他人に誘導してもらい検査をします。体が捻じれたり、肩甲骨の位置が違っていたりすると正しく検査が出来ないためです。ただ今回は一人でも出来るようにアレンジしてあります。正確性は劣りますが、取り合えずの目安として役には立つと思います。

理論としては、損傷している部分をより働かせるようにし、痛みを誘発することで損傷部位を炙り出そうとしています。基本的には左右差を調べます

注意点としては、この手の検査は急性期や、もしくは急性期以外でも、腫れがひどかったり、痛みが強かったり、緊張が強いと検査結果が明確に出ない、もしくはそもそも検査不能ということもよくあります。したがってどの部位が損傷しているのか推し量ることが出来ません。正確に知りたい場合は医療機関にかかることが第一選択枝となります。

 

棘上筋腱の検査

Hawkinsテスト

Hawkins(ホーキンス)インピンジ​メント・テストは、烏口肩峰靭帯あたりに上腕骨頭を押し付けて挟み込みを人為的つくり、損傷組織を判断するテストです。このテストの陽性は、棘上筋腱損傷、肩峰下滑液包炎、上腕二頭筋腱炎の可能性があります。

 

やり方

①ガッツポーズ(腕を90度挙げた位置)から少し腕を前に出した位置に構える。

②上腕の骨を軸にして、手のひらを下に向けるように内側に捻じる。

③最大まで捻じると、上腕骨頭が前上方に押し付けられ、症状がでる。

1人で行う場合は、座って、片方の膝を高く持ち上げるように位置し、その膝を肘置き場にして支点にして、腕を内側に捻じると良いでしょう(図①)。または、机などに肘を乗せた状態で同様のこともできます。立位で行う場合は、壁際に立ち、調べる方の肘を壁に押し付け安定させて、そこを軸に内側に捻じります。

ポイントは、腕の骨を肩甲骨の関節面に合わせてスタートすることです。通常ですと、肩甲骨の関節面は、体の真横に向いている訳ではなく、そこから30°前側に向いています。しかし、肩関節周囲炎で肩が痛い人は、それより肩甲骨が前側にせり出してきている人がいますので、その場合はさらにそれに合わせ角度を調節する必要があります。

 

empt can テスト/full can テスト

empt can(エンプティ・カン)とは缶ジュースの注ぎ口を逆さにしてグラスに注ぐ動作(バットマークの動作)に似ていることから名づけられています。full can(フル・カン)はその姿勢から手首を戻し、親指が上を向いた状態を指しています。

full can test ①スタート位置 ②終了位置

 

empty can test ①開始位置 ②終了位置

 

やり方

①肩甲骨関節面(真横に腕を伸ばした状態から前に30°の位置)に対して90°に腕を挙上。

②full can テストの場合、挙げた腕に対し真下に力を加え、腕が下がらないように保持する。

③empty can テストの場合、②の状態から親指が下に向くよ前腕を内側に捻り、その腕に真下に抵抗力を加え、腕が下がらないよう保持する。

④腕をその場にキープ出来ず下がったり、肩に痛みが出たら陽性。

1人で行う場合は、検査する側の手で重り(軽いもので充分)を持ち、そちらの腕は脱力したまま、反対の手で検査側の腕を90°まで持ち上げ、そこから支えている手を放して、検査側の腕が降りないようキープします。

または、壁際に立ち、腕を検査位置まで構えて壁に押し付けることで、力を加えて同様のテストをしてもよいです。

痛みが出ると陽性で、筋力低下があればより確実性が高いとされます。

人によってはfull can テストが棘上筋腱に対するテストで、elllpty can テストを棘下筋腱に対するテストとしている場合もありますが、基本的にはどちらも棘上筋がメインで働きますので棘上筋のテストとなります。棘下筋を調べたい場合は次のテストを行います。

 

 

棘下筋腱の検査

externa lrotation lag sign(エクスターナル・ローテーション・ラグ兆候)

