子供の起立性調節障害について

 

起立性調節障害(orthostatic dysregulation;OD)についてたまにお問い合わせを頂くことがありますので、ここで解説していきたいと思います。

病気の詳しい内容は次にあげるサイトをご覧ください。

日本小児心身医学会「起立性調節障害(OD)」

ウィキペディア「起立性調節障害」

 

また、一般書籍は、起立性調節障害の診断・治療ガイドラインを元に書かれたこちらがお勧め

改訂 起立性調節障害の子どもの正しい理解と対応

 

ここでは、実際にこの病気をご家族・身近な方がかかった場合の対処についてと、カイロプラクティックとしてどのように対応するかについて、の要点をお伝えします。

 

ポイント1 他の病気と区別する事

まず大事なことは、専門の医療機関でODなのか、他の病気なのか、しっかり鑑別してもらう事です。

ODは、一般的に小学生高学年から高校一年生の時期に発症しやすく、次の症状を起こします。

①立ちくらみ、②朝の起床が困難、③午前中が体調不良で午後から回復、④夜寝付けない、⑤頭痛、⑥腹痛、⑦吐き気、⑧失神、など。

これらの症状を引きを起こす他の病気として鉄欠乏性貧血、てんかん、甲状腺ホルモン、副腎ホルモンなどの異常があります。これらとの鑑別が必要です。また、精神疾患として小児うつも同じような症状を呈します。

さらに、最近では新型コロナ感染後の後遺症として「ブレインフォグ」などが同様の症状を引き起すとして注目されています。

しかし、それぞれの疾患は原因や発生機序が違い、対応・処置が違います。もし、判断を誤ると、症状を長引かせたり、悪化させる可能性があります。

 

ポイント2 治療院のかかり方

日常に支障のない軽症例では、2~3ヶ月で軽減します。

日常生活に支障がでる重症例では2~3年で改善するとあります。ある調査によると、3年以内で改善するのが50%、10年以上かかるのが9.5%、残りが10年未満での改善という報告があります。そして、女性の方が重症化するリスクが高くなり、男性では9割が4年以内で改善しています。

男子学生の平均治癒期間は2年です。仮に1年前に発症し、病院に通っていたがあまり改善しなかった。そこで、ハリや整体、カイロプラクティックなどの治療院に通ってみたところ1年くらいで改善した、という場合があったとしたらこれはどう考えるべきでょうか?この場合、そもそも治療院の施術は効果がなくて、単なる自然に治癒した可能性が高いと考えられます。

したがって男子の場合、効果の感じられない施術院での治療をダラダラと長期に受けるのはお勧めしません。単なる施術代の浪費に終わると考えられます。かと言って、あまりに短期での施術の打ち切りでは効果が発揮しない場合もあります。通院は3~6ヶ月を目途にしてみると良いでしょう。

一方、女子の場合は、男子より重症化、長期化する傾向にあり、1割くらいの患者は成人後も症状が継続する場合があります。より長い目で経過を見る必要があります。

また、ある報告では成人以降でも症状が残る人が男子で24%、女子で49%であるとされています。ただその内で治療をしている人は殆ど存在せず、社会復帰をして日常生活はこなせている状態になっているとの事です。もし、さらに体調を改善したいという希望があるのであれば、その時はカイロプラクティックや鍼灸・整体など代替療法を利用すると良いでしょう。

 

ポイント3 日常ケア

ホームケアの方法は、多くのwebや書籍で内容が語られているのでそちらをご参照下さい(前述のサイトなど)。

ここでは要点のみ記します。

ODの人は睡眠障害に陥る人が多く、これは生体リズム(サーガディアンリズム/概日リズム)が健常者より3~5時間ほど遅くなるために起こります。そのため、通常ですと起床時に交感神経が活発になり、午前から体が活動的になるべきところが、それが起こらず朝起きることが困難となり、午前中も体を動かしづらくなっているのです。

