アスペルガーと胸焼け、極度の倦怠感の症例

今話題の大人の発達障害(=自閉症スペクトラム/ADS)のクライアント様の症例です。診断としてはアスペルガー症候群を受けています。といってもご本人の改善目的は、別にアスベルガーを対象としたものでなく、逆流性食道炎や、日中の極度の眠気・倦怠感といった、いわゆる不定愁訴と消化器系の問題の訴えでした。

 

 

 

1、検査

検査で問題がある部分は次のようなものが出ました。

消化器系の問題は、まず自律神経の調子を調べます。内臓の働きは自律神経がコントロールしているためです。当院では定番のシェロン・テストを行います。血中酸素飽和度が90前半代に落ち込み、心拍数も変動が激しいです。しかし、立ちくらみやめまい感はありません。

過呼吸気味で深呼吸ができない。呼吸数は通常、安静時で1分間に12~18回が正常値です。この方は25~30回あるので、そのことにより呼吸筋に負担がかかっているとも思われます。

寝ているとき手に震戦がみられる。また、仰向けで目を閉じたままでも眼球がせわしなく動きます。運動神経の調節障害とも見なせますが、脳の興奮状態を伝えているとも言えます。

また、日中もイライラすることがあったり、逆に急にだるく・眠気が強く出たりと、不安定であるという訴えもありましたが、上記のような全身の興奮性とその反動によるものかもしれません。

ブラインド・スポット検査で固視ができず、周辺視野に写ったものを目で追ってしまう。特に左目の時が苦手そうでした。また同じく追従眼球運動の左側が苦手です。

背中が丸く、腰が反ってしまう、いわゆる前弯-後弯姿勢。内臓が不調だとお腹の張りを庇おうと余計に姿勢が崩れてくることをよく経験します。

これらのことを踏まえて施術方針を決めます。

 

2、経過

過呼吸気味で酸素血中飽和度が低下気味なので、単純に考えて体に酸素が十分行き渡っていないので疲れやすいと考えられます。また、胃の入り口(噴門部)が横隔膜の穴(食道裂孔)を食道が貫通したすぐのところにありますが、ここのしまりが悪くなると胃液が逆流し、逆流性食道炎になります。二つの症状の接点となるのが横隔膜なので、まずそこの機能改善を目指します。

内臓機能の問題や、不定愁訴の問題は自律神経の不調に関連付けされやすいですが、自律神経に対するアプローチは様々あるので、第一選択としては取り掛かりやすい構造的問題からアプローチしていきます。

また、消化器系の問題は毎日の食べ物や食習慣などにも大きく影響をうけるので、日常生活ではその改善もお願いしました。

一日の作業により首・肩・背中も張ってくると訴えがあるので、そのための姿勢改善と筋肉の弛緩操作もあわせて行いました。

このような内容で1週間~1ヶ月に1回の頻度(クライアント様に来院ペースはお任せ)で5~6回施術を行うと、胃もたれ・胸焼けなどの逆流性食道炎の症状は軽減したとの報告を受けました。

ただ、だるさ・眠気はまだ日によって出たり出なかったりと安定していないようでした。以前はできなかった深呼吸も大分深くできるようにはなっていましたが、まだ呼吸数が早くなり勝ちで、全体的に体が興奮性に傾いているようなので、8回目以降は神経学的なアプローチを多めに取り入れた施術を行いました。

具体的には左目の焦点を中心窩で捕らえられるような訓練や、深視力、手と目の協調運動などの練習をしてもらいました。

現在では、日中のイライラ感や、胸焼けなどの症状も落ち着いてきているとご報告を受けています。ただ今は経過観察中なので、引き続き加療していけば良いのではないかと考えています。

 

 

3、考察

ADSでは、視覚に関する運動や情報処理に問題があることが多いです。ADSの人は周辺視野の視覚の依存度が高く、目の周りに写ったものに注意が行きがちになり、周辺の人達から注意散漫ととらえらることがよくあります。

視覚検査にも異常が出る項目がありましたし、脳機能の改善には視覚機能の改善は必須です。しかし、そのことが今回のクライアント様の主訴と直接の関係があるかは不明です。

最近、徒手医療でも全ての症状を脳機能の機能障害に結び付けて考えようとするのが流行りです。特に発達障害などの脳機能に直結する症状がある人は、全ての不具合をそれにこじつけて語ろうとします。私もカイロプラクティック神経学を3年間勉強させていただいたので、その傾向があります。

しかし、症状によっては構造的問題、生物力学的問題、生理学的に問題の観点からアプローチしていった方がはるかに確実性があり、シンプルで利に叶っている場合も多くあります。

個々の問題がどのカテゴリーの手法で対応するほうが適正なのかを見極め、事に当たっていくことが大事と考えます。

 

4、まとめ

カイロプラクティックには肩こり・腰痛だけでなく、それ以外の様々な不定愁訴も施術の対象になります。ただそれがクライアント様が真っ先に改善したい対象なのかどうかは別で、単に施術者側の興味本位な施術にならないように留意しなけらばなりません。

脳科学や筋膜や次々と流行の施術がでてきますが、症状と遠まわしのところから攻めていっても、結局効果が薄いということも何回も経験しています。

このブログでも何度もお伝えしていますが、症状の原因を一元的に考えるのは私は好きではありません(その方がシンプルで楽だけど)。今回の症例も一元的に考えれば、アスペルガーがあるから(脳機能の影響から)不定愁訴が出ているとなりますが、私は分けて考えているので、アスペルガーがあろうが無かろうが関係ありません。従って今回も脳神経学的アプローチはオプションとして付け加えています。

当院では常に「その人に最も適したやり方」というのを模索しながら施術をおこなっています。今回もそのようなご紹介となりました。今回は、この辺で。

 

 

 

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