骨盤底筋リリースとセクハラについて
最近、骨盤底筋をリリース(解放)します、という施術所・施術者が増えてきています。特に産前・産後のケアとして取り扱うところに多いです。
ところが、この骨盤底筋に直接手で施術を加えようとすると、問題が発生します。
それは骨盤的筋がある部位は、性器がある部位でもあるので、セクハラ問題に直結します。今回は主に女性クライアント様の想定で話を進めます。
骨盤底筋群のリリースが必要な理由
上の図は骨盤底の左側を下から覗いた絵で、動脈・静脈・靭帯などは取り払っています。骨盤底筋の表層には陰部神経から枝分かれした、下直腸神経(肛門周囲の知覚、外肛門括約筋の支配)、会陰神経(会陰の知覚、筋)などがあります。
以前の記事「消散性直腸肛門痛」で紹介した肛門挙筋症候群で関係する神経です。また、産後の尿漏れなどでも関連する場所です。
分娩時に骨盤底筋群が損傷するとそれに伴いこれらの神経も影響を受けます。筋の損傷や内出血は、神経周辺の癒着を作り、神経の働きを鈍らせる可能性があります。産後もそれを放置しておくと、骨盤底筋の働きも鈍くなります。そのままの状態で、骨盤底筋トレーニングをしても効率的なトレーニングを果たせないと考えられます。
そのため、骨盤底の筋肉や神経を個別に動きを付ける、リリースという作業が必要になるのです。
問題となる点
骨盤底筋群を細かく、正確にリリースしよいうとすると手で触れないと出来ません。
一例はこんな感じ(youtubeより)
観ての通り際どいです。特に男性施術者が女性に施術する場合は、かなり慎重にならざるおえません。
私は以前、ロルファー(ロルフィングという手技を行う人)と理学療法士(病院のリハビリをする人)から骨盤底筋のリリース方法を習得しましたが、どちらも上図のような手技でした。
この時当然、施術前に受け手は説明を受け、承諾していることが前提です。当人同士は理解・了解の上、施術を受ける&行っているので、この点においては問題がないのですが…。
問題となるのは次の様な場面です。
この施術を受けたクライアント様は納得のうえ施術をうけているので、そのことには何とも思っていないかも知れません。しかし、この方がご家族に「どのな整体してきたの?」と聞かれ、何気なく「股間をマッサージされた」と言ったら、このご家族はどう思うでしょう?普通でしたら「いやいや、それ、大丈夫なの?」と思うでしょう。更に友達に話したところ、「ヤダ~、それ、絶対騙されてるよ~」と言われるかも知れません。
自分が直接見聞きしたり、体験した訳でなく、他人からのまた聞きで知った情報からの判断なので、正しく理解することもなく、心配に思われることでしょう。
人によっては、面白がって騒ぎ立てているだけかも知れません。スキャンダラスなこと、センセーショナルなことに人は飛びつきたがりますからね。
周りが騒ぎ立てることによって、本人も「ひょっとしたら、セクハラだったかも…」と考えてきます。
以前の記事「銀座の人気整体師のセクハラ」で取り上げたような明らかに犯罪行為は論外です。しかし、頻発していると言われるセクハラ事件の中には、上記のような思い違いも含まれている場合があるような気もしています。
整体院の立場からすれば、真っ当な思考を持っている人間であれば、今まで地道に築いてきた信用や実績が崩れるような行為をする訳がないはずだからです。特に個人で経営している処は。
本当にセクハラかどうかを見極める
最近出たニュースで、例えばこれ。
2021/12/02
健康診断で女性の胸を触ったとして準強制わいせつ罪に問われた前橋市の医師の男(49)に対し、前橋地裁(水上周裁判長)は1日、懲役2年6月、執行猶予4年(求刑・懲役3年)の判決を言い渡した。
判決によると、男は2018年9月、群馬県太田市内の企業で行われた定期健診で、当時18~25歳の女性従業員4人に、聴診器を持っていた手指を胸に押し当てるなどした。被告は公判で「適切な聴診だった」と無罪を主張したが、判決は数秒間胸を触り続けたことなどをわいせつな行為と認定した。