棘下筋が肩の外旋(外へ捻る動き)を主に司っています。その動きを再現して、痛みや筋力低下が出るかテストします。

やり方

①体の横に検査をする側の肘を構え、肘は90°、親指は天井方向に向くようにし、手首・腕共にリラックス。

② ①の位置から手を外側に45°外に開くようにし、肩を外旋させる。

③ ②の位置から腕を外から内へ押す力を加え、肩の外旋位が緩まないようキープし続ける。

④棘下筋に問題があるとその位置をキープできない。

本来の陽性は、検者が被験者の肩を最大外旋位にしたところで支えていた手を放し、その位置をキープ出来ずに腕が内側に戻ろうと兆候が見えることです。

ただ、そこまでの重症はあまり見ないので筋力検査的な簡易バージョンで充分です。

1人で行う時は、壁際に位置して、検査側の手を壁に押し付けることで抵抗力を加えてみましょう。もしくは、もう片方の手で抵抗を加えても同じことが出来ます。行う際は、体を捻ったり余計な動作が入らないように背中を壁やイスの背もたれに着け、肩甲骨を固定して行うことをお勧めします。

 

肩甲下筋の検査

lift-off test (リフト・オフ・テスト)

やり方

①立った姿勢で、背筋を伸ばし、検査側の手の甲が腰に触るように位置する。

②手の平を後ろに押すようにして、手を腰から離す。

③肩甲下筋に問題があると手を腰から離せない。

腰に後ろから手をまわして宛がう動きは、帯を結ぶ動作に似ていることから結帯動作と言います。この開始位置は、肩が内側に捻じる動作(内旋運動)が強く行われます。そのため肩甲下筋のテストとなります。

 

belly press test ( ベリー・プレス・テスト)

先ほどのlift-offテストの開始位置は、肩が痛い人には厳しいので、より負担が少ないbelly press を採用することがあります。

やり方

①お腹に検査側の手の平を当てる。その際、肘の位置が体の後ろに行かないように、体より少し前にあるのが望ましい。

②肘の位置をその場にキープしたまま、手の平で自分のお腹を押すように力を入れる(図①)。

③肩甲下筋が働いていないと、肘を後ろに引くことでお腹を押そうとする(図②)。

 

 

セルフ・ケア法

セルフケアの方法は、基本的にリハビリの考え方と一緒です。痛めているところがあれば、そこは休め、他の筋で代用できるように訓練する。もしくは、筋バランスが崩れて一部に負担がかかり損傷しているのであれば、そのバランスを正すように弱い筋を強化する。ということになります。

セルフチェックで傷めている筋を特定したら、それに応じて、まずは痛みの出ない他の筋をエクササイズします。ストレッチしてみて硬くなっている筋があれば、それを重点的に伸ばします。損傷している筋も同様に、まずストレッチから取り掛かります。

痛みが和らいで来たら徐々に損傷筋もエクササイズしていきます。最初はごくごく軽い負荷から始めましょう。よく行われるのが、緩いゴムチューブを用いたものや、1㎏程度の重りを使ったものです。動かすスピードは反動が付かないようにゆっくり行います。動かす範囲も可動域一杯まで動かさず、痛みが出る手前までです。

エクササイズの回数は重要で、あまり回数は少ないと効果があがりません。一般的には1種目を30回を3~4セット行います。使っている筋に重だるい疲労感が出るまで行います。スポーツ競技者であれば1セットにつき100回以上必要になることもありあります。

毎日行います。

回復するに伴い負荷を強めたり、やり方を変えたり、アレンジを加えていきます。

 

棘上筋のエクササイズ

ストレッチ

①体の後ろで、患部側と反対の手で腕を引っ張る。

②腕を内転することで棘上筋が伸びる(左図)。

③ストレッチ感が少ない場合、患部側の肘を曲げ(反対側の肩甲骨を触るように)、その肘を反対の手で引っ張り上げることによりストレッチ感を増すようにする(右図)。

 

筋トレ

①体の真横に患部側の腕を垂らす。親指を外向きに構える。

②同側の足でゴムチューブの端を踏んで固定し、もう一方の端を手でつかんで、腕を30°の角度まで外に開く。

負荷はゴムチューブ以外でも、ペットボトルに水を入れたものや、バーベルなどなんでも構いません。姿勢を崩さずにして、体を傾けることで動かそうとしないで下さい。30°以上挙げようとすると、棘上筋以外の筋も関与してくるので、30°までの角度で終えるのが一般的です。

 

棘下筋のエクササイズ

ストレッチ

棘下筋は肩を外側に捻る動きをするので、伸ばす場合は逆の動きの肩を内側に捻る動きをします。

 

①伸ばしたい方の腕を胸に引き付けて肩甲骨の後ろの部分に伸びる感じを得る。

②そこからさらに親指が下へ向くように腕を内側に捻る。

 

