【今回の記事はブログ統合のため、他ブログより転載しました(初出2017年9月)。】

 

今日は、ダフィーカイロです。

今回は日ごろから疑問に思っている手技療法に関しての考察です。たぶん、一般のクライアント様には関係ない話です。ちょっと、自分の頭の整理のために記していきます。

 

 

盲信と確信は違います。

手技療法のなかには、特に微細な動きを感じ取ろうっていうのがあります。特にオステオパシーなどを中心とした頭蓋骨の動きや、内臓の動きなどがそれに当たります。

以前、オステオパシーの手技を使う理学療法士の勉強会に参加させていただいたことがあるのですが、そこで子宮の位置を動かすために、胸郭を緩めることで子宮の動きが修正されるというのをやりました。それがどうみても胸郭を緩めたせいで腹斜筋が緩み、単に下腹部の筋の張りが減ったという程度のものだったのですが、それを下腹部に手をあてがい「こんなに子宮が動いたでしょ~」とやっていたのでした。

その場で「腹斜筋が緩んだだけだろ!」と突っ込みを入れたくなりましたが、最近、ちょっと大人になった私はそのようなKYなことはせず、じっと見守っていたのでした。

このような民間療法の現場って、ホント、ディスカッションできないんですよね~。それが本当に正しいか間違ったいるか議論することなく、作った人がそう言っているんだから信じてやれ!みたいなノリで。

こういうような曖昧さは、別にオステオパシーに限った話ではありません。以前、カイロプラクティックのセミナーに参加されていた鍼灸師の方と会話したとき「いろいろな偉い鍼灸の先生に自分の証をたてて(診断)もらったところ、皆がみな自信満々に違うことを言う、その信頼性のなさに落胆した」というお話を伺いました。その時、私は「カイロプラクティックも同じようなもんですよ」と言いました。

 

手技療法でいうところの微細な動きの代表格「頭蓋の動き」

上記のような例で、特に象徴的なのが頭蓋骨の動きです。頭蓋骨のことを「クラニアル」といいます。仙骨のことは「セイクラル」といいます。オステオパシーの主流の療法に頭蓋仙骨療法というのがあり、「クラニオセイクラル・セラピー」または「クラニアルセイクラル・セラピー」と呼ばれています。これは、頭蓋骨の中から背骨の中を通って、仙骨のところまで脳脊髄液が循環していて、それが一定のリズム(波動/律動)をもって動いている、そのため頭蓋と仙骨はそのリズムに合わせて一定の動きをするという理論です。

 

 

 

今やこの理論はオステオパシーのみならず、カイロプラクティック、ロルフィングを始めいろいろな所で使われています。頭蓋骨は脳脊髄の動きに合わせ先ず後頭骨が動き、それに伴い歯車がかみ合って動くように他の骨(側頭骨や蝶形骨など)も一定の動きをするというのがあるのですが、そこで厄介なのが流派によって少しずつ言っていることが違ってたりする場合があります。

この頭蓋骨と仙骨の動きのなかで比較的捕らえやすいのが仙骨と後頭骨といわれていて、他の頭蓋骨はもっとよく分からないのです。仙腸関節の動きが2~3㎜程度ですが、さらにさらに小さい動きとされていますからね。

で、いつも疑問に思っているのが、こんなちっさいちっさい動き(本当にあるかどうかも分からない動き)を触ってみんな分かった分かった言っているけど、本当に分かっているの?ただ単に分かったような気がしているだけ、幻想を抱いているだけではないか?っていう気がしてしょうがない。

この脳脊髄液のリズムは、呼吸のリズムや心拍のリズムと別なので「一次呼吸」と名づけられています(医学用語や生理学用語ではない)。が、常日頃感じているのは、皆、この呼吸や心拍のリズムとごっちゃにしてないか?ということです。

以前、背骨を切り開いて脊髄の手術をする映像を見たことがありますが、その時、確かに脳脊髄液は波打っていたのは確認できました。ただし、それで骨が動いているかどうかは別です。昔に、頭蓋骨の動きを実験で電気的に記録したという話を聞いたことがありますが、それはオステオパシー側が言っているだけで、そのことを科学的信憑性のある論文として発表されているというのはまだない(はず)です。

そんなことを考えていたら、研究者で同じようなことを考えている人達ががいるようで、そのことについて調べている研究論文がいくつか見つかりました。それをこれからご紹介します。年代が古い順に並べています。

 

【頭蓋仙骨運動測定の評価者間の信頼性、被験者と評価者の心拍数と呼吸数の測定値との関係。】

Interrater reliability of craniosacral rate measurements and their relationship with subjects’ and examiners’ heart and respiratory rate measurements.

著者;Wirth-Pattullo V1, Hayes KW.
Phys Ther. 1994 Oct;74(10):908-16; discussion 917-20.

