体を動かすのが怖い

今日はダフィーカイロです。

秋に入ってからぎっくり腰など急な痛みで来院される方が増えました。

これらの方々とのお話で、共通する話題が挙がります。でも、よくよく考えると慢性痛の人からも出る話題でした。

それは「体を動かすのが怖い」ということ。

今回は、このことについて考えていこうと思います。

 

 

ぎっくり腰で来院されたドライバーの方の場合

A様、男性ドライバー。2週間前に仕事の運転時、座席から立とうとしたら急な左腰の痛みで動けなくなったそうです。初動時の痛みや、体重を左にかけた座り姿勢などで痛みがでます。

整形外科にて注射をしてもらうと30分くらいは続けて座れるようになったそうですが、それ以来10日間は仕事を休み、家で寝ているか、座ると痛いので立って生活して過ごしていたとのこと。その間整形外科に通い、牽引、電気を受けていました。

日常生活で痛みを感じなくなったので職場に復帰し、1時間くらい運転で座っていると、今度は立ち上がろうとすると今までの腰の痛みと違い、骨盤上が痛くなり立ち上がれなくなりました。そこで骨盤が悪いと思い、当院を訪ねてきたということです。

当院で診せていただいたところ、痛みの震源地は腰と骨盤の境目の部分で、たぶん最初に痛みが出た部分が単にまだ治ってなかったと思われます。10日間の休職中、体の動きを制限しすぎていたせいか、全身の柔軟性が低く、そのため患部周辺の緊張が強まり、新たに痛みを骨盤部に感じされているようでした。

腰椎骨盤部の関節の可動域の回復と、周辺筋の緊張をとる施術で2回で終了しました。

 

ぎっくり腰で来院された事務職の方の場合

B様、男性管理職員。イベントでお子さんを肩車し、長い距離を歩いたその翌々日、起床時に腰部に強い痛みを起こったそうです。ぎっくり腰になった当日に当院にお越しになられました。

痛みは腰を前にかがめるとつらそうでしたが、骨の動きを補助してあげると、楽に前屈ができるようになります。これは関節の運動軸が少しズレている証拠です。関節の運動を制御している深部筋(背骨の周りについてる細かい筋)が普段受けないような負荷を受け緊張してしまったのでしょう。それと同時に周辺の背部の筋肉にも炎症が起こったようです。

施術後は、痛みが軽減しましたが、帰宅して就寝後、一時起き上がろうとすると再び腰が痛み出しました。そこで翌日、整形外科で受診しました。そこから2週間後に再び当院へいらっしゃいましたが、その間ずっと痛み止めの薬を飲み続けていたそうです。

日常での痛みはすでにないとのことですが、どうして痛み止めの薬を飲み続けているのか尋ねると、「痛くなるのが嫌だから」予防として飲んでいるそうです。また、このクライアント様はもともと体の柔軟度が硬い方でした。ですが、この2週間は実際腰の痛みは感じでいないにも関わらず、痛くなるのが心配で体を動かさないようにしていたそうで、余計に体の柔軟性が低下していて、背中の筋肉の緊張が強くなっていました。

以前の記事にもあるように、痛みがある場合は仕方ありませんが、痛みが軽減したにも関わらず鎮痛薬に頼っているとリハビリで治そうとする機会が失われます。また、このケースのように過剰な心配は、余計に体の運動機能を低下させ回復を遅らせることが危惧されます。

 

慢性の背中、股関節、肩の痛みで来院された事務職の方の場合

C様、女性事務職。慢性的な背中の痛みと、ここ数ヶ月で痛み出した左股関節の問題で来院されました。1年近く前まで他の整体院で腰・背中のケアを受けていましたが、前整体院が廃業したため、その後ケアを一切していなかったといいます。

股関節周辺、背中、首、肩甲骨周り、筋肉が全般的に緊張が強く、圧痛部が無数にあります。痛みに対する閾値が低く(要は過敏ということ)、一つ一つの動作がおっかなびっくりに動いている印象です。このクライアント様も例に漏れず体が硬い。日ごろの運動習慣があるか尋ねてみると「ストレッチとかしようと思っても、どう動かしてよいか分からない、変に動かすと痛めそうな気がする」という意見でした。

主訴は股関節の痛みでしたが、関節内の問題というより周辺筋の痛みのようでした。

 

 

考察

この3症例でお話を伺っていると出てくる言葉として「下手に体を動かそうとすると、逆に体を悪くしてしまう気がしてあまり動いていない、動かすのが怖い」というような内容のものが出てきます。

痛い動きを繰り返すと、痛みを感じる神経回路が強化されて、前以上に痛みを感じやすくなる「感作」という生理現象が起こることは、紛れも無い事実です。

ですが、それを恐れるあまり、痛みの無い動作まで制限してしまうと、本来痛みが出なかった動作まで痛いように感じてきてしまいます。そうするとさらに動かさないようにし、どんどん動ける範囲が狭まります。これは悪循環です。

