脳震盪とカイロプラクティック

【今回の記事は以前、他のブログ掲載していたものを転載したものです(2015年5月初出)。】

 

現在、カイロプラクティック神経学と言う分野を勉強させていただいております。

これは、脳や脊髄などの神経機能を深く掘り下げて、カイロプラクティックの手技に反映していこうっといったモノです。

そこで、脳機能に関連したトピックスをここでも書いていこうかと思います。

 

 

最近の脳震盪事情は?

海外のスポーツ記事に詳しい方や、関係者はすでにご存知の方もいらっしゃるとは思いますが、最近のスポーツ医学でホットな話題の一つに脳震盪があります。

脳科学が進歩して、いろいろ解ってきた部分もありますが、脳震盪が注目されたキッカケとしてプロ・アメリカンフットボール・リーグ(NFL)があります。

アメリカで最も成功しているスポーツ・ビジネスと言われているのがアメフトです。そのアメフトで近年、現役引退選手が相次いでリーグを相手取って訴訟を起こしています。そのことが、全米で話題となりました。

アメフトの引退選手の中には、頭痛・めまいやパーキンソン病のような震えにより日常生活を送るのに支障がでてきている人がいます。また、うつ病などの精神疾患を患い自殺者もでており、中には無理心中を起こす者も出てきました。

これらの症状の多くが、自殺者の解剖の結果などから慢性の外傷性脳症が原因と言うことが判明してきたため、引退選手達がこぞってリーグに対し、リスク管理やケアの不備を訴えて裁判を起こしたのです。

また、アメフトと同じくコリジョン(衝突)スポーツにカテゴリーされているラグビーでも脳震盪の問題は話題となっております。ラグビーは2019年に日本でワールドカップが開催されたり、7人制ラグビーが2016年夏季五輪の追加種目に決定されたりと業界的には盛り上がってきており、障害のリスク管理やケアに対する関心が高まっているように感じます。

その様なこともあって最近、スポーツトレーナ向けに脳震盪に対するセミナーも多く開催されるようになりました。

 

セカンド・インパクト症候群について

脳震盪のケアで問題となる状態の一つに、近年提唱されてきた概念で、セカンド・インパクト・シンドロームというのがあります。日本語に直訳すると「二度目の衝撃による症候群」となります。

一度、脳震盪を起こした場合、適切な回復期間を置かず、再び頭部に外力を受けると、今度は脳震盪を起こすほどではない衝撃であったとしても、脳震盪を起こした時と同じようなダメージを脳に受けます。この場合、重症化する確率があがり、後遺症につながる確率もあがります。

脳は、衝撃による感受性が上がり、脳震盪を起こしやすくなる、と言われています。過敏になっていると脳震盪を起こすたびに回復への時間がかかるようになります。

特にセカンドインパクト症候群で恐ろしいのは、二度目の衝撃の後、昏睡に陥ってしまうことで、致死率50%以上と報告されています。死に到らなかった場合でも後遺症が残ってしまいます。

セカンドインパクト症候群の発生メカニズムはまだよく解明されていません。一度目の衝撃が加わった時点で、脳の血流調節が狂い、それが回復する間も無く二度目の衝撃が加わり、脳浮腫(脳が腫れた状態)を起こすためと考えられています。

とにかく、一旦、プレー中に頭部が人や物に激突し、気を失ったり、フラツキめまいなど立てなくなった状態が少しでもあったなら、一旦練習や競技から引き下げ、具合を評価しなければいけません。

その他の症状として
・短期の記憶消失
・頭痛、吐き気
・めまい、目のかすみ、二重に見える
などがあります。

 

脳震盪の評価ツール「SCAT2」(スキャットツー)

ここで、脳震盪の評価ツールとして開発された、SCAT2をご紹介したいと思います。

これは、実際スポーツ現場などで脳震盪に出くわした場合、医療知識の無い人たちでも脳の状態を把握し、緊急検査が必要かどうかを判別するための道具として制作されました。内容は、こういう検査をしましょう、というやり方や手順を示したパンフレットのようなものです。

 

scat2の内容

・自覚症状の確認法
・高次機能の確認法
見当識…今日の曜日は?日付は?などの確認
即時記憶…色々な単語を言って聞かせ、それを覚えているか確認
集中力…パズル的なお題を出し、こなしてもらう。
・小脳機能の確認法
バランス保持
協調運動

などの手順が記載されています。結果を点数化し、重症度を評価します。

 

設置場所

次のウェブ・サイトからダウンロードできます。

または、「scat2」で検索してもすぐ見つかります。

●新潟市医師会

https://www.niigatashi-ishikai.or.jp/medical/news/pdf/20121116/scat.pdf

●公益財団法人日本サッカー協会

https://www.jfa.jp/about_jfa/report/PDF/h20141218_05_03.pdf

●日本臨床スポーツ医学会

https://rinspo.jp/files/proposal_20-2_130306.pdf

など。

 

注意

プレー中に脳震盪により記憶を失うことが少しでもあれば、まずは練習・プレーの続行は考えず、脳外科でのCTなどの検査を優先させるべきです。

scat2で評価する対象者は記憶を喪失が無かったレベルの脳震盪者が該当すると思われます。

また、普段から定期的に評価を行っていないと、そのときの状態が悪いのか、普段レベルなのか判らない場合もあります。

scat2は、対象年齢を10歳以上に想定して作成されています。10歳未満の場合は、医療機関において評価を受けて下さい。

 

脳震盪に対するカイロプラクティックの適応

実際にスポーツで脳震盪が起こった場合には、一般的なガイドラインとして、発症初期は、脳震盪の症状の消失および評価の向上のため、完全休養を1~2週間必要としています。

次の期間では、24時間、症状消失が保たれていることを前提として、軽い有酸素運動から始め、徐々に強度を上げていきます。

3週目くらいからコンタクトなどの衝撃がない技術練習を取り入れ、コンタクトプレーを含めた完全な復帰状態に戻すのは、1ヶ月くらいを目処としています。

このガイドラインは、大まかな目安なので、その競技特性や受傷の重症度により変わってきます。

カイロプラクティックにおけるアプローチとしては、この回復段階に沿って、脳の炎症の除去を促進する目的で、脳脊髄液の循環を促すため頭蓋骨調整や硬膜アプローチを行います。

また、体に受けた衝撃の記憶が、体に残っているので、そのリセットのための手技も行います。

この様な内容で早期回復を目指すようお手伝いをしていきます。

ご興味ある方は、ご相談下さい。

では。

 

 

 

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