慢性関節リウマチについて思うこと

【今回の記事は以前、他のブログ掲載していたものを転載したものです(2014年4月初出)。】

 

photo credit: handarmdoc via photopin cc

 

慢性関節リウマチを患っている方を多く見かけるようになってきたので、それについての記事を書くことにしました。

当院にリウマチを訴えて来られる方は、関節破壊が進行し、変形やそれに伴う手術をすでに行っている場合がほとんどなので、ここでの情報はあまり当てはまらないかもしれません。

が、ひょっとしたら私、リウマチかも?と思われている方がいらしたら、ここでの情報が役に立つかも知れません。そのような方に、関節リウマチに関する簡単な情報提供をしたいと思います。

昔と現在では、リウマチに対する薬剤や処方手順などが大分違っているようです。

 

リウマチかな?と思ったら

以前は、関節リウマチになると一生付き合っていかなければならない病気、とあきらめられていました。しかし、1980年代に出てきた抗リウマチ薬の中でも免疫抑制剤を早期に使い、さらに強固なリウマチには1990年代に開発された生物学的製剤を使うことにより、5人に1人は治癒に導けるという研究結果も出るようになりました。

関節リウマチで大事なことは、関節が壊れ、変形してしまうことで、それが痛みの原因の一つになったり、日常生活での動作をできなくしてしまうことなので、関節破壊を防ぐことが治療方針の重要ポイントとなります。

一部の整体やカイロプラクティック、鍼灸、自然療法主義者、または東洋医学を標榜する医師にいたるまで、薬を全く否定する流派もありますが、そのような考えは賛同しかねます。一度、関節が変形してしまうと、自然には元に戻りません。早期から骨破壊が起こらないように手立てを施していくことが重要です。

生物学的製剤は、使用すると免疫力が落ちるので、感染症にかかりやすくなる副作用があります。したがって、使用するためには一定の条件があり、衛生面に気をつけなければなりません。まずは、抗リウマチ薬(メソトレキサートが一番効果的)を使い、それでも効果の無い場合は、生物学的製剤を使います。

 

リウマチにおける関節破壊のメカニズム

リウマチの症状は内臓にも及びますが、もっとも特徴的な症状は関節の炎症です。
発症の原因は不明で、免疫系が狂ってしまったため、関節包の裏打ちをしている滑膜という組織が何層にも増殖し、そこから炎症を起こし、パンヌスという組織を作ります。
パンヌスが軟骨組織を破壊していきます。

パンヌス

肉芽組織とは、壊れた組織を修復(穴埋め)する材料のようなもので炎症が起こると発生します。

パンヌスとは、炎症性滑膜組織とよばれ、増殖した滑膜組織の炎症により肉芽組織が形成され、軟骨や、軟骨を骨との境目から入り込み、破壊していきます。

パンヌスからは、炎症性サイトカイン(細胞から放出される情報伝達物質)が出ることにより、炎症の促進、軟骨の破壊、破骨細胞の働きを促し骨破壊を進めることが知られています。

その中でもインターロイキン(特に6)やTNF-αと呼ばれるものが骨・軟骨破壊に重要で、生物額的製剤はこれらのサイトカインの働きを抑え、骨・軟骨破壊を食い止める効果があります。

骨びらん

骨びらんは、レントゲンで見ると、軟骨に面している骨端に虫食いのように穴が開いている状態です。

骨の材料になるカルシウムは、ずっと同じものが骨の中に留まっているのでなく、破骨細胞が古いカルシウムを出して、骨芽細胞が新しいカルシウムを入れるという作業をして、常にカルシウムを入れ替えています。これを骨代謝と呼びます。

パンヌスが形成されると、破骨細胞の働きが促進され、骨を壊す方が促されます。そのため、骨が弱くなり、また、軟骨が破壊され、土台の骨がむき出しになると、関節内で直接、骨同士がぶつかるので、その圧力で余計変形が促されます。

 

CRPの数値だけではない

一般に、炎症の進行状況を診るのにCRPを調べることが多いと思うのですが、CRPの数値と実際の痛み具合が適合してないことが見受けられます。

慢性リウマチの症状は、症状が楽になったり、悪化したりを繰り返します。

関節周辺の痛みは、滑膜の炎症のみならず、周辺の筋肉が痛みのため緊張したり、変形した関節の為、体の動かし方が変化してしまい、筋に負担がかかり痛みを出す場合もあり、関節炎の痛みと筋肉性の痛みが混合しているように思われます。

また、リウマチの初発年齢は、統計によると平均で男女とも50歳前後との報告があり、高齢化してきているようです。加齢による筋力の弱化(いわゆるロコモティブ・シンドロームというモノ)が出てきてもおかしくない状態ですし、それに加え、関節の痛みによる日常動作の制限が余計に体力の低下を促しているようです。

筋力低下には、運動療法が適応ですが、難しい面もあり、そのことについては次項に記してあります。

まずは、筋肉の緊張をとるような手技を施し、それでも痛みに変化が起こらないのであれば、関節自体の炎症からくる痛みなので、それをコントロールするような薬も必要になると思います。

また、慢性の痛みを抱えている人の場合、実際の炎症からの痛みが無い場合でも、長い期間の痛みの情報が神経に伝えられ続けた結果、神経系統が変化してしまい、痛みで無い感覚情報も痛みと感じてしまうようになります。これを痛みの感作と呼びます。

これは難治性の痛みとなり、また特別な手技で対応していかなければなりません。
詳しくは、こちらをご覧ください>>>難治性疾患に対して(工事中)

 

機能回復のための運動について

以前はのリウマチに対する運動は、いったん変形の起こった関節において、残った機能を使えるようにという後手にまわるような方法で実施されていました。

しかし、近年では発症初期の段階から積極的に運動していき、強化することにより変形を防ごうという考え方に移行しています。

ただし、この運動の強度ややり方などは、関節の傷み具合によって難しいところがありまして、ある程度、滑膜が傷んでしまっていると、運動してもらうことによって逆に滑膜に負担がかかり、炎症が悪化することもあるのです。ですので、症状の進行度合いによってやって良い・悪いが違ってきます。そこの判断が、悩ましいところでもあるのです。

リウマチの悪化に重要な要因として、ストレス、睡眠不足、エクササイズが上げられています。つまり、運動はやり方によっては、症状の軽減にも悪化にも繋がるというものです。

このようなことを細かく観察しながら、当院では対応させていただいており、少しでも日常生活が過ごしやすいようにお手伝いさせていただいております。

 

 

Follow me!

お問い合わせはこちらです

    お名前 (必須)

    メールアドレス (必須)

    題名

    メッセージ本文

    メッセージの内容はこれでよろしいでしょうか?

    OKでしたらチェックして送信ボタンをクリックして下さい。