【概要】

背景と目的:
頭蓋仙骨運動の評価は、痛みおよび機能不全の原因を評価するために理学療法士および他の医療従事者によって使用される手法であるが、この動きの存在に関する証拠は欠けており、この触診技術の結果の再現性は研究されていない。本研究では、頭蓋仙骨の運動数の評価者間の信頼性と、頭蓋仙骨の運動周波数と評価者の心拍数や呼吸数、被験者の心拍数や呼吸数との関係を検討した。
題材:
参加者は、肉体的外傷、手術、または学習障害の既往のある12人の小児および成人であった。頭蓋仙骨治療における専門知識を有する3人の理学療法士が評価者となった。
方法:
3人の看護師のうちの1人が、被験者と評価者の両方の心臓および呼吸数を記録した。評価者は被験者を触診して頭蓋仙骨運動数を決定し、その結果を看護師に報告した。各被験者は、3人の評価者のそれぞれによって検査された。
結果:
反復測定の分散分析およびクラス内相関係数(2,1)を用いて信頼性を推定した。評価者達と散らばったレートのプロットの間にある有意な相違は、評価者間の一致の欠如を示した。ICCは-0.2であった。、被験者の頭蓋仙骨運動周波数と、被験者や評価者の心拍数、呼吸数との相関性はピアソン相関係数により分析された。そしてそれは統計的に有意ではなく、低かった。

考察と結論:
頭蓋仙骨運動の測定は、心拍数および呼吸数の測定値に関連するようには見えず、セラピストはそれを確実に測定することができなかった。測定誤差は、多くの臨床的決定に潜在的に誤りを与えるほど十分に大きなものである。頭蓋仙骨運動が存在するかどうかを検証し、頭蓋仙骨運動の評価の解釈を検討し、評価のすべての側面の信頼性を決定し、頭蓋仙骨療法が有効な治療法であるかどうかを調べるために、さらなる研究が必要である。

アメリカ・イリノイ州、Physical Therapy Ltd発表の1994年の論文です。

頭蓋仙骨リズムは、よく言われるのが1分間に6~12回の周波数であるということです。そこで、理学療法士でオステオパシーの教育を受けた3人が評価者となり、12人の頭蓋仙骨運動の評価をしました。同時に評価者と被験者両方の心拍数と呼吸数も計測しました。呼吸をすれば胸郭が動き、その動きが触診部位まで伝わり、触診に影響を与えるためです。心臓の拍動も同様の影響をあたえるので、その両方の数もはかり、触診で得た律動数に関連しているかを見るためです。

結果としては、心拍数と呼吸数には影響を受けていなかったようですが、評価者の数値は一致しておらず、臨床で使えるものではなかったということです。

 

【頭蓋仙骨リズム:信頼性と心臓数および呼吸速度との関係。】

Craniosacral rhythm: reliability and relationships with cardiac and respiratory rates.

著者;Hanten WP, Dawson DD, Iwata M, Seiden M, Whitten FG, Zink T.
J Orthop Sports Phys Ther. 1998 Mar;27(3):213-8.

【概要】
Craniosacral Rhythm(CSR)数の触診における評価者間および評価者内の信頼性、ならびにCSR数と評価者と被験者それぞれの心拍数と呼吸数との相互関係を決定することを目的とした研究。

2人の評価者により、健康な成人40人のCSR数がそれぞれ2回触診された。評価者と被験者の心拍数および呼吸数は記録され、被験者のCSR数は評価者によって触診された。触診の評価者内および評価者間の信頼性を決定するために、クラス内相関係数を計算した。各被験者に1つずつ、2つの重回帰分析を行い、被験者および評価者のCSR数と心拍および呼吸数との関係を分析した。

評価者信頼度係数は、評価者Aが0.78、評価者Bが0.83であり、信頼度係数は0.22であった。評価者Aの重回帰分析の結果は、R = 0.46、調整されたR2 = 0.12(p = 0.078)であり、評価者BはR = 0.63、調整されたR2 = 0.32(p = 0.001)であった。評価者A のCSRと被験者の心拍数(r = 0.30)との間、およびCSRと評価者B の心拍数(r = 0.42)との間に最も高い二変量相関が見出された。

その結果は、1人の評価者が矛盾なくCSR数を触診することができるのであろうということを指し示している。2人の評価者によって触診されたCSR の割合は一貫していない。一方の評価者の回帰分析の結果は、他方の評価者の検証結果を提示しなかった。被験者のCSRは、被験者または評価者の心拍数または呼吸数に関係しないようである。

アメリカ・テキサス州ヒューストンのテキサスウーマンズ大学の1998年発表の文献です。

2人のオステオパスによって健康な成人40人の頭蓋仙骨のリズム運動を把握する触診をしてもらい、同時に評価者本人と被験者役の人の両方の心拍数、呼吸数を測定して分析をしたそうです。ここでも先ほどの研究と同様の結果で、心拍や呼吸の影響はないようであるが、2人が評価した数値は一貫してなかったということです。同一評価者内では一致しているという結果でした。

 

【頭部と仙骨における頭蓋リズム波動(律動)の触診における評価者内と評価者間の信頼性】

Intraexaminer and interexaminer reliability for palpation of the cranial rhythmic impulse at the head and sacrum.

