前回、軽い症状をみせていても原因となっている障害には重篤な場合もあるし、その危険性を回避するための「診断」も必要というお話をしました。

今回はさらに、他にも表面的に現れている症状からは、思いもかけない病気が原因として隠されている例をお知らせします。脊髄臨床神経学ノート(著;福武敏夫)の症例報告より抜粋させていただきます。

今回のテーマは、痺れです。

 

 

1、寄生虫からくる痺れ

例1)

50代の男性。ある日、右太ももの後面に違和感が出現。そのうち右下肢全体に痺れ感が出る。1週間後に胸部にも締め付け感が出始めたので、大学病院へ受診。

MRIで脊髄腫脹が見られ、脳脊髄液の好酸球が増加していた。年に数回海外出張があり、そこで野菜や豚肉の生食していたことが問診で分かり、血清診断を経てブタ回虫による脊髄炎の診断が確定。

 

一般的に寄生虫の症状として有名なのは、魚介類に寄生するアニサキスによる腹痛などがあります。

しかし中には、手足の痺れを発症させるものがあります。それは豚や牛、ニワトリなどに寄生する回虫がひきおこすのです。大抵の場合、経口で採取し、消化管から移動して脊髄に至り、炎症を起こします。

これらの動物肉の生食は危険です。全くお勧めできません。また、最近の自然食ブームから、これらの家畜の糞便を使用した有機野菜を生食摂取してしまい、発症する事もあります。

 

2、脳梗塞からくる痺れ

例2)

高血圧症や糖尿病などの持病のある60代男性。ある朝、髭剃り中に右腕が挙げずらいのに気が付いた。

若干の肩の筋肉(三角筋)の筋力低下、全体的な腱反射の低下の他は神経学的異常所見はなし。血管に障害を引きおこす持病があり、急性なので脳のMRIをとると、左脳の手を動かす領域に小さい梗塞が見つかった。MRAでも左の内頚動脈から前・中大脳動脈の狭窄が見つかった。

 

局所的な脳梗塞からくる手の痺れや、筋力低下などが起こる場合があります。そしてこの様な微細な障害範囲では、その他に目立った神経学的な所見が現れない事があります。時間が経つと筋肉の萎縮など外見上の異常が現れ、他覚的にも見当が付きますが、それまでは原因がわからずじまいになってしまいます。

上記の症例では、内頚動脈から大脳動脈までの狭窄も発見されていますが、それが見つからない場合もあります。

この様な症状では、大抵、肩に問題があると思い込み、肩の治療を変化が無いのに延々と行われているというケースが多いでしょう。

この場合、MRIを撮れば一発でわかるので、早期に撮っておけば無駄な治療を長々と行うというリスクは回避できると考えられます。よく、筋骨格系の問題は画像に写らないことが多いので、撮っても無駄みたいなことを言われることがありますが、このような障害があるかないかの除外診断としても有効なのです。

 

3、糖尿病からくる痺れ

以前、アップした記事「糖尿病の神経症状としての足の痺れの症例」でも触れましたが、糖尿病も神経障害を引き起こす病気です。糖尿病では毛細血管の血流が不良になり、神経を栄養している微細血管からの血液供給が滞るため、神経の働きが悪くなるのです。

手足では遠位部が影響を受けやすいため、一般に靴下や手袋をはめたような範囲で感覚障害や、痺れを感じます。

しかし前記の症例では、片方だけの坐骨神経を中心とした痺れが症状でした。そのことについて脊髄臨床神経学ノートで解説がありましたので、ご紹介します。

それは糖尿病性神経根症(diabetic radiculppathy)とよばれるもので、神経根での栄養血管の障害により、急に強い痛みや痺れが起こり、筋の萎縮も起こります。電気診断が重要で、筋の萎縮は1年くらい、痛みは自然に4~5ヶ月で治まることが多いとあります。

これもこの事を知らないでいると、4~5ヶ月のあいだ延々と効果の無い施術を行い、4~5ヶ月後に症状が消えたのを施術のお陰だと勘違いしてしまうことになります。

 

4、考察

今回挙げた症例は、自覚症状以外は、一般的な理学検査では所見の乏しいケースを集めています。これらは、まず抗体検査や画像検査をしないと判りません。単なる椎間板からくる症状かなとか、関節の問題かなとか、思い違いでダラダラ無用な施術をクライアント様に強いり、早期回復の機会を損失してしまう可能性のある症例です。実際そのような状況に陥っている施術院もあるでしょう。

自分が想定していた違う原因が隠されている症状というものがあります。少しでも疑いがあるなら、医療機関での精密検査を受けることが賢明と考えます。

 

5、まとめ

この様な症例を目にするたびに思うことは、

無知は、他人も自分も不幸にする。

という事です。

もっと、勉強しよっと!

では、またの機会に。