これについて、ある医師のコメントがtwitterにつぶやかれていたが、聴診器を固定するのに指が触れることは通常ある、ということです。
実際にその時、その場にいて見た訳ではないので、状況がどうだったのかは分かりません。見るからに怪しかったのか、それとも別段怪しい所作はなかったのか。
真っ当なことをしていて訴えられたのでは堪ったものではありません。
この記事にTwitterで賛同している人に対して寄せられたコメント
「何でもかんでも訴えてたら、見つかるもん(病気)もみつからない」
「これで女性の検診なくなって、早期発見できなくなって、女性の有病率あがったら、女性自身にブーメラン返ってくるって考えられないの?」
⇒⇒この意見に私も同意。明らかに卑猥な行為は訴えられて当然ですが、単なる思い違いで、真っ当なことを潰してしまうのはいけません。茶化して煽っているだけの人や、短絡的に考えヒステリックになっている人に乗せれれて、正しい判断が出来なくなっているようではいけません。
当院での対処
ここまで読んで「お前、単に骨盤底筋のリリースしたいだけだろ?」と思われた方もいるかも知れません。いえいえ、勘違いしないでください。ここから当院の方針を述べていきます。
先ず、最重要なことは、
「火のない所に煙は立たない」
疑われるようなことをしないっていうのが第一ですね。
骨盤底筋のリリースが特に必要となってくるクライアント様と言えば、産後に尿漏れを起こすタイプの人です。
この様な人に対して、当院ではなるべく施術者が骨盤底筋に直接触れないでもリリースできるよう、対策をたてています。手順としては次の通りです。
①自分の体重を使って骨盤底筋をリリースする器具を使って、まずは骨盤底筋をマッサージする感覚をつかんでもらいます。
②感覚をつかんだら、実際にその部位をセルフマッサージできるようにやり方を指導します。
③自宅で実践。
自分でやる場合、ちゃんと自分の目で見て、確認しながら行う訳ではないし、ましてや神経を探り当てるというのは素人には無理です。ですが、大雑把に筋肉をリリースするだけでも、やらないよりマシです。それに加えて、骨盤底筋のエクササイズを実践してもらえば、軽度~中程度の尿漏れなら改善する人が多いです。
それでも改善しない人や、とにかく早く成果が欲しい人で、骨盤底筋を触られても厭わないという人がいましたら考慮します。大抵の人は骨盤底筋を触られるの嫌がりますが、たま~に、そういう希望を出す豪気な人もいます。
ですが、その場合も互いの信頼が築けてからになります。できればご家族同伴でご来院された方が無難です。その方が互いにワダカマリがないでしょう。
当院は古びたマンションの一室で個人で行っている整体ルームです。産後ママさんのご利用はよくありますが、たまに旦那様から「そんなところ大丈夫か?」と聞かれるという話を聞きます。私が同じ立場でそう思うでしょう(笑)
ですので、お互いに変な噂が立てられないよう、慎重にしないといけないと考えています。
まとめ
今回は「骨盤底筋の施術のセクハラ疑い」についてでした。
整体のブログでこの手の話題を題材にする時は、あんまり本音を載せると誤解を生んだり、反対意見が出てきたり、リスクが大きいので、大抵の場合は当たり障りのない薄い内容で終えてしまうことが多いです。
ですが今回は「こっちもそれだけのリスク抱えて、本気でやってんだよ」ってところをお伝えしたかたので、割と突っ込んで説明させて頂きました。
ほとんどの場合は、当院が直接手を加えなくても、やり方次第で骨盤底筋の機能改善は図れます。ですので、最終手段としてはこういうのもありますよっていう紹介だと思ってください。あそこ行くと必ず骨盤底筋いじられるっていう訳ではないので。
では、今回はこの辺で。
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