著者;Moran RW1, Gibbons P.
J Manipulative Physiol Ther. 2001 Mar-Apr;24(3):183-90.

【概要】
オステオパシーの診断と治療を大学院で習得し、頭蓋技術を使用しているオステオパス医2人によって、11人の正常な健康な被験者の触診がなされた。
方法:
評価者は、各被験者の頭と仙骨のCRIを同時に触診した。検者は頭蓋仙骨リズムの「フル・エクステンション」段階にきたことを察知したら、コンピュータに接続されたサイレントフットスイッチを作動させることによってそれを示した。被験者の覚醒は心拍数を用いてモニターした。検者はお互いの結果を隠され、データ収集中にコミュニケーションを取れないようにされていた。
結果:
クラス内相関係数(2,1)の計算から信頼性を推定した。頭部または仙骨のいずれかでの評価者における評価者内信頼性は良好で、+ 0.52から+0.73の範囲の有意なクラス内相関係数であった。頭部と仙骨の同時触診に対する検者間信頼性は、クラス内相関係数で-0.09から+0.31の範囲となり、貧弱で、存在しないといえる。頭部と仙骨の同時触診したCRI数には有意差があった。
結論:
この結果は、頭蓋仙骨治療の支持者と頭蓋領域を専門とするオステオパス医によって伝統的に保持されている「コアリンク」仮説の構築の妥当性を裏付けるものではない。

オーストラリア・メルボルンのビクトリア健康科学大学による2001年度発表の論文です。

こちらの研究も結果が一緒。同一の評価者による触診で得る数値は同じような数値を示すということは、こういう傾向の人の頭蓋のリズムを測ろうとすると、その評価者はこういうリズム数を感じやすいという傾向があるということです。つまりその評価者自身の癖があるということです。そしてそれは評価者それぞれの癖があるので、評価者同士では数値は合わないということです。

結果として、オステオパシーの一次呼吸メカニズム・頭蓋仙骨運動の存在の妥当性はないといえることが判明しました。

 

【「頭蓋療法コンセプト」における「一次呼吸機構」の触診の評価者間および評価者内の信頼性】

Inter- and intraexaminer reliability in palpation of the “primary respiratory mechanism” within the “cranial concept”.

著者;Sommerfeld P, Kaider A, Klein P.
Man Ther. 2004 Feb;9(1):22-9.

【概要】
オステオパシーの1つの構成要素であるクラニアル・コンセプト(CC)は、触診できうる非常に微妙な変化を扱う。CCの主な原則の1つに、心拍および呼吸数から独立した屈曲および伸展期と呼ばれる律動サイクルで生じる触知可能な生理学的現象であると仮定されている一次呼吸機構(PRM)がある。PRMの触診は、CC内の評価の第一歩である。

健康な被験者49名を同時に2箇所(1箇所は頭部、もう1箇所は骨盤部)触診した。PRM-周波数(f)、屈曲期の平均持続時間、屈曲 – 伸展期の平均比をパラメータとして、呼吸数と評価者間および評価者内の信頼性および相関を分析した。評価者間の一致も評価者内の一致も記述できなかった。評価者への呼吸の影響は、骨盤触診において両方の評価者で見つかり、1人の評価者のみでは頭部での触診でも見つかった。被験者の呼吸数には相関は見られなかった。結論として、PRM数は確実に触診することができず、特定の条件下では、評価者の呼吸数に影響された。これらの結果は、PRMの背後にある仮説を支持していない。したがって、臨床的意思決定のためのPRM触診の役割およびPRMを説明するモデルは、再考すべきである。

オーストリアウィーン大学医学部コンピュータサイエンス学科の2004年発表の研究です。

ここでは、頭蓋仙骨運動の周波数、屈曲期の平均持続時間、屈曲・伸展の平均比を指標として、評価者間の信頼性、評価者内の信頼性を分析したが、今回はいづれも一致しなかったということです。つまり、そもそも頭蓋仙骨運動っていうのはあるの?という疑問に行き着くわけです。

 

【オステオパシーの頭蓋療法 の診断と臨床的有効性の信頼性:系統的レビュー】

Reliability of Diagnosis and Clinical Efficacy of Cranial Osteopathy: A Systematic Review.

