トレーニングやリハビリで担当者の言っていることが違う

【今回の記事はブログ統合のため、他ブログより転載しました(初出2018年4月)。】

 

ひとつの事象を見る角度が違うと、まるで別物のように見えてしまうことってよくあります。運動指導や施術の世界でも頻繁に起こります。

体というのはブラックボックスなので、何か刺激を加えると、それに反応して何か変化が生まれるのですが、それがこちらの想定と違う場合があります。

それぞれの立場の人間が、ひとつの症例を違う位置から評価し指導すると、おのずとその指導内容も変わってきますし、それに対する結果・反応も違ってくることがあります。

本来ですと、それらの情報を寄せ集め、総合して物事を評価していかなければいけないのですが、現実にはそれぞれの立場・環境内だけで終わってしまうことがほとんどです。そのため、一人の患者様・クライアント様に対して人によって言うことが違うと受け取られてしまうことがあります。

今回はそんなお話です。

 

モデル・ケース

例えば、こんなケースがあります。

高校生の野球選手でピッチャーがいたとします。その選手の悩みはコントロールが安定しないことでした。

タイミングよく野球部は新しく外部トレーナーと契約し、フィジカル・トレーニングを指導してもらうことになったのです。

早速、その選手はトレーナーに指導を仰ぐことになりました。トレーナーは投球ホームを確認したところ、投球動作のコッキング(前足を踏み出す動作)時に脚のタメがなく、早期に前足の膝が外に開いているのが見出せました。

 

そこで中殿筋の筋力テストを行ってみると、前足側の中殿筋の弱さが判明したため、その強化メニューを実施させました。

この強化メニューは功を奏し、この選手のピッチングコントロールは安定しました。

しかし、しばらくすると今度は腰に痛みを覚えてきました。そこでこの選手は腰にスポーツ障害を起こしたと考え、整形外科を受診することにしました。

診察後、その整形外科でリハビリを受けることになりました。そこのリハビリの担当となった理学療法士が投球ホームを観察すると、コッキング動作時に踏み出した前足が無理にロックされて、骨盤のひねりを妨げているように思えました。そのため代償作用(動きを補う代わりの運動)が働き、腰を無理に捻っているため腰に負担が来ていると評価したのです。

そこでこの理学療法士は股関節の柔軟性をつけさせ、無理に股関節をロッキングさせないように運動指導をしたのでした。

素直なこの選手は、言われた通りの運動メニューや運動修正をこなし、見事に投球時の腰の痛みからは解放されました。

 

このケースの問題点は…

このようなケースは、実は現場ではよく起こるケースです。

そしてこのケースを元に考えられる問題点として、次のような事柄が議論されます。

 

1、指導者によって真逆を言われた

先に出てきたトレーナーは、コッキング時に膝が外に流れるのでロックさせるという方針で選手を指導し、次に指導した理学療法士はコッキング時の股関節内旋による無理なロックで、骨盤の自然な回旋が妨げられているとので、それを行わない方針で指導しています。

つまり、一周まわって元に戻っているという訳です。

受けての選手としては、指導者によって言うことがコロコロ変わるという印象を持たれてしまいます。

 

2、他職種連携をとれない

往々にしてこのようなケースの場合、現場現場で連絡を取り合うというのは余りありません。リハビリならリハビリの現場、トレーナーならトレーナーの現場で完結してしまって、情報を共有するという概念が希薄です。

トレーニング指導者個人や派遣元の企業、もしくは部活の指導者や学校で提携先の医療機関があれば情報の共有ということもありますが、逆に現在の不景気な世の中では、自分の患者・クライアントを他に流すようなことをせず、自分のところに囲おうする風潮もあります。ひどい場合は、他業界の人間を貶めるような発言をする場合もあります。

 

3、経過観察を妨げる受け手の行動

また、このようなケースでは患者サイドに問題がある場合もあります。指導者や治療者・治療院、医療機関をコロコロと変えてしまうような人達です。

実際のところ個人個人対象者は違うので、「やってみないとわからない」とうことがあります。つまり、現場では何か試して、反応が出て、それを評価して、次に何をするかを決めていきます。トライ&エラーが必要なのです。コロコロ担当を替えてしまうのは、経過がわからず、情報の活用や引継ぎができないので、非効率なのです。

このような人は同じところをグルグル巡ることになり、先に進むことができなくなってしまいます。

 

4、目先に成果だけで成功だと考えてしまう現場

③と関連することですが、現場現場で情報の共有が行われないと、経過が分からないので、現場・現場では自分の行った結果でしか物事が判断できません。先に出てきたトレーナーの例では前足の股関節をロックさせ、安定化させることでコントロールが安定した結果だけに満足し、腰部を損傷したことを分からなかったかもしれませんですし、その次の理学療法士では股関節のロックを軽減することで、骨盤の回旋を増し、腰部の負担を減らした結果のみに満足し、コントロールの不安定化を生んだことを分からないかも知れません。

このようにその現場・現場での成果しか分からないと全体像が見えないので、本当にそこで指導したことが良いのか悪いのかは判断できないのです。

 

まとめ

今回の試みは一つのモデルケースを紹介して、クライアント様からよく聞かれる訴えで「それぞれの現場で言っていることが違う」というのがどうして起きるのかを考えてみました。

要は、その場限りの結果と評価でしか物事が見れないために起こります。経過を追っていくということが大事で、施術者や指導者だけでなく受けても、そのような情報のやり取りがスムーズに図れるような環境を作っていくことが大事だと思います。

 

では今回はこの辺で。

 

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