もっと伸ばしたい人のストレッチ法

肩の内旋を強く促す動きをします。

①ストレッチしたい側の手の甲を腰に乗せる。

②外に張った肘を反対の手で前の方に引く。

 

筋トレ

ゴムチューブやゴムバンドを使ったトレーニングはとても有名です。

①肘を90°に曲げて、体の横に固定。

②ゴムチューブを反対の手に持って固定とし、トレーニングする側の手と同じ高さに構える。

③筋トレ側の手でごむチューブを握り、肘を支点に、手を外側に動かしゴムを引く。

 

ウェイトを使った例

ゴムチューブがない場合は水の入ったペットボトルやダンベルなどで負荷をかけますが、重力方向に重りが動くように体を横向きに寝た姿勢にします。トレーニングする方の手が上にくるように寝ます。

①肘を90°に曲げ、肘を離さないに手を持ち上げる。

②同じ軌道でゆっくり降ろす。

 

肩甲下筋のエクササイズ

ストレッチ

肩甲下筋は肩を内旋させる役目がある筋肉などで、肩を外旋させると伸びます。その状態でさらに肩の前が伸びる動作を加えるとさらにストレッチ出来ます。

①壁際に立ち、ストレッチしたい方の肩を壁に近づけ腕を下へ垂らす。肩を外へ捻じって手の平が外(壁の方)へ向くようにする。

②壁面で手の平を滑らせるようにして、腕を後ろから上に引き上げて、挙げれるところまで。

③さらに肩の前面をストレッチするように、上体を反対方向へ捻り肩を前に入れる。

 

もっと伸ばしたい人のストレッチ

投球動作のような腕を振りかぶった姿勢は、上腕骨頭が肩関節の前側に押し出されるような形になります。それを防いでいるのは肩関節を前から押さえつけている肩甲下筋です。この筋が引き伸ばされそうになるのを緊張してその場に留めようとしてくれます。この筋を伸ばす時もこの姿勢を取ればよいことになります。

①ストレッチしたい方の肩を90°横に上げて、肘を90°に曲げ、手が天井を向くように肩を外旋させる(投球動作の振りかぶった形)。

②壁などを使い、さらに肩の前がストレッチされるように、肘を体の後ろ側に引かれるようにする。

この姿勢は肩へのストレスがかなりかかるので、肩関節周囲炎の人がかなり回復が進んでから行うことになると思います。

筋トレ

ゴムバンドを使った例

①座った状態で、トレーニングする側の肘を90°に曲げ、体の脇に付け固定する。手は前に向いた位置からスタート。

②ゴムチューブの端をドアノブやテーブルの脚などに括り付け、構えた手で握る。もしくは、反対の手でゴムを持ち固定する。

③肘を支点に手を体に近づけように動かし、肩の内旋運動を行う。

 

ウェイトを使った例

 

小円筋のエクササイズ

ストレッチ

小円筋は肩を外旋させる筋なので、ストレッチする時は肩を内旋させます。

①ストレッチしたい方の手で柱やドアの縁など固定できるものをつかむ。つかむ際に、手首を内側に捻って(親指が下へ向いた状態)肩が内旋するようにつかむ。

②つかんだ手は離さないよう固定して、脇の下の後ろがストレッチされるように、体全体を固定した手から離れる方向に重心移動させる。

 

筋トレ

腕相撲の動きを逆にしたような動きが適切です。

①テーブルの上にトレーニングしたい方の肘を乗せ、支点とする。肘の角度を90°。

②腕相撲で勝った時のように手を内側に倒し、そこでゴムチューブをつかむ。反対の手でゴムチューブを押さえ固定する。

③トレーニングしたい方の手を起こしていき外側に移動させる。この際、肘がズレないよう注意する。

 

まとめ

今回は一般的な四十肩・五十肩にたいする検査法とセルフケア法をご紹介しました。しかし、腱板損傷も関節唇損傷も基本的なやり方は似たようなものになってきます。

お医者さんに行ってみたけどレントゲンとって「骨には異状ないから様子見て」と言われ、湿布と飲み薬だけもらって他に何すればいいか分からない!?っていう方が結構多いと聞きます。そのような時は、今回の情報を参考にして頂くと良いと思います。

ただ、くれぐれも痛いのを無理して動かすというのは止めて下さい。自己判断で無理して余計悪化させる人が多くいます。迷ったら、まず専門家に相談するのが得策です。

次回は肩関節周囲炎が進んで腱板の損傷が大きくなった場合についてのお話をしていきます。今回はこの辺で。

 

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