なぜ、そのような動きが少ないと弊害が生まれるのか?そのことについて次に解説していきます。

 

固有感覚情報が減弱すると、痛みの情報の抑制が弱まる

体を動かすと筋肉や関節が動いている感覚や、体の位置を知らす情報が伝わります。これらの情報を固有感覚といいます。一方、痛み刺激の情報を伝える神経を侵害受容情報といいます。

実は特に問題が無くても、日ごろから侵害受容情報は発生しています。神経細胞は生きていると微弱電流を発生しているので、侵害受容情報も微弱に発生していることになります。しかし、侵害受容の情報は危険信号であり、それを受け取り「痛い」と捕らえるのは脳の役目です。この脳までの信号の通り道において、不要な信号・情報はふるい落とされたり、抑えられたりします。

固有感覚情報は、受容侵害情報を抑える役目があります。例えば、スネをテーブルの角にぶつけたとしましょう。すると、思わずスネを手で押さえてしまいます。これは手による圧迫刺激(固有感覚)で痛み(侵害受容刺激)を抑えようと無意識に行ってしまうためです。

日ごろから体をあまり動かさないと、固有感覚情報の伝達も少なくなってしまいます。そのため侵害受容器からの情報の抑制の働きが弱くなり、痛みに対して過敏になります。

 

筋肉の伸び縮みさせる機会が減ると、血流が悪くなる

筋肉は伸び縮みすることによって、毛細血管の流れを促しています。特に静脈は血管自体に動かす筋が無いので、筋肉の押し出す力の補助は必要です。

血の巡りの悪さは老廃物の排出を滞らせます。動かないでじっとしている姿勢は、姿勢を維持するための筋肉は使っているのですが筋の伸び縮みが起こらないので、血流も悪く、筋肉が硬くなりやすいのです。

このような状態が続くと、筋肉内にトリガーポイントと呼ばれる障害部位が生まれ、痛みを引き起こすようになります。

 

 

動作に対する必要以上の心配を防ぐポイント

障害の急性期は3日間くらいの安静に留め、それ以上の安静は治りを遅くするというのが、腰痛では最近の指標になっています。しかし、実際にはそれ以上の動作の制限を加えたほうが治りが早い場合もたびたび見かけます。しかし、先の症例のように10日間にもわたって動作の制限は長すぎます。

また、痛み止めのう常用もいただけません。痛みを感じずらくするというのは、中枢(特に脳内)での痛みの感作を防ぐのに重要と考えていますが、侵害受容情報は危険信号を体に伝えているのです。体に無理な動きがや、体を痛める動きを避けさせる役目があります。痛みを必要以上に感じずらくすると、障害箇所に負荷がかかることに無頓着になってしまいます。また、以前お伝えしたようにリハビリに対する意欲を阻害する可能性もあります。

 

痛みがある動きは控えてもらうことが前提ですが、逆に痛みの無い動きは積極的に動いていただきたいと思います。そうすることで痛みに対する閾値が上がり、痛みを感じずらくすることができます。

動くことに対する恐怖心・心配がある方へのアドバイスはシンプルです。

 

①痛みが出る動作、不快な感じがする動作はやらない。

②やってみて気持ちよい動作、不具合がでない動作はやる。

こんなストレッチやったらダメかな~?、これってやっても良いんだっけ?など、いちいち迷うより上記の法則にしたがって行えば簡単です。急性期からの回復や、日常の運動不足の解消を目的とした運動は、ウェイトを持ってガシガシやるというようなタイプの運動と違い、筋肉を伸ばすストレッチや、関節の運動の滑らかさを維持させるための体を部分的に反復的に動かすような緩やかな運動がメインになります。ですので、そんなに難しく考える必要はないのです。

例えば、腰をかがめると痛い人は、かがめる動作は控えたほうが良い。逆にそらすと気持ちよかったら、そのストレッチから始めてみる。そこからさらにステップアップとして反らしながら体を右にねじって平気だったら、そのストレッチも加えてみる。みたいな感じにしていけばよいのです。これってマッケンジー療法と言うれっきとした治療法なのです。

ただ、ちょっと要領のいる運動もあります。それはその時々の病態に合わせ、より有益な運動は当院からアドバイスさせていただく場合です。また、この運動は避けてくださいっていうのもその都度アドバイスさせていただいています。疑問に思うことは、その都度聞いていただければ結構です。

 

まとめ

体を痛めやすい人、定期的に痛くなる人というのは、運動のし過ぎによるスポーツ障害を除いては、一般的にいって「運動のしなさ過ぎ」な人が多いです。体の柔軟性があり過ぎる人も問題がでますが、柔軟性が低すぎる人も問題がでます。ある程度の体の運動機能は確保しておいた方が良いと考えます。

今回のお話は、一般的な多くの症例でみられる「体を動かす機会や量が減っている」「体を動かすのが心配」という方へむけての提案でした。

では、今回はこの辺で。

 

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