稽留流産になると、その後掻爬手術を行います。子宮内に残っているものを掻き出すための手術ですね。

その後しばらくしてから腰痛に見舞われるケースがよくあります。今回の症例報告は、30代の流産後の腰痛の訴えです。

 

初診

掻爬手術後1ヶ月経過してから職場復帰。ヒールで歩き回ったり、長時間座って過ごすことが多くなった。そのころから右のお尻と腰のつなぎ目辺りから痛みを感じるようになった。1週間前より痛みが強くなり出したので来院した。状況は、10分くらい座っていると痛み出し、立っている方が楽。今まで腰が痛くなったことはなかった。

以上のような状態でのご来院でした。患部を触ってみると明確に痛み部位が特定できて、モロに仙腸関節の直上に局所痛が出ていました。産科で見てもらったところ特段、異常なところはないということなのでカイロプラクティックの適応と考えられました。

評価&方針

立った状態や座った状態でも、右の骨盤が後方に出っ張っていて、仙骨もそれにつられて右に回旋しています。身体を屈める動作で痛みが出て、80度位で痛みが最もでて、そこを過ぎると痛みが減るといった具合でした。

 

まずは右の仙腸関節炎を想定して施術をすることにしました。仙腸関節の炎症は、その部位が明確に局所痛として現れるとされています。そして前屈を深くすると仙腸関節の後ろを支えている後仙腸靭帯がピンッと引き伸ばされて痛みが出ます。その位置を過ぎると動きのテンションが股関節・殿部に移り、仙腸関節へかかるテンションが少し和らいだりして痛みが減ると事があります。これらのことに合致するので仙腸関節の問題であろうと想定されるのです。

 

実際、仙腸関節の異常な位置にあるのを修正してあげると、動いた時の痛みが減ります。仙腸関節が緩い場合、座った時に坐骨が下から押し上げられてストレスがかかり痛みを出すことがあります。今回はこのパターンに当てはまったと思われました。

今回は過敏に痛みを発し、深部というより、より表層に近い部分で痛みを感じていたようなので、まず炎症の処置をして、その後モビリゼーションとブロックで骨盤の傾きを修正し、テーピング固定と骨盤を締める運動を行ってもらいました。

 

経過

1週間後に2回目のご来院がありました。お話によると、術後2日間は痛みがほぼ無くなり、その後徐々に戻ってきたと言うことでした。痛みの無い期間が出てくることは良い兆候です。それがどんどん長引けば良いだけの話ですから。その後も1週間おきに3回目、4回目と施術をさせていただきました。

4回目、5回目あたりでは、日常生活ではあまり痛みが出なくなったが、2~3時間くらい車の運転や、会議で座りっぱなしになると痛みが出るということだったので、骨盤の矯正方向の微調整と骨盤を絞めるためのエクササイズをアレンジして追加しました。その後、長時間のドライブや会議での座りっぱなしでも痛みはほぼ解消されたと言うことでした。

骨盤の矯正方向の修正を加えたのは、この方は右の骨盤の後方への突出が目立っていたのですが、後方変位にしては通常に比べ突出の程度が大きいと思われたため、実際骨盤の右の骨(寛骨といいます)の横径をメジャーで計ってみると、左より長かったためです。骨の上には筋肉がついているので、その盛り上がりで長く計れてしまうこともありますが、見た目それほど筋量の差はなさそうなので、骨自体の大きさが若干違うと思われたのです。この部分を考慮しないと過剰矯正や間違った方向への矯正を加えてしまうことにもなりかねません。

 

 

解説

流産時も基本的に産後の処置と同じ扱いです。妊娠中に分泌されるホルモンでリラキシンというホルモンがあります。一般的に靭帯・関節を緩める作用があるので、リラキシンのせいで妊娠中は腰痛・骨盤痛が起こると言われています。しかしそのことについて当院の以前のブログ記事「妊娠中の骨盤の痛みとリラキシンとカイロプラクティックについて」の中では、未だにそのような明確な証拠はないない、ということをご紹介しました。

ただし、実際にはリラキシン単独での変化は無いにせよ、妊娠が始まれば体の組織にも変化は出てきて、痛みが出やすい環境になるというのは感じられます。現実に流産後にも腰痛があるというのをよく聞きます。大抵の場合、流産後に起こる腰痛に対しては、妊娠期・産後に起こる腰痛に準じて対処すればOKという印象です。

今回のケースのクライアント様は、もともと右の寛骨の大きさが左に比べ構造的に大きかったようです。教科書的に骨盤の矯正は、左右の寛骨や仙骨の左右対称性を比べて歪みを測定し、左右差があればそれを均等に近づけるように施術するというのがセオリーとなっています。これは元々の骨の大きさは左右均等であるという前提に基づいて行われる方法です。

しかし人間は成長過程で色々刺激を受け、発達の仕方も一様ではく、左右不均等であることも少なくありません。その点を考慮して施術していく必要があると常々感じています。今回のクライアント様も症状はなかったかも知れませんが、妊娠前からも骨盤の左右差から普段から右の仙腸関節に負担がかかりやすかったと想像できます。それが妊娠の変化により症状となって現れたと想定できるのです。

 

まとめ

産後のみならず、その他の捻挫や脱臼後の後遺症、生まれつきやバレエやヨガのやり過ぎなど関節の緩さが問題になっている場合は、そのまま固定して固めてしまおうとするより、良い位置に関節を戻してから固定してあげる方が回復もはやく、あとあと問題も起きづらいと感じます。

歪んだまま固定されてしまう前に修正をかけておくことは、将来の問題発生のリスクを減らす可能性がありますので、ぜひともケアすることをお勧めします。

今回はこの辺で。

 

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