癌闘病者の運動について(2)

 

前回の記事「癌闘病者の運動について(1)」の続きです。前回は、癌に対する運動の効用の研究の紹介をさせて頂きました。

今回は、「米国スポーツ医学会(ACSM)の癌のための運動ガイドライン」や「英国国民保健サービスのMaking Every Contact Countプログラム」を元に書かれた2019年に発表された論文「Exercise is medicine in oncology: Engaging clinicians to help patients move through cancer」に基づいて、前回の記事の情報を加味しつつ、運動の実際をお伝えしようと思います。

更に、カイロプラクティックとしての対応についても触れたいと思います。

 

癌に対する運動の区分け

癌治療に対する運動プログラムには3つの区分けがあります。

①手術前運動(プレリハ)

…術後の早期復帰、合併症予防を目的として行われる。

②手術後急性期リハ(院内リハ)

…早期復帰を目的に行われる。

③術後リハ(退院後リハ)

①~②は手術を行う病院で行われるものなので、当院では触れる部分ではありません。③の退院後の加療期間もしくは、その後の再発防止・健康増進を目的として当院での運動指導は行われます。

 

癌による体質の変化

癌になると、症状や治療の影響で、運動不足や食事量の低下が引き起こされます。そのため筋肉量が減り、痩せてしまいます。また、癌による悪液質によっても筋肉が減ります。

 

がん悪液質

癌よって引き起こされる体質の変化です。癌細胞が増殖すると、癌細胞から生産されるサイトカインという炎症物質も増えます。これが細胞の代謝異常を引き起こします。脂肪とたんぱく質を分解してしまうため体が痩せてきます。

 

運動によって有益な効果が認められる癌の種類

大腸がん、乳がん、肺がん、子宮のがん、膀胱がん、腎臓がん、食道がん、胃がん、前立腺がん。

 

運動の目安

前回の記事の情報と、今回取り上げた運動ガイドラインの情報を基に、運動の目安を考えてみます。

 

step1

まず、癌の病状に対する効果(不安、抑うつ症状、倦怠感、生活の質、および身体機能の改善)が出て、かつ最低限の運動量というのは以下になります。

①週に3回、最大30分の中程度の強度の有酸素運動

中程度の運動とは、運動中に会話は出来るが、歌は歌えない程度のレベル。ウォーキング~自転車こぎ~ジョギングなどがこれに該当します。ご自身が行ってみて中程度のキツさだなと思える運動をチョイスします。

②週に2回、最大20〜30分の抵抗運動(筋トレ)を行う

主要な筋肉グループごとに、1セットあたり8~15回繰り返し、回数を少しずつ増やしながら2セット行う。主要な筋肉グループとは、肩、胸、股関節、背筋、腹筋、などのようなグループ分けです。

 

step2

①有酸素運動は、中程度の強度なら1回30分で週5回まで増やせる。高強度なら1週トータルで75分(1回25分で週3回など)。

有酸素運動の高強度とは、この場合、単語は話せるが会話は無理という程度で、具体的にはエアロビクスやランニングなどが当てはまります。

②筋トレは継続。

 

補助

癌の治療中は副作用の吐き気などで、運動を継続できない期間が現れます。低強度の運動でも「やらないよりかは、やった方がマシ」とされています。低強度の運動の範疇には、ヨガ、太極拳、ストレッチ&瞑想がはいります。ウォーキングもこれに含まれます

癌特有の倦怠感(CRF)には、ヨガ、リラクゼーション運動(ストレッチ&瞑想)が効果的とされています。併せてマッサージも効果があるようなので、担当医に相談の上、受けてみるのも一つの手だと思います。

 

注意点

人工肛門や乳房切除術など特定の治療を受けた人、めまいで倒れやすい人などは、個別に注意する必要があります。

 

 

カイロプラクティックで出来る事

カイロプラクティックの世界では、血行不良が良くないと考えることが多いので、血行を促すことを目的に行われることが多くあります。そのため血行を促すと、癌細胞も拡散されるため、カイロプラクティックは癌には不適応と、昔から考えられていました。私もそう習いました。

ですが実際は、人間の体内では常に血が全身を駆け巡っていて、止めることなど出来ません。本当に血が止まってしまったら、その部位は壊死してしまいます。ちょっとやそっと血の流れが良くなったからと言って癌が拡散されるということはありません。そんなことを言っていては、お風呂にだって入ってはいけないことになります。

今までご紹介してきたように、運動をしてその結果、血流が良くなったからと言って問題が出るということはなく、逆に不快な症状や生存率、再発率の改善が見られます。

従って、昔言われていたことは、何の根拠もない妄想と言わざをえません。

実際のところ、カイロプラクティックで癌の人に対応する場合、一番問題になるのは骨転移があるかどうかです。骨転移があると、圧力をかけると骨が折れてしまうので注意が必要です。従って、癌闘病者がカイロプラクティックや整体にかかられる場合は、事前に骨への転移がないか確かめておくことが重要です。

前回の記事内でご紹介したように、マッサージなどには癌関連の倦怠感などの不快な症状の軽減に役立つという調査もありますので、もし癌を患っていて、そのような症状で困られているのであれば、担当医とご相談の上、施術をしてくれるところを探してみるのも手かも知れません。

 

まとめ

2回にかけて癌と運動について、情報をシェアさせて頂きました。

最近は癌の運動療法を取り入れている病院も出てきていいるようですが、まだ運動指導まで行っていない病院も多数あるようです。

身近でその様な指導がある施設がない場合、ご自宅で自主的に行うことになります。今回はそのような場合に、少しでも参考にならたらとの思いで記事にしました。お役に立てれば幸いです。

今回はこの辺で。

また、需要があるようでしたら運動の具体例でも記事にしようと思います。

 

 

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