めまいの症例報告でたびたびご登場するシェロン・テスト。以前、自律神経の状態把握のために適用していると概要をご紹介をさせていただきましが、今回はさらに少し細かいところを語っていこうかと思います。

 

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1、シェロン・テスト(起立負荷試験)とは

Schellong testは、日本では「シェロン」と読む場合が多いですが、「シャロン」や「シェロング」と読む場合もあります。和名では「起立負荷試験」です。当院では簡便に「起立試験」と呼でいます。英語では別名「orthostatic hypotension test」といい、訳すと起立性低血圧試験となります。
実際のやり方は、こちらの動画を参考にして下さい。

 

 

基本的なやり方としては、①一定時間安静に寝てもらい ②そこから立ち上がってもらい ③10分ほど立っていてもらう というもので、この一連の動作の最中に脈白・血圧の計測を行います。計測するタイミングは、安静時、立ち上がってから厳密にやる時は1分おきに、簡易的には3分おきに計測します。起立性低血圧には、起立直後に発症するものが一般的ですが、遅発性起立性低血圧という立ち上がって10分くらいしてから発症するものもあるので、本来は10分くらい計測することが望ましいです。

自律神経は多方面の機能をになっています。したがって、一つの検査でその障害の範囲や、障害箇所を断定する事はできません。症状把握や、改善度合いの判定として当院では行っています。起立試験もその一環で行っています。

 

2、血圧を保つメカニズム

まず最初に、立ち上がった時にどのようにして血流は保たれているかをお話する必要があります。

起立時の血圧

寝た状態から急速に立ち上がると、全体の血が重力に引かれ、下半身に移動します。そのため上半身の血圧が低下します。これを各受容器が察知し、反射的に血圧を元に戻そうと、心拍出量が増えます。

min全身循環a03出展;(財)北海道心臓協会

血圧に関する受容器

血管にかかる圧力を察知する受容器(センサー)は、以下のものがあります。

①大動脈弓

心臓から上向きに出た大動脈が首・頭部への血管を枝分かれさせ、下向きに折れ曲がるカーブのところに、高い圧力を察知する受容器があります。ここの情報は、迷走神経の中心性線維を使い伝達されます。

②心房&肺の血管

血圧の低下したのを察知する受容器があります。こちらも迷走神経求心線維による伝達です。

③頚動脈洞

総頚動脈が内頚動脈と外頚動脈に分岐するところにある頚動脈洞に血管にかかる圧力を察知する受容器があり、舌咽神経から情報が伝わります。

 

自律神経の血管支配

①~③の情報は、延髄に存在する狐束核というところに伝わります。ここから延髄網様体に位置する血管運動中枢内の吻側延髄腹外側部に情報が伝わり、血管を支配する交感神経を活動させる命令を出しています。体の末梢から来る情報は、血管運動中枢が興奮するのを抑える働きがあります。

ほとんどの血管は交感神経のみに支配されていて、常に収縮するよう命令が働いています。一部のみが拡張性の交感神経支配と、副交感支配になっています。血管の収縮度合いは、交感神経の活動度で調整されます。交感神経による血管収縮が働かないと、血圧は40㎜Hgに低下し、生命を維持できなくなります。

一方、副交感神経の血流調整に対する働きは、迷走神経を介して心拍数を減らす方向で現れます。

全体的に体の循環器系の制御は、活発化させる方向に重点が置かれ、活発化せせる系統は、

①交感神経が心臓と、血管を緊張・活性化する。

②交感神経が副腎に働き、血圧を上げるホルモンを出させる。

③脳下垂体からホルモンが出て、全身の血管収縮を促し、腎臓にも働きかけ、血圧の増加を起こす。

活動を抑える系統は、先ほど述べた、副交感神経による心臓の働きを抑えるもののみです。

 

3、起立時の超早期の脈拍変動の意味

上記のようなシステムで血圧の正常状態は維持されています。正常な時で急速に立ち上がった時に、30秒以内に2段階の脈拍の増加をみせます。その後、直ちに脈伯が減少し、そこから少し増加して、さらに時間の経過と共に徐々に安静時に近づいていきます。

この変動に対して、各局面にはそれぞれ意味があります。そこから自律神経の状態を推測するために役立てています。

正常パターン模式図

正常

 

 

 

 

 

 

 

局面①立ち上がった瞬間から5~10秒くらい

一般に、心拍を増加させるのは、交感神経が興奮するためととらえられますが、この局面では、副交感神経の機能の働きを評価していると考えられています。急速に立ち上がろうとする時に、運動中枢からの命令と、動き始めの体からの固有感覚器・圧力受容器などの情報から、体を動かすための血流量を確保するため、心拍を抑制している副交換神経(迷走神経)の働きが抑えられます。そこで相対的に交感神経の働きが活発になり、心拍増加を起こします。この局面が初期脈拍増加といい、副交感神経抑制の働きが上手く機能しないと、この局面の反応が現れません。

局面②立ち上がり15~20秒くらいまで

立ち上がり超初期の段階で心臓から血が送りだされますが、それに伴い心臓に戻ってくる静脈の圧力が瞬間的に減ってしまいます。この血圧低下に伴い、次に交感神経系が活性化し、末梢血管は収縮し、心臓は脈拍が増加し、最大心拍を記録します。

局面③立ち上がり20~30秒くらいまで

上がりすぎた血圧を血管の圧受容器が反応し、副交感神経が今度は活性化し、心拍が低下します。この地点を最小脈拍といいます。

局面④その後

最小脈拍から少し血圧が高めにぶり返し、そこから徐々に低下して正常値に戻ります。通常のシェロン・テストでは3~4分ほど経過時に収縮期血圧が安静時より20mmhg  以下に低下していると病的と判断します。逆に心拍が30~40拍以上増加している場合も頻脈症として異常と捕らえます。

 

 

病的な異常パターン模式図

自律神経に病気を引き起こすものとして、シャイ・ドレーガー症候群、糖尿病性自律神経障害、アルコール依存症の離脱後症状、脊髄損傷、長期臥床、脳腫瘍、脳血管障害などがあります。

①交感神経過剰

交感神経亢進

 

 

 

 

 

 

最小脈拍へ向かう副交感神経の反応が弱い。

②副交感神経過剰

副交感神経亢進

 

 

 

 

 

 

最小脈拍へ向かう副交感神経反応が強い。

 

③交感神経・副交感神経低下

交感神経・副交感神経機能低下

 

 

 

 

 

 

変化に乏しい。

 

まとめ

今回は当院でおこなっている自律神経機能検査の一つであるシェロン・テスト(起立負荷試験)の活用法の中でも、特に超早期における脈拍変動の意義をお伝えしました。