著者;Guillaud A, Darbois N, Monvoisin R, Pinsault N
PLoS One. 2016 Dec 9;11(12):e0167823. doi: 10.1371/journal.pone.0167823. eCollection 2016.

【概要】
オステオパシーの頭蓋療法に用いられる技術と治療戦略の診断の信頼性と臨床的有効性を扱う科学文献を特定し、批判的に評価することを目的としレビューを行った。各データベースより2016年6月末までに関連文献を検索した。

検索において1280本の診断の信頼性の研究に関する参考文献が見つかり、我々の補足的な手段を経て4本の参考文献を追加した。タイトルに基づいて、18の記事が分析のために選択された。我々の除外基準を適用した後、9本は保持され。有効性に関しては、データベースから556本の参考文献を抽出し、我々の補足的な手段を経て14本の参考文献を追加した。タイトルに基づいて46本の記事が選択されたが、我々の除外基準により32本の記事は保持されなかった。

診断の信頼性の研究のための品質評価ツールの修正版と、コクラン・リスクを使い分析。

オステオパシーの頭蓋療法において使用される診断手順が多くの点で信頼性がないと結論づける。有効性の研究において、我々が使用したバイアスツールのコクランリスクは、2本の研究がバイアスのリスクが高いことを示し、9本はバイアスのリスクに関して大きな疑いを有すると評価され、3本はバイアスのリスクが低いことが示された。バイアスのリスクが低い3本の研究では、治療の非特異的な効果などの結果に対する代わりの説明が検討されていなかった。

我々の結果は、以前のレビューと一貫して、オステオパシーの頭蓋療法における診断手順の信頼性および技術および治療戦略の有効性に関する方法論的に強力な証拠はほとんど存在しないことを実証する。

フランスの研究チームによる2016年発表のシステマティック・レビューです。

システマティック・レビューは研究論文の親玉みたいなもので、質の高い論文をかき集めて比較検討し、結果を導きだすという研究手法です。結果としては、オステオパシー野頭蓋仙骨療法の診断方法の信頼性、頭蓋仙骨療法の技術と治療戦略の有効性を示すための強力な証拠はほとんど無かったということが判明しました。

 

考察

つまり、今だに頭蓋仙骨療法の有効性や、それに基づく頭蓋仙骨運動の存在を示せるものがないといっています。

今までご紹介してきた論文から導きだされる考察は次のとおりです。

 

①そもそも頭蓋仙骨運動というものはないので、触診しようとしても分からない。

②頭蓋仙骨運動はあるかもしれないが、人間が触診で判断するのは不可能なものである。

③頭蓋仙骨運動はあるかもしれないが、従来いわれているような一定の周波数ではなく、てんでバラバラで規則性がない。だから皆その時々で数値が違う。

④単に評価者(検者)が下手だった。

皆がみな、頭蓋仙骨運動の周波数測定でバラバラの数値を出して一貫性がない、だけど評価者の中では一貫性がある、となると自分自身の思い込みや触診時の癖などのバイアスが働いている、客観性がない評価法であるといわれてもしょうがないでしょう。

昔読んだ症例報告で、頭蓋仙骨運動のリズムを触診してこの位の数値だったのが、この手技をちょちょいとやったら、頭蓋仙骨運動リズムがこんなに変化しました、エッヘン、みたいなのがありました。最初にコレを読んだ時、なんだコリャと思いました。例えるならば、とある営業マンがやってきて「今度、当社で新しく開発したこのマシーンは、ボタンをポチッと押すと幽霊を退治する音波がでます。ハイ、じゃあ押してみますよ~。ほら、幽霊いなくなったでしょ?!」などと言ったりしても、私にしてみれば「こっちはハナから幽霊なんか見えないし、増えてんだが減ったんだかも分からん!そもそも信じてないし!」っていう感じです。コレと同じことを言っているのです。

今回は題材がオステオパシーの手技でしたが、カイロプラクティックの手技にも同じような傾向があります(モーション・パルペーションなど)。よく考えたらその現象の解釈、違うんじゃないの?もっと、普通に考えたらそうはならないよね?っていうの、手技療法にはいっぱいあります。

常に盲信に流されず、批判的・多角的に見ていく必要があると感じています。効果の再現性が乏しいものより、より再現性があるものを提供するほうが、クライアント様の健康改善の目的に対してより有益だろうと思われます。当院ではその点にこだわっていきたいと考えています。

 

まとめ

今回は常日頃感じている触診評価の正当性について、頭蓋仙骨療法を題材に考えてみました。治療院の中には非科学的なことを偉そうに自慢しているところもありますが、こういう人達を反面教師に、私は愚直に粛々と施術を行っていきたいと考えています。

今回は、この辺で。

 

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