一方、夜は交感神経が活発になっているので、目が冴え、寝付けなくなります。

ODは、主に上体を起こした時に血を脳に送る能力が弱くなり、ふらつきや倦怠感を生じさせる病気です。しかし寝てると楽です。集中力も低下するので、勉強をすることが困難になりますが、夜は目が冴えるので、ゴロゴロしながらこなせるゲームや漫画を読むなどを夜中していることが多くなります。

この様な生活を続けていると、

①上体を起こした時、脳に血を送る神経機能の能力がますます低下

②ゴロゴロしているので下肢の筋力低下で、下肢から上に向けての血を送る能力の低下

で、症状がますます悪化します。

 

そこで、重症例ではまずここから。

①下肢の筋力維持のため、散歩。また、リラックス効果が得られ、筋肉の柔軟性をキープする目的でストレッチやヨガもお勧めできます。

②できるだけ規則正しい生活を送るようにし、朝の起床時に日光を浴びて、生体リズムを作る。

③暑さを避ける

 

日中活動できる例では、

①激しい運動は避ける。血圧低下で失神したり、徐脈や頻脈を起こし気分不良を起こす可能性があります。

②食生活では、水分を多めにとること(2ℓ以上)が推奨されています。同時に1日10~12gの食塩を取る事も必要とされます。これらは血液量と血圧の維持に重要となってきます。

③場合によっては環境を変えることも考慮する。通学が長時間かかってしまう場合は近場に転校、高校生なら定時制に転校など。学校側・担当医との相談が必要です。

 

ポイント4 カイロプラクティックでの対応

ODの原因は不明です。ですが、中学生の約10%は発症していると推測されています。その中で重症例は約1%です。

成長に伴う心身の変化により身体・神経のバランスが上手く取れていない状態と考えられます。女性のホルモンバランスの変化に伴う更年期障害の若年者バージョンと考えてもらえば良いと思います。

カイロプラクティックの側面から自律神経調節を考えてみると、自律神経系の中枢の多くが延髄にあるため、この部位の活性化・沈静化をすることで自律神経系に影響を与えようとします。神経には回路と呼ばれる神経接続のパターンがいくつもあるので、それを利用します。

また、ODには漢方やハリなど東洋医学的なアプローチが効くことがあり、カイロプラクティックではAK(アプライドキネシオロジ―)などの手技が東洋医学的考えと親和性があるので、それを利用して施術することもあります。

呼吸は自律神経機能の中で数少ない自分でもコントロールできる部分です。それを利用し、自律神経系に働きかけることも出来ます。

カイロプラクティック学的な分子栄養学的の視点からは、体調不良の大本は何らかの炎症と、それに関連する免疫系の反応が関係すると考えています。自律神経の不調も同様と考えらえ、その際、栄養的な点では次の2点を重視します。

①栄養を吸収する場所である腸内環境の改善

②必要な栄養を過不足なく摂る

基本的には過剰な砂糖やジャンクフードは避け、後は栄養バランスよく食べればよいです。栄養療法を謳っているところは、フードファディズム(食べ物への偏狂的な行為)になりやすいですが、あまり科学的な根拠がないものもあります。

食欲がなく、あまり栄養と摂ることが出来ない場合は、サプリなどの栄養補助食品を利用することも考えてみると良いでしょう。

 

まとめ

起立性調節障害は、あまり世間一般に知られていない割には、軽症含め中学生の約1割に存在するという多さを誇る疾患です。短いものでは数か月で治ってしまう場合もあるので、一時的な体調不良で終わってしまい、成長に伴う生理現象の一種とみなされることもあります。

しかし、重症化すると社会復帰するのに10年以上にも及び、その後の人生設計にも支障をきたしかねない厄介な病気です。

大事なことは、まずは正しい知識や対処方を知り、将来の不安を減らしていくことです。今回の情報がその一助になって頂ければ幸いです。

今回は、この辺で。

 

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