関節が緩い人の対処法

 

今回は関節が緩いことが原因となり不具合を引き起こしているクライアント様のご紹介です。兎角、体が硬いことばかりが健康を阻害する要因として取り沙汰されていますが、関節が緩い状態でも同じように不調を引き起こす事があります。

 

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1、肩関節の不安定性からくる腱板の損傷と思われるケース

自宅で庭の造園作業をしていたら両肩が痛くなったという訴えでご来院された50代の女性の症例です。連日、庭の土を掘り起こし、砂利の撤去を行っているとのことで、そのため徐々に肩が痛みだし、ついには腕が上がらなくなってきたそうです。整形外科で受診すると五十肩と言われ湿布をもらって帰ってきました。

当院で拝見させて頂いた時点では、確かに腕を挙げようとすると、本来でしたら腕の骨が挙上に伴い、骨頭は関節面に沿って反対方向の下に滑るような動きをしなければいけないのですが(当ホームページの矯正についてを参照)、その動きが見られず、逆に腕の動きと一緒になって骨頭が上に引きあがってしまっています。

そのため腕の骨と肩甲骨との間の隙間で、筋肉の腱が挟み込まれて炎症を起こすのです。これは肩の障害で有名なインピンジメント症候群とよばれるものに近いようです。

そこで初回は、炎症を起こしている筋を緩め、腕の骨頭が関節面に正しい動きをするように機能回復訓練をしてもらいます。

通常ですと、いわゆる五十肩とよばれる肩関節周囲炎は片方ずつ起るのですが、同時に痛みが出るというのは、何らかの問題動作が引き起こしている可能性を示唆しています。

2回目の時点で、大分、肩の動きは改善され、痛みがなく動ける範囲が広がっていました。しかし、動かすとポリポリと関節面が擦れる音がよく聞かれるようになっています。また、その時々によって痛む場所が、肩の関節の前面であったり、後面の腕の付け根であったりと移動するようでした。

炎症や組織の緊張が引いてきたおかけで、本来の関節の不安定感がわかってきました。もともと関節の動きは柔らかいようで、細身の女性には多いタイプです。関節が柔らかくてもそれを支える周辺の筋組織がしっかりしていないと、本来の関節のあるべき動きから軌道が逸脱し、関節面を痛めてしまう事があります。

このように関節の安定性が無い場合、関連する痛みがあちこちに出る場合があります。したがって3回目以降は、そのような動きの修正をメインに矯正を行っていく必要があります。

 

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2、股関節の動きの不安定感からくるインピンジメントと思われる痛みのケース

職場の環境が変わり、ほとんど移動時間が無くなり、ずっと座りながらの作業が増えたエンジニアの30代の男性の症例です。

ある日突然、左股関節が痛み出し、特に胡坐をかこうとすると鼠径部の中の方に鈍い痛みが感じられるようになったそうです。

股関節の動きを見てみると平均的な男性よりも可動域は広く、もともと関節は柔らかいと言うお話でした。ただし、右と左で関節の動きを比べてみると、左股関節は内側に入れる動きをするとつまり感を訴え、また仰向けで左足を上げる動きをすると、大腿骨頭が本来あるべきではない前方へ滑る動きが見受けられます。

この方も左股関節を動かすと、右股関節では観察されないポキポキと鳴る音が聞かれます。

この方の場合、体を動かす機会が激減したために筋力的な低下が見られ、もともと柔らかかった関節の支持機能が弱くなり、関節の正常な動きからの逸脱が関節面の損傷を生んだようです。

動かすと関節がポリポリ鳴るのは、関節面が荒れてきた証拠で、滑らかに滑っていない、もしくは何処かで引っかかりを生んでいる状況を示唆しています。この場合も関節組織の挟み込み(インピンジメント)が起り、痛みを出している可能性があります。

この様な場合では、先ず関節に牽引手技により関節が正中に来るように操作し、その後関節の動きが正常な軌道上を通るように機能訓練を加えます。これにより徐々に痛みの軽減が図れます。

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3、両方に共通する事は、関節の不安定性

これらの症例が示している事は、関節がルーズ(緩い)になっていることによる不安定性による障害です。

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関節の安定性を説明するモデルとして,Panjabiの関節可動範囲モデルが有名です。関節が動ける範囲には、靭帯は関節包などの制限を受けず自由に動ける範囲であるニュートラル・ゾーンと、そこから靭帯や関節包などの支持組織からの抵抗が徐々にかかっていき、最終的には関節がそれ以上動かす事ができなくなる角度までの範囲をエラスティック・ゾーンと呼びます。

脱臼や捻挫などの経験がなくても、もともと体質的に関節が柔らかい、緩い人はいます。そのような方は、このエラスティック・ゾーンが人より広い可能性があります。

動作を行う時に、動きに伴って関節包内では副運動とよばれるある一定のちいさな動きが起ります。これを滑り運動と呼び、関節がスムーズに動くような役目があります。

関節が緩いと、普段の動きの中でも、正常時の関節の動きと違う動き起こり、関節内で骨頭が過剰に動いたり、滑り方向と逆側に引っ張りあげられたりして、関節軟骨に負荷がかかり、関節面が荒れてくる事があり、それが痛みを引き起こす原因になります。

 

4、対処法

関節の動きを制御するものにフォース・カップルと言う機構があります。関節は、単一の筋肉で動くわけではなく、いくつかの筋肉が連動して、その結果として一つの動作が出来上がります。

例えば、腕を挙げる動作の時も、腕の骨の土台である肩甲骨の軸を固定してあげないと、効率よく動作を行えず、不用な無駄な力を使ってしまいます。

これは肩甲骨を引き上げる筋肉だけが働いてしまうと、肩甲骨の回転運動が起らず、肩甲骨を単に上に引き上げる運動になってしまい、その分、胴体で回転運動を作ってあげねばならず、非効率となってしまうのです。

そのため、肩甲骨を引き下げる筋肉も同時に働かなければいけません。このことにより軸を定め、肩甲骨を回転させる動きが生まれます。このような複合的な力の総和で体を動かす機構をフォース・カップルと言うのです。

この様な動きのメカニズムは肩に限らず、いろいろな関節で起っています。そして関節の動きをコントロールして副運動にも影響しています。

つまり緩い関節には、この様な複合的な筋肉の働きによる関節のコントロールが上手くいっているかを評価し、不具合があるようならそれを修正してあげる事が必要となります。

これには神経の命令が各々の筋肉が順番通り働くようにコントロールしているので、その部分が上手くいっていないと言う事を表しています。したがってその機能訓練を行う必要があります。

この様なことを行っていくと順次、関節の痛みは改善していきます。

 

5、まとめ

今回は、関節の緩さ・不安定性における障害についてのご紹介です。関節が緩いというと脱臼癖を思い出しますが、そこまでの緩さがなくても不具合が出る事は珍しくありません。

一般に関節の問題というと、動きが硬いということが話題に上がりやすいですが、それだけではなく柔らかすぎても問題を派生する事があるというわけですね。

もし、思い当たる事があればご相談ください。皆様の健康増進に少しでもお役に立てるよう全力で邁進していく所存です!

では、今回はこの辺で。

 

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