糖尿病の神経症状としての足の痺れの症例

 

内臓からの関連症状としての筋骨格系の症例の第5弾として、糖尿病からの神経症状のご紹介をさせていただきます。糖尿病の場合、全身疾患なので特定に臓器からの関連痛という訳ではありませんが、筋骨格系の症状と間違いやすいので、ここでご報告させていただこうと思います。

どっちかというと今回のは失敗談なのですが、自戒の念を込めてあえて書かせていただきます。

糖尿病からの脚のしびれ 写真1

モデル;河村友歌

1、来院状況

これは当院でのお話ではなく、10年以上前に私がまだ雇われで、治療院で働いていた時のことです。そこでは施術者が複数常勤していて、接骨院のように来院順に順次空いている者が次々と対応していくというスタイルの施術院でした。そのため私が、そのクライアント様を施術するのはたまにしかなかったので、毎回の状況を把握できていた訳ではなかったのです。そのため、余計に対応が遅れたような気もします。

今回の症例のクライアント様の訴えは、片方の太ももの裏の痺れ感でした。申し訳ありませんが、昔の事なのでどちらの足だったかは忘れてしまいました。初診時は私が対応した訳ではなかったので、ところどころうる覚えになってしまっています。当時の内容を思い出してみると、痺れ感は常時あり、足の動きや姿勢で変化は無かったように思います。お仕事は調理師をしており、長時間の立ち作業からくる筋骨格系の異常による症状として、施術は進められていきました。

このクライアント様の施術は、毎週1回の施術を2~3ヶ月続きました。その間、私が2~3回担当したと記憶しています。ここでの施術院は、マニュアルがあり、内容はだいたい皆おなじようなものになり、骨盤の矯正と頚椎の矯正がメインになります。

結局、症状が変わらず、病院で検査をしていただく事になりました。

 

2、検査と結果

検査の結果、このクライアント様は糖尿病であった事が判明しました。定期健診の無い職場だったらしく、今まで発見されませんでした。太もも裏の痺れは糖尿病による神経障害であろうということでした。

よくよく話をお伺いすると、1年前に半年間で何も特別な事はしていないのに、体重が急に15kgほど減ったという経緯がありました。これは、糖尿病により体内の糖代謝が上手くいかず、ブドウ糖をエネルギー源として使えないために起ります。

ご本人はその事が病気に繋がっていると思ってもいなかったようです。そのため今回の足の痺れにも関係しているとは思いも寄らず、初回問診の時も特にお話になられなかったということでした。教科書的には、糖尿病の知覚障害は手や足で、手袋や靴下をつける範囲から左右両方に起る事になっています。今回のような太ももの裏の、しかも片足のみでの神経症状が糖尿病のサインであったということには考えが至りませんでした。

足の痺れは糖尿病から起っていたものなので、対処としては糖尿病に対する治療が必要です。具体的には、運動と食事の管理、ひどくなるとインシュリンの投与が必要となります。したがってここから先は、専門内科医への転院となります。

糖尿病からの脚のしびれ 写真2

モデル;茜さや

3、糖尿病による神経障害について

糖尿病は一言でいうと代謝障害の病気です。血液の中の糖の代謝が上手にいかなくなり、様々な障害を引き起こします。特に細い血管や末梢の神経が侵されやすくなります。糖尿病の3大合併症というのがありまして、以下の通りです。

3-1、網膜の病気

網膜の毛細血管が障害を受け、出血をしたり、網膜がはがれたりします。日本国内では失明の原因の第一位になっています。

 

3-2、腎臓の障害

糖尿病では、腎臓の毛細血管が特に影響を受けやすくなります。そのため腎臓機能が低下し、老廃物の体外排出が上手く行かなくなります。病気が進行すると、最終的には人工透析をしなければ生命維持ができなくなります。

 

3-3、神経障害

神経への代謝異常が起り、神経の働きを阻害します。運動神経、知覚神経、自律神経、それぞれに障害が起る可能性がありますが、よく聞かれるのは知覚神経障害と自律神経障害です。

自覚症状として判りやすいのは、知覚神経の障害で末端から起る傾向にあります。手や足の指さきから全体の感覚が鈍くなったり、知覚異常を生じます。全身疾患の特徴としては、左右が同じように障害されるので、まるで手袋や靴下を履いているような範囲で症状が出て、それを自覚することになります。場合によっては左右同時発症ではなく、時間差をおいて順次両方の発症に到る経過を辿ることもあります。

自律神経症状としては、のぼせや発汗異常、めまいや立ちくらみ、下痢・便秘や排尿障害などがでます。

 

4、まとめ

一般的には、糖尿病などの全身疾患による痺れは左右両側にでます。また末端から出やすいのですが、今回のケースではセオリーから外れた症例でした。そのため思いもよらず、クライアント様への聞き取りも甘くなっていました。

糖尿病の改善がなされなければ、糖尿病からの神経症状は改善されることは難しいです。糖尿病の発見が早く見つかれば、それだけ不要な施術の回数を重ねる必要も無かったでしょう。治療院的には、多く来て頂いたほうが売り上げが上がって喜ばしいでしょうが、カイロプラクティック的立場から言えばそれではダメです。

常にクライアント様の利益を考えて、最善の方法をご提示させて頂くのが大事であると思っています。そのためには、いろいろな可能性を想定して対応していかなければいけないなーと思い、今回、自戒の念をこめて失敗談を公表させていただきました。

 

 

 

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