今日はダフィーカイロです。

今回の症例報告は、強い仙腸関節の症状を見せている産後の方の症例のご紹介です。仙腸関節の障害は関節が緩くなっているために引き起こされる場合が多く、その場合、安定するまでに時間が必要になるケースをよく見かけます。

徒手療法でも回復は促せますが、それまでに症状に耐えていかなければいけないので、症状が強い場合は鎮痛剤などを使い痛みをコントロールしていった方が良い場合もあります。

今回のケースも、それに当てはまるケースでした。

 

 

1、経緯

4ヶ月前に出産なさったクライアント様。妊娠中より体のあちこちに痛みがあり、歩行時も痛みでうずくまる感じだったと仰います。妊娠中からお腹が大きくなるにつれ、お尻から太もも内側にかけて痛くなり、現在もそれが続いています。痛み方は24時間ずっと痛く、お尻から太ももにかけては皮膚に何かあたると痛いので、座っているより立っている方が楽であるという状況です。

総合病院にて産科、整形外科、麻酔科で受診するも原因は不明。MRIの報告書では仙腸関節部に炎症疑いの記載があります。

腹直筋離開があるので、そのせいで症状が出ているのではないかと思われ当院にお越しになられました。

 

2、見立て

圧痛が左の仙腸関節部にあり、臀部から内ももにかけて感覚過敏になっています。また右膝下から先も感覚過敏です。腱反射は右の大腿四頭筋腱がやや活発ですが、その他はノーマルです。病的反射や排尿・排便障害はありません。仙腸関節に対するストレステストは陽性。神経圧迫によるチネル兆候は坐骨神経・陰部神経・閉鎖神経はありません。伏在神経に反応がありました。腹直筋離開はへその上で3cmほどの離開があり、腹圧を高めると離開部に沿って隆起が認められます。

テスト結果からすると最も可能性が高いのは仙腸関節炎です。圧痛部位やストレステストとMRIの画像所見が一致するためです。仙腸関節炎は周辺のお尻の部分に痛みを出します。また、放散痛として同側の鼠径部や、膝下の足にも痛み・痺れを出すことが知られています。ただ文献上は陰部から太もも内側への痛みはあまり記載されていません。ひょっとしたら、また別の原因があるかも知れません。

今回の症例では妊娠中からの発症なので、子宮の発達に伴い仙腸関節にストレスがかかり損傷してしまった可能性は充分考えられます。腹直筋離開があると骨盤を締める力(閉鎖力)が弱くなるので、より仙腸関節に負担がかかるのも推測できます。

 

3、当院からアドバイスしたこと

擬似的な仙腸関節炎では位置異常が原因なので、動きの引っ掛かりを取り除いてやり、ベルトで固定や、自力で固定できるように体幹筋の訓練を行ってあげればOKです。しかし真性の仙腸関節炎ではその程度では痛みは治まりません。

例えば足首の捻挫を考えてみます。足を捻ってじん帯や関節包が伸びてしまった状態が足首捻挫です。例え足首の位置を正しい位置に戻したとしても、損傷してしまった関節包やじん帯は変わりません。したがって、その状態で負荷がかかれば同じように痛みを発します。

これと同じで、真性の仙腸関節炎では仙腸関節の後方にある後仙腸じん帯や、関節包が損傷し、炎症を起こしているので、位置異常の改善をしただけでは痛みは治まりません。

ただしここで強調しておきたいのは、では矯正をすることは無駄なことなのかというと、そうではありません。矯正をすることは治りを早めます。というより、元々の原因は関節の位置異常なので、元の位置に戻してあげないと治らない、もしくは治りが不完全であると思われます。この位置異常というのは3mm程度のズレ幅なので微細ですが、関節の動きを悪くし、結果として関節包や後仙腸じん帯を損傷してしまうのです。

そこで位置異常の修正をするにしても、それが固定化できるまでは炎症があるので痛みがでます。そこで炎症が強い場合は、ステロイドや消炎鎮痛剤を患部に直接注入して炎症のコントロールをした方が治りが早く、日常生活にも支障がでずらいと考えられます。

このクライアント様には上記のような内容のことを告げて、仙腸関節炎の治療を行ってくれる病院のご紹介をさせていただきました。

 

 

 

4、仙腸関節炎の治療を行っている病院の参考資料

仙腸関節炎は、一般的な整形外科ではまだまだあまり認知されていません。そこで積極的に仙腸関節炎の治療に取り組んでくれるところの参考資料を掲載します。お心当たりの方は、まず下のリンク先でご相談されてみると良いと思います。

●まずはここをご確認のこと

日本仙腸関節研究会

http://www.sentyo-kansetsu.com/jp/hospital.php

 

●神奈川県近辺で当てはまる医療機関は

関東労災病院(整形外科・脊柱外科)

http://www.kantoh.johas.go.jp/shinryoka/tabid/202/Default.aspx

 

東邦大学医療センター大橋病院

http://www.ohashi.med.toho-u.ac.jp/sinryo/sinryoka_list/sekitui.html

 

5、まとめ

当院では無理にクライアント様を抱え込むようなことはせず、その方に最適な方法を模索しています。今回のケースも、先に挙げたような医療機関でまず治療してもらった方が、より良いであろうと推測されたので、転院をお勧めさせていただきました。

このクライアント様からはその後のご報告がないのでどうなったのかは分かりませんが、ご連絡がないということは上手くいったのではないかと勝手に想像しています。

最後に強調しておきたい事は、痛みがあると筋の出力は落ちます。仮に今回のクライアント様のように炎症を薬(注射)で抑えたとしても筋出力の低下は残るので、体幹・骨盤帯のリハビリは必要となります。炎症を止めるだけが重要な事ではないということだけは念頭に置いておいてください。前回ご紹介したpaul hodges 先生の講習会でも議題に上がりましたが、無闇に鎮痛剤に頼ってしまうとリハビリを行うという意思が薄れ、機能回復を行うという機会の損失に繋がります。

今回のご紹介はこんなところで。では。